溥儀―清朝最後の皇帝

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310273

作品紹介・あらすじ

三度皇帝となり、後半生は「人民」として生きたラストエンペラー溥儀(一九〇六‐六七)。三歳で清朝最後の皇帝として即位、辛亥革命後の張勲の復辟による二度目の即位、満州国の「傀儡」皇帝、東京裁判での証言、戦犯管理所での「人間改造」、自伝『我が前半生』の執筆、文革中のガンとの闘いなど波瀾に満ちた数奇な生涯をいきいきと描く。

感想・レビュー・書評

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  • 溥儀の簡便な評伝。生涯にわたって「父なるもの」の庇護を求め続けた「永遠の少年」としての溥儀を描く。自伝『わが半生』を先に読んでいると何ともほろ苦く感じられる挿話も多い。時宜に応じて権力者の求めるところを察知し実践してみせる溥儀の生き方を狡猾さとか小心さと片付けてしまったらあまりにも不毛だ。数奇な運命を必死で泳ごうとした溥儀に寄り添う著者の姿勢には共感できた。
    『わが半生』執筆から世を去るまでの様子がわかったのは有難かった。文革の災禍と病とに苦しめられた最晩年は辛かったろうけれど、彼は人格を破壊されることなく生涯を閉じられた。傑出した人物ではなくとも、この過酷な運命をやり過ごす天分に恵まれていたのだろう。
    著者の熱意が迸りすぎているのか文章がどうも読みづらいのが難点。飛躍が多い。ただわかりにくいのは溥儀の特殊な人間性によるものなのかも。こんな人生を強いられたら私なら気が狂ってしまう。溥儀はやはり凡人の理解を超越したところにいるのだ。

  • 世の中には知らないほうがよかった、と思えるものが
    いくつか存在します。
    その「知らなければよかった」に該当するのが
    個のラストエンペラーの人生です。

    本当にどこまでも救いようがないんですよ。
    彼がラストエンペラーになったいきさつまでも
    救いようがないというか様々な事情が
    絡んでいるのでね…

    彼は改造された人民だったそうで。
    かつて彼にかかわった日本人も裏切り、
    中国国内でも…

    救えねぇ。

  • 「事実は小説より奇なり」まさにこれ。やっぱり感覚が普通の人とは違うよなという奇妙なエピソードが多い。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705615

  •  溥儀について概要は知ってはいたが、新たな気づきも多かった。著者は李玉琴、金源、李文達など溥儀ゆかりの人々に直接インタビューしている。また、「流転の王妃」嵯峨浩への評価は、特権階級意識や封建的価値観だと手厳しい。
     最後の皇帝として「復辟」を担わされた姿と、そこから逃れたい姿の併存。皇帝だが、父なるものに庇護されたい欲求。常に権力者から求められるものを敏感に察知し、演じる姿。著者が描く溥儀は、強者ではないのは確実だが複雑だ。人格を形成した成人後に即位しまた廃されたのなら性格は違っていたのかな、と考える。
     辛亥革命後、一夜にして世の中が完全に変わったわけでもなかった。「小朝廷」戦争の中国古代史住み続け、財宝は処分され始めたとは言え大量にあり、多額の費用を使い婚礼が行われる。民衆の方でも王朝を見る感覚が残っていたようだ。ジョンストンは英国版大陸浪人の趣がある。
     日本とは、満洲国時代の前から縁が深い。北京の日本兵営に駆け込み公使館に移ってから天津に旅立つ。その後訪日を希望するも、幣原外相の意を受けた吉田茂天津総領事が巧妙に阻止する。日本側は一枚岩でもなく、東北への溥儀連れ出しを図る陸軍に対し、幣原や天津総領事館は反対か慎重だ。
     満洲国皇帝としての溥儀は、男子を得られないことが確実になった頃、第2代皇帝を日本の皇族から迎えるよう溥儀自身が願い出るとの密約を関東軍司令官との間で結んでいた。傀儡は傀儡だが、天照大神の勧請も含め、天皇家との関係強化を溥儀自身が願っていたという。
     シベリア捕虜収容所では、幼少年期の小朝廷時代を夢想。続く戦犯管理所も含め、生活常識のなさと相まって痛々しい。実際の小朝廷時代はむしろ西欧に憧れていたのに。

  • 烏兎の庭 第五部 書評 2016年7月
    http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto05/diary/d1607.html#books

  • 様々な意味でとても興味深い。他書も読んでみたい。

  • 天子蒙塵の副読本に最適。

  • ラストエンペラー溥儀の生涯を概説する一書。
    本全体から全体的にそっけない印象を受けるが内容は分かりやすく
    溥儀の入門書に適している印象を受けた。

    溥儀の心情を様々な資料から読み解くが、
    あまりに極端で非日常的な環境下における人物の心情であり
    正直うまく消化しきれていない。
    著作が多数発行されているとのことなので、
    こちらも合わせて読んでみたいと感じた。

  • 「ラストエンペラー」で有名な溥儀の一生を、溥儀の自伝「我が半生」への批判を取り入れつつ、ある程度小説チックに紹介した1冊。事実は小説より奇なりを地でいったような溥儀の人生は、ただただ圧巻です。清朝の皇帝として生まれ、廃帝となり、日本の皇族と兄弟関係になり、戦犯として裁かれ、最後は時計仕掛けのオレンジのように「改造」される。平和ボケしている自分の人生を見つめ直したくなるような伝記です。

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