- Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003101353
感想・レビュー・書評
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「文人御馳走帖」での正岡子規の食べ物に対する描写やそのコダワリが楽しかったので、これもついでに読もうかなと気軽に手に取ってみたんだけど、とんでもない。最初の1日目の日記だけですっかり心を鷲掴みされてしまった。
紡ぐ言葉の美しさ、秘めた心の壮大さ、目線の素朴さ、生活の瑞瑞しさ、生への執着と諦念、そして食への拘泥。
1日目の記録でまず、お粥と白米を合わせて12杯も食べてその後菓子パンを10個も食べながら「最近食べ過ぎてよく吐きかへす」なんて書いてるかと思ったら、急に人様の家の家賃比べしたり、夕食に食べたものの俳句を2ページ分つくったり、絵を描いたり詩を書いたり、とにかく毎日いろんな突拍子もない事をするもんだから読んでてクスクス笑ってしまう。もう!すき!なんて人なの!
しかしその分、段々病魔に冒され衰弱していよいよページも飛び飛びになってしまうとその空白や言葉の少なさが辛くて、ページが進むにつれて文字数は少なくっていくのに反比例して読み進める速度はどんどん遅くなった。
頑固な人柄と柔軟な思考が、品のよい巧みな文章にのせられてするすると流れてくるもんだから、本を開いてただぼうっとしているだけでいつの間にか骨抜きにされてしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どんだけ喰うのだこの病人。カルマを感じる。もう餓鬼!喰いに喰って今度は腹が膨れて苦しくて、こっちが涙出てくるよ。便通だの精神錯乱だの、子規がこんなにあらぶっていたとは知らず。これっぽっちと言えど読んでるこっちが苦しくて読むのに2ヶ月。
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9月19日糸瓜忌に開催のBBで紹介するか悩んだ。自分もこの4半世紀、使ったお金や食べたものをほぼ毎日記録してる。病気療養の思いにもシンクロする。膿を出すときの絶叫と号泣、わかる!沢山の句があったりサラっと終わったり日によって分量が違うし誕生日の9月17日が少し長いのは当然だが、その2日後の9月19日即ち亡くなる丁度1年前の記録が重い。夜になって呼吸が苦しくなりそれが寒さのせいならこの冬は持たないとある。今ほどじゃないけど残暑でしょ。辛かったろうね。この後10日ほど日記が途絶える。死神がすぐそこに居たな。
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強靭な生命力。
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よく食べるなあすごいなあと読み進めていくうちに、だんだんかなしくなってきた。強い人だ。記録の影にちらちら見え隠れしていた激情が、一旦堰を切って、それからひどく静かになってゆく。
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身体の其処此処に穴が開き、痛さに喚き泣き叫ぶ。それでも食べる食べる。これでもかという程食べる。だが、食べ過ぎて腹膨れて苦しむ。判っていても子規にとっては食べることだけがほとんど唯一の楽しみなのだ。こんな我儘な兄を律は一所懸命介護しているのに、兄には美味いものを食べさせ自分は「野菜にても香の物にても一品あらば彼の食事はをはるなり」なのに、 子規は「義務的に病人を介抱することはすれども同情的に病人を慰むることなし」と怒っている。友人もたくさん訪れ、みんな子規のことが好きなのに。律も可哀そう。そして母も。