悪あがきのすすめ (岩波新書 新赤版 1079)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310792

作品紹介・あらすじ

何とも息苦しく、生きにくい時代がやってきた。そんな世の中に抗おうとすれば、どうしても「悪あがき」になってしまう。身をすり減らさずに、効果的に相手と「闘う」にはどうしたらよいのか。何があっても「へこたれない子」だった辛さんが、楽しく悪あがきを続けるコツを伝授する、元気の湧き出るエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • こちらの本、ブクログ登録日は2013年12月4日ですが、レビューを書いていなかったので、本日(2021年7月11日)書きます。

    著者、辛淑玉さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    辛 淑玉(シン スゴ、日本名:新山 節子(にいやま せつこ)、韓国語:신숙옥、ラテン文字表記:Shin Su-gok、女性、1959年1月16日 - )は、在日韓国人3世(大韓民国国籍)の人材育成コンサルタント、フリーライター、政治活動家。のりこえねっと共同代表、TRAI(Trans-pacific Research and Action Institute for the hisabetu-nikkei)東京代表。先住民族アイヌの権利回復を求める署名呼びかけ人。東京都渋谷区笹塚出身。

    こちらの本の内容は、適当なところからコピペすると、次のようになっています。

    何とも息苦しく、生きにくい時代がやってきた。そんな世の中に抗おうとすれば、どうしても「悪あがき」になってしまう。身をすり減らさずに、効果的に相手と「闘う」にはどうしたらよいのか。何があっても「へこたれない子」だった辛さんが、楽しく悪あがきを続けるコツを伝授する、元気の湧き出るエッセイ。

  • 息苦しく生きにくい時代の中で、抗おうと弱者が立ち上がることは「悪あがき」である。
    一見、ネガティブな響きを持つ「悪あがき」をどう実践していくか。

    筆者の体験談や家族の在り方に共感は出来ないけれど、反骨精神というか、言われたら言われっぱなしではない気持ちの強さに惹かれる所はある。
    声を挙げると人目に晒され、時には非難も受け、ああ疲れるなぁ……と感じることもある。
    けれど、そうした声によって黙る傍観者がいること、中には希望を抱いてくれる人もいること、声の裏側にいるそうした人々のことが書かれていて、無性にありがたいと思った。

    けれど、「内向きの善」であってもいけない。
    これは難しいところだ。
    何を以て、大儀の前に捨てるべき善とするのだろう。

  • 辛淑玉さんを始めとして
    辛淑玉さんの周りにいらっしゃる
    クルド人難民の支援活動をしておられる東先生
    シボクサのお母ちゃんたち
    市民ネットワークえひめのしたたかな人たち

    素敵な「悪あがき」の人たちに
    大きなエールをもらいました。

  • 悪あがきは人間を図太くする。周りの人たちを教育する。人を輝かせる。クルド人難民の子が通う夜間高校の東先生や熊本で在住外国人の人権について活動している中島さん。すごい。

  • ▼私の辞書には、「あきらめ」「見放し」「奴隷根性」はない。
     私にとって、どんなにブザマであろうが、どんなに微力であろうが、あがき続けることが生きることなんだと思った。(p.iv、はじめに)

    巻頭にそう書く辛淑玉さんが、自身をふくめ、ジタバタを続けている人たちのことを伝えるとともに、泣き寝入りせず、あせらず、楽しんで「悪あがき」を続けるコツを指南する。

    こんな人がこんな風に生きてはるんや…と思った。黙っていては自分が許せないと、クルド人難民の一家とともに入管とたたかった公立高校の先生、東文男さん。熊本で在住外国人の人権相談や人権擁護活動をやっている筋金入りの現実派、中島真一郎さん。

    東文男さんが、教え子のカザンキラン一家、そしてドーガン一家の2家族のために始めた署名集めに、6万人でストップをかけたという、現実認識。
    ▼6万という数字は膨大である。そこまで集めたのは、最初の難民のときは1万5000で法務省が動き、次が倍の3万だった。となれば今回は6万なければ、動かないと判断したからだった。彼はそれをやり遂げたと同時に、それ以上集めることはしなかった。次の難民のハードルが高くなるから、という判断である。(p.62)

    中島さんは、負ける経験も大事だと語る。
    ▼「負けた経験? そりゃあ、いっぱいあります。負け続けてきたことの方が多いぐらいです。もちろん、その経験は大事。だって、負けると、考えるから。負けながら、そのつど、どうしたら次はうまくいくかを考える。一度目の申請ではダメでも、二度目、三度目と挑んでいくと、認められていくこともあるしね。経験を積んだせいか、このごろは負けにくくなってきました」(p.75)

    そんな人たちの活動のやりかたを紹介して、辛さんは「悪あがきのコツ」を7点あげている。

    ・あせらずに、力を抜いて
    ・自分だけのこだわりを大事にする
    ・肝が据わっていれば、ハチャメチャもできる
    ・ああ言えば、こう言う
    ・ときには運も味方につける
    ・「私はここにいます」と発信する
    ・日和見だって、悪あがきになる

    この最後の日和見については、左翼教条主義のせいで「日和見はよくない」という考えが広がったが、そうじゃない、日和見はエコロジーとエコノミーだ、「今の自分の力やその時々の空気を読んで自分の姿勢を変えたり、出したり引っ込めたりすることは、人間の知恵なのだ。それこそが生きる力になるのだ」(p.153)と辛さんはいう。

