デザインのデザイン

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000240055

感想・レビュー・書評

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  • 著名なデザイナーである原研哉氏の著書。
    個人的にオススメしたいのは第1章のデザインとは何か、第6章、第7章のこれからの日本の進むデザインの方向性についての示唆が興味深い内容。
    特に第1章は広く知られている内容かもしれないが、デザインを専門外とする私にとっては面白い系譜で、特に西洋や資本主義の煽りに抗っていたデザイナーなどの潮流が見れて、その歴史について知的好奇心を擽られた。
    第6章、第7章は共感する部分が多く、日本の良さ、古来からの美に関する知見を増やしていくことが、今後の世界への情報発信のベースになるかもしれないと改めて考えを広げてくれた。

  • 『デザインのデザイン』ってなんか謎かけみたいな名前だなと思いつつ、会社の先輩に勧められて手に取った1冊。

    「デザイン」というとポスターや広告など、視覚的なビジュアルを今まで思い描いていたけれども、この中で原研哉氏が取り上げているのは、それよりももっと広義な内容。視覚的なことだけでなくて空間の佇まい、ショッピングバッグの触感、課題を解決するために商品の形そのものや、素材、訪れた人にどんな体験をして、どう感じて欲しいかまで、細部に至るまで設計され尽くされた事例の数々。特にテープ状のゴキブリホイホイや、かっこいい紙おむつ、など形容詞と名詞が合っていないけれどもそれぞれ課題に対して今までとは違うアプローチをしている点がとても面白かった。

    特に原研哉氏は、「日本文化で生まれ育ったからこそできるデザイン」へのこだわりがあって、空間やモノの中で極限まで無駄を省き、本質的なものだけを残す引き算の美学や、緊張感、メリハリのようなものがどの事例にもあったように思う。また、日本が世界地理的にも様々な文化を受容する立場である、という解釈も興味深かった。

    日本の巨匠の頭の中が少し見えた1冊で、とても発見が多かった。

  • デザイナーがデザインについて語り、社会の中でデザインがどういう営みなのかを位置付ける(デザインする)ことを目的にした本かな。

    無印良品のデザインに関わっている人なんだけど、無印の商品は「が」ではなく「で」なのだと。「〜でいい」、というより「〜がいい」って言った方がプラスの意味合いは強いし、それは個人の自由、権利を象徴するものだと。でもそれは一歩間違えればエゴイズムに繋がるし、競争の激しい今の世界に望ましい態度ではないのではないかと。満足できる高レベルでの「〜でいい」こそ、一歩引いた理性、高次元の自由を体現し、慎ましさを重んじる日本的美意識にも通じるとか。それを商品に表そうとしているらしい。YouTubeでローランドが無印の化粧品ばっか使ってた図が思い浮かんだ。脱帽です。。

    デザイナーゆうてるけどもう思想家に近いなって思う文章。

    • ともひでさん
      これは凄すぎる、鳥肌。
      他のブランドとは一線を画すお手頃でどこかすましたおしゃれさは計算尽くだったんやな。
      これは凄すぎる、鳥肌。
      他のブランドとは一線を画すお手頃でどこかすましたおしゃれさは計算尽くだったんやな。
      2019/10/30
    • てぃぬすさん
      これから無印のもの買ってしまいそう
      これから無印のもの買ってしまいそう
      2019/10/30
  • もう随分と昔の本なのだと巻末を見て思ったが、そんなことは感じさせない新しさ普遍性がある。
    2016/1/27
    ウユニ湖のど真ん中での無印良品の広告の撮影の時にカメラマンが、「4mの高さから撮りたい」と言ってしぶしぶ足場を溶接して組み上げ、上がってみたら「なるほどこれか」と感じたという話が何故か心に残っています。

  • デザインといえばどこか耳触りがよく、かっこよくてスマートな印象を受ける。でも、そもそもデザインってなんだろうか。そう聞かれると、そういえばなんだっけと首を傾げるひとは多いはず。

