- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003101117
感想・レビュー・書評
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1914年(大正3年)。
明治の精神とやらはともかく、生物として、配偶者の獲得は弱肉強食の仁義なき戦いである。だからKを出し抜いた先生については、私はさほど責める気になれない。人間はしょせん動物なのだから。第一、勝敗を決めるのは先生でもKでもなくお嬢さんであり、その点において3人の間に不正は何ら存在しなかったのだから。
だがKは死ぬべきではなかったと思う。生きて愛する女性のために、未来を祝福してやるべきだったのだ。たとえ心で号泣したとしても。そこで涙をのんで祝杯をあげてやることこそ、どんな道を説くより見事な心意気じゃないかと私は思う。そうすれば2人は幸せになれただろうし、世界に女はお嬢さんだけではないのだから、Kだって別の女性と結ばれて幸せになり、「そんなこともあった」と笑って話せる日がきたかもしれない。
「僕は馬鹿だ」とKは言う。馬鹿で結構ではないかと私は思う。「自分も含めて人間は、基本的にはみんな馬鹿」と気づいてからが、本当の修業ではないか。阿呆な自分を思い知って、じたばたあがいて悶絶して、それでもなお人生にイエスという、そのためにこそ覚悟を決めるべきではなかったか。有為の若い命を、花開く前に散らせてしまっては悲しすぎるではないか…。
…と、突っ込み所は多いのだが、それは人間心理が異常なほどリアルに書かれている証拠である。個人的には、純文学というよりサイコサスペンスとして楽しませてもらった。いたる所でネタバレされているにも関わらず、これ程の緊張感を最後まで読者にキープさせる筆力は、流石というしかない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白い、一気に読めたよ!
これで後期三部作も制覇だぜぇ〜〜。
今回は人生モノだけど、恋愛も大きなウェイトを占めてるな。人を出し抜くのは良くないよね。
これも、尻切れトンボだった。さあ、この後は自分で考えて!ってことなのかな。三部作は全てこの終わり方だったよ。
いや〜漱石面白いじゃん。若い頃に読むともっと身近な問題として捉えられたかもね。国語の授業でもこの面白さを伝えて欲しいな!というか私が分かってないだけか^^; -
実用書
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いゃ〜よかったです。今回注釈を参照しながら また、辞書で語句をしらべながら時間かけて読みました。
遠回しに先生がKに家業あるなら、恋愛を諦めろと諭していたのが伝わりました。だって本当は自分の方が先に好きになったんだから諦めろとは言えないよね。言ったところでお嬢さんの気持ち次第なんだから。お嬢さんの気持ちを知るのが怖かったんだろうね。相思相愛に確信が持てないところが不安で
先延ばしにした結果、、、。
遠い昔の話だけど、現代に通じるものがありおのおのの登場人物が生活している様が読み取れました。
三角関係の細かい心情がゆったりとしたタッチで描かれている。この頃の文学が好きです。
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この本は上・中・下の3つの章があり、章のタイトルの通り、上には私から見た先生、中には父親の死期、下には先生から見たKが描かれています。上で謎だった部分が下で明らかになるので上と下にはつながりが見られますが、なぜ著者は中で私の両親を主な題材にしたのだろうと思いました。
ふあ(海洋環境科学科)
所蔵情報:
品川図書館 913/N58
オンライン(青空文庫):
※オープンアクセスなので、どこからでも読めます※
https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card773.html -
後期三部作の3作目。国語の教科書や入試試験で扱うことも多いこともあり知名度が高い作品です。
内容は3部構成となっていて、最初が「私」が「先生」と出会い交流を深める“先生と私”、実家に帰省したが腎臓病の父が危篤となりなかなか東京に帰れなくなった中、先生から長い手紙が届く“両親と私”、そして本作のメインの話となる先生から届いた手紙の内容である“先生と遺書”で物語は締めくくられています。
主人公は「私」ですが、後期三部作の前2作と同様、主役である「私」は狂言回しであり、実質は自責の念を綴った手紙を通して「先生」の過去を語った物語となっています。
“先生と私”で、先生は何か過去に秘密を抱えているかのような言動をしており、その理由についてヒントのようなものが見え隠れします。
そして、“先生と遺書”でその謎が説明されるような流れとなっています。
“先生と私”で張られた伏線が“先生と遺書”で解消されるような形になっていて、謎解き小説を読んでいるような面白さを感じました。
読了後、再読するとまた別の感想を持つと思います。
有名作ですが、後期三部作に名を連ねている通り、テーマは人間のエゴイズムとなっています。
エゴイズムとは何かと言うと、他者の不利益を構わずに自己の利益を優先させることで、本作はまさにエゴイズムの果て、感情の暴走から生まれた悲劇を謳ったものとなっており、暗く悲しい内容となっています。
登場人物は少なく非常に読みやすい作品で、有名作ということで高校生でも手に取りやすい作品ですが、胸を打つほど辛い先生の独白は大人になって再読することでようやく理解できる部分があると思います。
もし、学生時分に本作を読んだならば、年月が経ってからもう一度繙くことをおすすめします。
内容は結構エグいです。
嫉妬と焦燥の応酬でぐちゃぐちゃになった先生の感情、そんな先生の感情を知らず、想いの伴った交友を続けてしまう親友とお嬢さんへの愛憎が克明に描かれています。
その果に利己的な行動をしてしまった先生の言いしれぬ後悔の様が悲しく、恋愛をテーマにしたストーリーは現代もいくらでもありますが、恋愛としては成就しているというのに、ここまで悲しいストーリーはないと思います。
物語のスタート時点でそれらは経過後であることも加えて胸を打つものがありました。
また、個人的には、影が見え隠れしいる先生に惹かれる「私」の形容しがたい感覚もまた本作の見所と感じます。
本作は先生の遺書の内容で終わっていますが、先生の元へ戻り付いて、誰にも打ち明けられない先生の吐露を胸にしまった私が先生と対峙したとき、どういう感情が呼び起こされるのか、その後の物語が読んでみたい気がします。 -
(読んだ人が帯に書いたコメントより)
●あっ!
●この本は教科書を読む前に読んでおきましょう。
●やはり奥が深い。Kというやつは。
●KはなんでK? -
名作シリーズを読んでみようの第一弾として『こころ』を読んでみた。本当は岩波文庫のブックカバーが欲しくて『モンテクリスト伯』のセットに買った本。
夏目漱石の名作ということ、そしてうっすらは内容知っているが本腰入れて読んだのは初めて。
こころの葛藤は分かったが、これがどれほどの名作で、意味深いものが含まれているのかまでは自分には分からなかった。きっと読解力とか共感する力とかが低いんだろうな・・