    ▼なにが正義で、どう行動すべきか、その理由と理屈を考えることはたやすい。
     難しいのは、人びとが行動しない理由を考えることであり、なぜ人びとが正義に従わないかを考えること。そして、不正義を前に、じっとこらえつつ、逆転の時機をつかみとること。それこそ、ほんとうの悪あがきの力なのだと思う。(p.154)

    「「やれること」は自分が決める」という小見出しのところには、母がほんのすこし関わった住友裁判のことも書かれていた。「世にいう住友裁判の前史は、まず1992年、住友生命の女性たちが既婚女性の雇用を差別する企業体質に異議を申し立てたのがはじまりである」(p.157)という、ここのところだ。

    かつてこの会社で、結婚しても子どもを産んでもやめないうえに組合活動に熱心だったという母は、通えないような遠方へ配属変更をされて、これでは身体を壊してしまう、とても勤め続けられないと辞めたのだった。昔の同僚たちが裁判に訴えたときに、母は自分の経験を陳述書に書いたと聞いた。

    こないだ読んだ『ニッポン日記』(占領下の日本の実態をアメリカの新聞記者が描いたもの)にも、いまの憲法ができてきた状況が書かれていたが、この辛さんの本にも、こんなことが書いてある。

    ▼憲法学者の古関彰一さんによると、アメリカは、天皇を占領統治に利用するために天皇制を存続させなければならず、それを周囲に納得させるために戦争放棄の九条を加えた日本国憲法を作り、そしてその直後から、日本を再軍備させアメリカの下請けとして働かせるために動きはじめていたという。(p.93)

    古関さんには『日本国憲法の誕生』とか、『憲法九条はなぜ制定されたか』といった本があるらしいので、これはこんど読んでみたい。

    (7/6了)

    *東文男さんのこと
    クルド難民強制送還事件:国、国連、市民はどう動いたのか(難民支援協会)
    http://www.refugee.or.jp/jar/10yrs/4-1.shtml (前編)
    http://www.refugee.or.jp/jar/10yrs/4-2.shtml (後編)
    「難民だからというよりも、むしろ一人の人間として彼らを放っておけなかった」

    *中島真一郎さんのこと
    コムスタカ-外国人と共に生きる会
    http://www.geocities.jp/kumustaka85/intro.html

    *住友生命の裁判のこと
    住友生命既婚女性差別事件高裁で勝利の和解 
    http://www.kangou.gr.jp/sumitomoseimeisyouriwakai.pdf
    住友生命ミセス差別訴訟、勝利
    http://www.jlaf.jp/tsushin/2001/1032.html#02

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705657

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00173080

  •  腹が立つこと、許せないこと、そういったことに対抗する手段はデモや集会ばかりではない。できることを「悪あがき」として続けることによって、自らの思想を形にする。周囲の同意が常に必要というわけではない。自己満足でもいいのだ。続けることによって自分が変わり、場合によっては周囲も影響を受ける。行動範囲が広がることによって、邪魔されることもある。しかし、それは自分の思想が実体化した証拠でもあるだろう。辛さんの主張には「何もできない」とは言わせない迫力がある。これからはますます自己表現がしにくい状況になってくる。それでも「悪あがき」の手段はいくらでもあるということは覚えておきたい。

  • 「悪あがき」という言葉を私もポジティブな意味でよく使いますが、その根拠となっている本です。朝鮮人で勉強は嫌い、負けん気だけは人一倍だったという著者が「悪あがき」の仕方を指南してくれます。(現在は会社経営、人材コンサルタント、大学で講義等、様々な顔を持つ女性だそうです)
     ・悪あがきは決して孤立しない
     ・大勢を前にして怒ると、相手は暴走しない
     ・悪あがきは周りの人たちを教育する
     ・悪あがきは人を輝かせる
     ・悪あがきは希望をもたらしてくれる
    との事。そしてその悪あがきのコツとは
     1, あせらず、力を抜いて
     2, 肝を据えたらハチャメチャも出来る
     3, 自分だけのこだわりを大切に
    などだそうです。本書を読んで「悪あがき」という言葉が私は好きになり、今や自分の言葉であるかのように使っております。著者の勇気やパワーが、私にも伝わりますようにとの願いを込めながら。

  • 悪あがき=諦めない気持ちを貫いていると、やがて人生の道が開ける。著者の信念・生き方が素晴らしい!

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著者プロフィール

1959年、東京都生まれ。在日コリアン三世。小中高と一貫して不登校をつづけ、かたわら6歳のときからラベルの糊付け、ヤクルト配達、新聞配達、皿洗い、パン屋のレジ、焼き肉屋、モデル……などあまたの職業を経験する。26歳のとき、人材育成コンサルタント会社「香科舎」を設立、同社代表。また盗聴法反対や石原慎太郎都知事の「三国人」発言問題など、多数の社会運動に積極的にかかわっている。ラジオやテレビなどでの発言も多い。著書に『強きを助け、弱気をくじく男たち!』(講談社)、『在日コリアンの胸のうち』(光文社)、『女が会社で』(マガジンハウス)ほか。

「2001年 『女に選ばれる男たち 男社会を変える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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