311を撮る

  • 岩波書店
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000230490

作品紹介・あらすじ

東日本大震災の壮絶な現実を切り撮りながら、メディアの一翼をなす自らをも問い返すものとなったドキュメンタリー映画『311』。震災に向き合った四人の監督が、表現者として現場での揺らぎを見つめ直し、思いのすべてを語る。

感想・レビュー・書評

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  • 山形の国際ドキュメンタリー映画祭で賛否両論(というより、森達也によれば、罵倒と称賛)という両極端の評価を受けた映画「311」の、いわゆるメイキング本です。


    去年の震災直後の3月26日から31日にかけて、4人のジャーナリストがとにかく現地へ、と向かい、そこで撮った映像を編集した映画「311」。
    私はまだ映画は観れていませんが、(今年の8月に観る予定)漏れ聞こえる評判が過激なことから、この本も買ったはいいものの、なかなか読み始めることができず…。

    ようやく気持ちの準備ができたので、えいやっ!と読むことができました。

    現地に行こう、と最初に呼びかけたのは綿井健陽さん、呼びかけられたのは森達也さん。森さんは、一旦断ったものの、30分後には、うん、行こう、となり、その後、松林要樹さん、安岡卓治さんも同道することに、というそもそもからして、一本の映画を撮ろう、という計画性はゼロだったのがよくわかります。森さんは、行きの車の中でカメラの操作方法を聞いていたくらい、映像からは遠ざかっていましたし、綿井さん、松林さんのお二人も、映像に対する考え方、映画の作風はそれぞれ自分のものをお持ちだから、4人の見たものを一つの映像に、という気持ちはなかったんでしょう。

    でも、早くも行きの車で綿井さんは、森さんにカメラを向けていた、というのが面白い・・・。うん、森さんがキーパーソンとなって被災地や被災者、放射能被害に向き合い、また、狼狽する、という軸を意図されたのは、自然の成り行きだった気がします。
    森達也、という人を私は大好きで、それは、ジャーナリストとして、彼が何も余計な鎧を身につけていないから。「タブーに挑み続ける孤高の作家」的いな扱いをされる、とご自分でも書いておられるけど、居丈高にもならず、かと言って、善意の報道者というわけでもない。それって、守る物がある人間にはとても難しいことだと思うのだけど、危機管理意識が標準より低い、という自己評価がたぶん本当のことなんでしょうね。

    「311」では、遺体を撮るか、撮らないか、ということで、かなり激しいやりとりがあったらしい。日本においては、死者と遺族への冒涜、という意識が強く、変わり果てた我が身や家族を映像に撮られたくない、と私でも思うのだけど、ただ、震災後、あれだけの映像が流されたにもかかわらず、そして、たぶん、おびただしい遺体が収容されたのにもかかわらず、その映像は暗黙のタブーとして電波に乗ることがなかった…。そのことを、なぜ?と思ってしまうのが森さんなんでしょうね。

    現地では、ヒールに徹していた、と他のメンバーが書いているように、森さん独自の視線で映像を撮られたようです。

    4人が語る「311」を撮った日々。
    これは、実際に「311」を観ないとなんとも言えないなぁ、というのが実感ですね。

    正直、観るのがかなり怖いんだけど…。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    去年の3月11日。私は東京にいました。
    11日の夜に、森さんを囲んで「A3」の読者オフ会をする予定だったから。
    それがあの大きな揺れで(私は東京が震源地だと思ったくらい。)中止となり、私は新潟に帰る新幹線が動く日まで、大学生の娘の部屋で正座してテレビを見続けました。

    その後12月に、少し形を変えた会でオフ会は実現し、森さんともあれこれ突っ込んだ話をすることができました。その際に「311」の話が出たのはもちろんのことで、うん、やはり怖いなんて言ってないで、とにかく観てみます。

  • 森達也さんの書くものが好きです

    あの大震災をどういう視点で描くのかと興味を持って手に取った

    sens of guilt
    私も感じています

    東日本大震災が起こる前の、日本や世界の各地で起こった災害
    テロや戦争の報道を見たときに感じたことに対して後ろめたさを感じている

  • 東日本大震災
    映画
    ノンフィクション

  • 「ドキュメント」を撮る苦悩!
    それが「リアル」に出てると思った。
    映画は見てません。これを読んでも見ようとは思っていません。でもこの本には制作者の苦悩が書かれています。
    311、この震災のための本では無いと思いました。
    金にも名誉にもならない「ドキュメンタリー」を撮る監督たちの現実、そして想いが生々しく書かれています。
    震災という自然の驚異が突然起こり、それに対し何かに突き動かされて行く男たちの生々しい苦悩がここには書かれています。
    ただ監督の1人、森達也関連で手にとった一冊ですがあの震災にこういう方向性で立ち向かう人もいるのだと知れる一冊でした。

  • まだまだしっかり言語化できないけれど、私にとって何か大切なこと、考えなければならないことが4人それぞれが書き綴ったものにあるように思う。映画も観てみたい。

  • 森達也の名前があったので『311』はきっと震災のドキュメンタリー映画ではなくてセルフドキュメンタリー映画ではないかと想像していたけどね。やっぱり(苦笑)
    森達也、綿井健陽、松林要樹、安岡卓治の4人がそれぞれの立場で撮影に対する思いを綴っているけど、松林氏のパートが一番共感しました。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:778.7//Mo45

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。テレビ番組制作会社を経て独立。98年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i-新聞記者ドキュメント-』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『東京スタンピード』(毎日新聞社)、『マジョガリガリ』(エフエム東京)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)など多数。

「2023年 『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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