- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000254199
作品紹介・あらすじ
時は、大正のはじめ。26歳のまっすぐで血気盛んな青年北川光雄は、絶世の美女、野末秋子に出会った。場所は、九州・長崎県の片田舎にある幽霊塔と呼ばれる時計塔。惨殺された老婆が幽霊となって徘徊すると噂されるところだった。秋子は、そんな場所で何をしようとしていたのか。秘密を抱えた秋子に、光雄は惹かれていき…。夥しい数のクモを飼う男、「救い主」と呼ばれる不思議な医学博士、猿をつれた太った女-怪しい人物たちが二人の周囲で暗躍する。そして時計塔の秘密とは?江戸川乱歩の名作が、宮崎駿のカラー口絵とともに蘇る!波乱万丈、怪奇ロマン。
感想・レビュー・書評
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家族からのお薦めで初めて江戸川乱歩を手に取りましたが、すごく面白かったです!夢中で読みました。しかもカラー口絵は宮崎駿…!ジブリ大好きなので嬉しいです。
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色々なオマージュを先に見た上で。
ミステリ慣れして無い中でも人間関係がわかりやすく、かつ主人公より周りの人々の個性が強く面白かった。
時計塔の描写では口絵の宮崎さんの図がためになったり読みやすく感じる。 -
連載ものなので章ごとに引きが強く、続きを煽りまくっていてちょっと面白い。お話はやはり時代がかっており、主人公も高等遊民のおぼっちゃまということもあり、どうしてもツッコミどころがあるのですが、乱歩独特の語り口と怪しく魅力的な世界観にどんどんと引き込まれます。
宮崎駿の口絵ページは読了後に読むほうがわかりやすくておすすめ。翻案の顛末についての解説があったりして読み応えがありました。ここから『カリオストロの城』の創作に繋がっているなんて感激。 -
★そこでは、この世のあらゆる不可能が可能にされていたといっても過言ではない。(p.2)
■メモ
・江戸川乱歩さんらしい大風呂敷と「しゅうー」と最後にしぼんでいく感覚。
・いちばんの売りは、やはり巻頭にある宮崎駿さんのカラーページでしょう。
・昔、春陽堂文庫の江戸川乱歩全集的ななにかを読破しているんでたぶん読んだことはあるんやろうと思うんですが、まったく覚えてまへん。ついでに黒岩涙香の『幽霊塔』も青空文庫で読んでますが微かな雰囲気の記憶だけでこちらもほぼ覚えてなかったんでどんくらいちゃうんか曖昧な感じです。
【時計塔】渡海屋市郎兵衛が建てた時計屋敷。三階建西洋館。いろいろ仕掛けがあるもよう。建てた渡海屋自身が脱出でけへんでどっか内部で死んだゆう噂があり、ひとつ前の所有者お鉄婆さん殺害事件が起こった。ところが、居住空間として以外、出番がほとんどあらへんです。せっかく題名になってんのにもっと活躍してほしかったなあ。物語の大半がこの中のできごとって感じでもよかったんやないかなあ。ある意味看板に偽りありやなあ。
【北川光雄】主人公の「私」。高等遊民で働く必要なし。うらやましいこって。時計塔を手に入れた元判事、児玉丈太郎の甥。正義漢ではあるんやけど短慮で軽薄な言動、とてもやないけど信頼でけへんタイプです。野末秋子に惚れる。顔のよさと心根のよさを混同するタイプ。婚約者として三浦栄子がいるが性格が悪く図々しいので嫌っている、というか、好みのタイプではないようで、そこに秋子さんとの出会いがあったもんやから…
【野末秋子】物語の「謎」部分を担う人物。その「使命」とは? お鉄婆さん殺害事件との関わりは? その正体は? 左腕の腕輪は? いつも猿を連れてる肥田夏子との関係は? 結婚を強要してきている弁護士黒川太一との関係は? 蜘蛛屋敷「養虫園」のあるじ岩淵甚三との関係は? 結婚できないという理由は? 彼女の「神様」とは? なんでもかんでも秘密にせんと気がすまへんタイプ。ある程度ぶっちゃけてまえばええのにと思うたり思わんかったり。ま、それではお話にできへんか。 -
今まで読んだ本の中で1番好きな本です。
これを読もうと思ったきっかけが、表紙の絵を宮崎駿さんが描いているというだけの理由で読もうと思いました。
1回目読んで見ると当時の私には難しく理解するのに時間がかかっていましたが、調べて内容を理解していくうちに話にのめりこんでしまいました。
浅はかですが、愛って凄いなと思いました。
是非生きているうちに読んで欲しい本だと思いました。 -
江戸川乱歩さんの児童向けサスペンスはツッコミ所も多いが、それよりスリルやヤキモキさせることを重視しているので、現代の宮部みゆき や東野圭吾と似たような”ぞくぞくワクワク体験”的な面白さを感じました。
宮崎駿さんによる、原作(A Women in Grey)の説明や黒岩→乱歩の大衆小説化への解説、なにより時計塔の絵が素晴らしいです。
今の時代だと色々NGで映像化は無理そうですが...。 -
原作は海外小説であり、黒岩涙香の翻訳小説を江戸川乱歩が登場人物を日本人に変えてリライトした作品。今年公開された宮﨑駿の『君たちはどう生きるか』でもモチーフのひとつとして使われており、影響力の強さがうかがえる。ドラマチックかつ子どもから大人まで楽しめるストーリーと、乱歩による読みやすく格式のある文体ですいすい楽しい気分で読めちゃいます。ジャンルは探偵小説ですが探偵はあまり出番が無く、かといって主人公が何か解決するわけでもないので、読者も流されるまま筋を追うのが正解かと。場面場面のビジュアルが結構印象的で、幽霊塔での冒険だったり、美女が虎に襲われたり、池の中から首なしの死体が発見されたりディテールに原作と乱歩の良さが乗り、相乗効果を生んでいる。面白かった~。
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宮崎駿につられて図書館で借りた。夢中で夜中まで読んだ。ワクワクドキドキした。情景がきれい。
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宮崎駿の例の新作に関連した指摘を目にして気になって読んだ。
全体的に時代がかったジェンダー的な物言いにもやっとしたり、伏線の回収があまりにストレートで、正直肩透かしを感じた部分も多かったけれども、やはり「塔」のモチーフは面白いなと思った。
物語的に重要だと感じる瞬間があったのは物語の冒頭と塔の中でのことだけであり、そこが不満な点であると同時に、一方で『君たちはどう生きるか』(本当は『幽霊塔』単体として評価すべきだろうけども)と関連づけるなら、それこそが両作品において主人公を突き動かす「出来事」であって、その点からいろいろ考えられそうで面白いと思う。
また『君たちはどう生きるか』の余韻が引いたタイミングで読み返したい。