学力を育てる (岩波新書 新赤版 978)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309789

感想・レビュー・書評

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  • 「学力とは何か」「子どもの学力を伸ばすにはどうしたら良いか」を考えるとき、一度は読んでおいた方が良い本。ただし、具体例が関西の学校に限られている点が少し物足りないのと、発行年が少し古いため、特に教員の長時間労働問題については全く触れておらず、そのため「効果のある学校とは」の議論は今の時代には合わなくなってしまっている点が少し残念。

  •  うちの校長が勧めていたので,読んでみました。
     とくに「効果のある学校」の実践例のことを言っていたので,その部分を中心に読みました。
     ま,確かに,これだけ手厚く教師集団が指導をすれば,家庭的に,社会的にしんどい環境におかれた子どもたちも,伸びるんだろうなあって思いました。でも,そのためには,教師自身の家庭はどうなるのかな…(とくに中学の生徒指導上の話題)。みんな金八先生みたいになれないし…ってこともちょっとだけ思いました。
     ただ,効果を上げている小中学校がやっていることには,今,すぐにでも真似出来そうなことがたくさんあります。それはそれで,真似をしていけばいいんですよね。
     すでにうちの学校でもちゃんとやっているやん。というものもたくさんあるように思います。
     教師集団の力で,子どもたち全体を見ていく…そんな姿勢が大切ですね。

  • 現代人は学びから逃げているという判断を取っている。
    た。。。確かに。
    学び=辛い事、大変なことっていうようにネガティブに捉えている人が多いもんな。

    そんな子供に必要な事は親が真面目に学ぼうとする姿を見せてあげる事。
    子供はほんま素直な鏡なんだよなぁと実感。

    また学びの環境は親の経済にも関係してくるので、子供を作る時は経済状況も考えないとね

    意欲という根がしっかりしていれば、学問という花を咲かせるのは容易である

    関西人らしいウィットのきいた本になってる。
    この本読んで あぁ部活やってて良かったっておもった。 なぜか

  • 図書館で借りた。

    小中学生の学力について分析し、主に公立の小中学校での
    取り組みを紹介している。

    公立に効果のある学校もあることはあるが、少ないこと、
    私立の授業時間の方が公立よりもずっと多く余裕を持って
    勉強できることを合わせて考えたら、私学に行く人がいるのも
    頷けた。

    地域ぐるみ、学校ぐるみで取り組むのが最善の策だと述べている。

  • この著書を読めばこれまでの学力が低下していることを現代の子供、学校の責任にするという不毛な学力低下論争が無駄であるということが分かる。今私達がなすべきことは、誰に責任があるかを決めることではない。今現在の子供達に私達が何をしてあげられるのか考えることだと。
     著者は、学力を育てるためには、子供達に学びの習慣をつけさせることが大切であると述べている。そのためには、親が学びの姿勢を見せることが重要である。そういった環境を受けて初めて子供達は学び始める。私達が変わることそれが子供達を変えるもっとも大きな力となる。

  • borrow 070628

  • …近年の論調では、「子どもたちの学習意欲の低下こそが最大の問題である」と語られることが多い。「子どもの意欲を高める働きかけこそが、教師が考えなければならないポイントである」と主張されることも多い。しかしながら私は、こうした意見には反対である。学力問題の核心は、「子どもたちの意欲をどう高めるか」という「意識」の問題では決してなく、「子どもたちの習慣づけをどう図るか」という「行動」レベルの問題であると考えられるからである。
     もともと勉強がきらいだという子がいないのと同様に、生まれつき学習意欲が低いという子どももおそらく存在しない。逆に、世の中のすべての事柄に対して意欲をもっている人間というのも考えにくい。「意欲」というのも個人に内在するものではなくて、環境と関わりで生じるものである(p120)。

    今日の日本では、新自由主義的な考え方が広がり、選択と自己責任をキーワードとするような市場社会化が確実に進行しているように思われる。そこでは、持てる者と持たざる者との格差がどんどんと拡大していき、「勝ち組」と「負け組」とのギャップがますます顕在化していく。ブルデュー流に言うなら、経済資本・文化資本の多寡によって、生活のしやすさや快適さに大きな違いが出てくる社会になりつつあるのである。
     そうしたなかで、教育というものの役割を考えるなら、まず教育は、経済資本に働きかけることはできない。それは、所得の再配分や社会保障の領域にかかわる事柄であり、教育にかかわる者にとっては、家庭の間にある経済資本の格差は「所与」のものとして扱えるにすぎない。「豊かな」家の子とそうではない家の子がいるのは、大前提なのである。
     次に文化資本であるが、これはまさに学校が伝達することを期待されているものである。必ずしも文化資本に恵まれたわけではない家庭に生まれ育った私が、まがりなりにも大学教員でいられるのは、学校システムによって「引き上げられた」からである。(中略)しかしながら、そのコインの裏面として、学校教育のメリットを享受することなく社会に出ていった多数の仲間たちがいる。(中略)要するに、学校は文化資本を次世代に伝達できるが、それは決して万能ではない。すなわち、万人がそれを享受できるわけではないのである。
     そこで、ブルデューの三つ目の要素、「社会関係資本」の登場となる。第3章でふれたように、社会関係資本とは「人間関係が生み出す力」である。人々の間に存在する信頼関係やきずな、ネットワークやコネクションが社会関係資本の実態である。(中略)
     経済資本・文化資本のカベは決して低くはないが、そのカベは、社会関係資本を蓄積していくことによって十分に克服可能である。(中略)第4章で取り上げた「力のある学校」とは、そのような「社会関係資本」が高度に蓄積された学校」、すなわち「信頼関係のネットワークが重層的にはりめぐらされた学校」と形容することもできよう(p198-201)。

    「力のある学校」について興味のある方は、志水さんの『学力の社会学』(岩波書店,2004)『公立小学校の挑戦』(岩波ブックレット,2003)もおすすめ。あとは鍋島祥郎さんの著作を読むといいと思います。

    公立学校でもここまでのことができるんだ、と少し希望を持ちました。

著者プロフィール

大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門は教育社会学、学校臨床学。日本学術会議会員。主な著書は『マインド・ザ・ギャップ』(大阪大学出版会、2016)、『日本の外国人学校』(明石書店、2015)、『学校にできること』(角川選書、2010)など。

「2022年 『外国人の子ども白書【第2版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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