    デザインとは、ものごとに潜む問題の本質を見つけだし、解決するプロセスだと、原さんは言う。
    たとえば原さんがデザインに関わる無印良品のプロダクトのひとつひとつは、私たちの日常生活にある問題に光をあてている。
    それらは問題の存在に気付かせ、さりげないやりかたでそれを自然な方向にずらしてくれる。

    つまり、ただ表層だけ綺麗で、実態としては消費者の欲望を喚起するだけのものはいいデザインとは言えない。

    そうした美しさに対するセンスが、日本人にあるかというと、どうなんだろう。巷にあふれる粗野なデザインは、日本人の美的センスを反映したものなんだろう。

    だからこそ、いいデザインを積み上げることでそうしたセンスをエデュケートできると原さんは言う。
    それは、できればいいな、ではなく、グローバル化する経済のなかで、デザインの面で競争力を高めるためには、社会的土壌としてのひとびとの高いセンスが必要であり、いいデザインがそれをひっぱっていくことが必要だってこと。

  • 岩波新書の『日本のデザイン』に感銘を受け、原研哉氏の著書を遡って読んでみたのだが、こちらも名著。
    特に、私のようにデザインの門外漢にとっては第五章「慾望のエデュケーション」が秀逸。企業活動(特に「これからの」)やもっと広く社会におけるデザインの役割あるいはデザインというものの位置がよく分かるというか、考えさせられる。
    デザイン = 単にカッコいい形、あるいは使いやすい形ではないことが分かる。帯の深澤直人氏の推奨の言葉の通り、デザインを分かっているつもりの人にとっても、デザインって何なんだ?よく分からないと思っている人にとっても、いくつもの気づきのある一冊と言える。
    教科書!

  • 見慣れたものを未知なるものとして再発見を促すこと。ものの見方は無限にあり、平凡に見える生活の隙間からしなやかで驚くべき発想を次々に取り出す独創性こそデザインに求められている。

  • デザインってなんだろうともう一度考えてみるにはちょうどいい本。

    本人がデザインしたもの以外にも、RE DESIGN展で他のクリエイターに依頼したものなど、ちょっとしたところにデザインが威力を発揮するものがあることは知っておきたい。

  • アートとデザインはどこが違うのか?
    「アートは個人が社会に向き合う個人的な意志表明であって、その発生の根源はとても個的なもの」。対し、「デザインは基本的には個人の自己表出が動機ではなくmその発端は社会の側にある。社会の多くの人々と共有できる問題を発見し、それを解決していくプロセスにデザインの本質がある」。
    非常に納得のいくわかりやすい説明に大きく頷きました。

  • 今年、デザインの再発見、再定義をしようと思って、デザイン本を年間50冊読もうという目標を立てた。本書は独立して間もない頃、20年ほど前に読んだと記憶しているが、自分の経験が、ようやく文章の意味を理解するに足りて来た感じがして新鮮な読書だった。

    特に冒頭のデザインの歴史の原氏の解釈は、デザインの学び直しを始めるのにちょうど良かったように思う。言葉選びが平易ながらも洗練されていて、物書きとしての原氏も魅力的だなあと感じた。

    様々な事例を紐解いていく中で、デザインを様々な言葉で語っているが、「人間が暮らすことや生きることの意味を、ものづくりのプロセスを通して解釈していこうという意欲がデザインなのである」というフレーズに、力強さを感じた。

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著者プロフィール

グラフィック・デザイナー。1958年岡山市生まれ。武蔵野美術大学教授。日本デザインセンター代表。
文化は本質的にローカルなものととらえつつ、日本を資源に世界の文脈に向き合うデザインを展開している。広告、商品、展覧会、空間など、多様なメディアで活動。
著書は『デザインのデザイン』(岩波書店/サントリー学芸賞受賞)、『白』(中央公論新社)ほか多数。

「2014年 『みつばち鈴木先生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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