不可能性の時代 (岩波新書 新赤版 1122)

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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311225

感想・レビュー・書評

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  • 難しかった。
    けど、なかなか面白かった。
    けど、結局なんについての本だったのかよくわからない。

    「不可能性」という単語の意味が、そもそもよくわからないので、なんかもっと、わかりやすい概念の言葉に置き換えられないか…と思う。

  • [ 内容 ]
    「現実から逃避」するのではなく、むしろ「現実へと逃避」する者たち-。
    彼らはいったい何を求めているのか。
    戦後の「理想の時代」から、七〇年代以降の「虚構の時代」を経て、九五年を境に迎えた特異な時代を、戦後精神史の中に位置づけ、現代社会における普遍的な連帯の可能性を理論的に探る。
    大澤社会学・最新の地平。

    [ 目次 ]
    序 「現実」への逃避
    1 理想の時代
    2 虚構の時代
    3 オタクという謎
    4 リスク社会再論
    5 不可能性の時代
    6 政治的思想空間の現在
    結 拡がり行く民主主義

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

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    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • (2011/2/13読了)

  • 目次の「結」は拡がり行く民主主義である。

    その「結」を導くため、見田宗介氏の提示した戦後の時代区分「理想の時代」「夢の時代」「虚構の時代」をものさしとし、書き綴った書である。

    「オタクという謎」「リスク社会再論」「不可能性の時代「政治思想的空間の現在」という項目を設定し、色んな角度で論じている。

    時代時代の社会現象、知識人のテーゼなどを持ち出しながら、著者の考え方を披瀝している。

    最後、インターネット社会となり、唐突に「六次の隔たり」「小さな世界」理論が飛び出してきたりしたが、それはそれなりに楽しい読み物であった。

  • 見田宗介氏の戦後史区分を発展させ、1995年以降の日本の現状を「不可能性の時代」と規定した論考。高度経済成長以降から現在に至る日本の歩みの枠組みを説得力ある筆致で論じている。現代文化を研究する際に、時代背景を抑えておく必要を覚える学生には最適な著作である。
    (2010年:清水均先生 推薦)

  • 近代文学演習Cでの発表作品。
    発表を通じて、わかったふりをしながら読書をしていることが多いことを痛感した。ただ、それにしてもなかなかに難解な本だった。「結局不可能性の時代ってなに」なんて質問されても、今でもスパッと答えられない……。

  • 難しかったなぁ。
    だから、進みが遅かったよ。
    途中、イマイチ興味が持てなくて頭に入ってこなかった。
    とくに「オタク」の章は議論の意義がよくわからない。
    美少女ゲームを議論の柱に持ってくるなんて・・・、これが現代日本社会の分析といえるのかどうか非常に疑問。
    「不可能性の時代」といっても、何が不可能なのかイマイチわからない・・・。
    そんな部分もありつつ、最後の「六次の隔たり」のくだりはナルホドと思った。
    「六次の隔たり」は以前にテレビか何かで見たことがあったけど、活字で読んでその意味をネット調べてみると
    改めて驚いた。
    確かに、これを元に民主主義の概念を見直すというのはおもしろい。
    ただ、民主主義そのものの妥当性は議論しないの?民主主義って手放しに受け入れてイイものなの?
    って疑問はあるが・・・。

  • 図書館で借りた。

    見田宗介の戦後の見方「理想の時代1945-60」「夢の時代60-75」「虚構の時代75-90」の次の時代は何かを論じている。

    テロなどの激しい暴力を現実への逃避、アルコール抜きの酒のような危険性を排除した現実を虚構化する方向、この2つを併せ持つようなものを「不可能なもの」と呼んで現在の現実を秩序づける準拠点になっているのではないかと著者は述べている。
    また、それを乗り越える方法を最後に示している。

    神という考え方があって見られている、という感覚があるのではなく、ただ見られているという感覚が先にあり、そのままでは不安だからその見ているものを神と名付けた、という部分があり新鮮だった。
    第三者の審級、という言葉を初めて知った。

  • 「現実」の反対を意味する言葉とは何だろう。
    ある人は、「理想」と指摘し、またある人は「夢」や「虚構」と表現する。見田宗介はこれらの概念を人々の心性として、戦後社会の歴史的区分を行った。
    本書は大澤が、虚構の時代以降、すなわち00年以降に布置する時代について分析する歴史書である。そして現代を生きる人々の心性こそ「不可能性」なのである。「不可能性」を解釈する上で、大澤は現代思想の泰斗、鬼才スラヴォイ・ジジェクの次のような言説を援用する。

    「カフェイン抜きのコーヒー」

    この言説は、存在を規定するべき要件となる要素の否定を指す。コーヒーを「コーヒー」足らしめるのは本来ならばカフェインである。換言すると、コーヒーにカフェインは「欠くこと」ができない。この存在(コーヒー)を規定する要件(カフェイン)の否定が現代のトレンドだという。(他にも、アルコール抜きのビール、危険抜きのセックス)


    大澤が指摘する「不可能性」とは次のように要約できる。一方で極度に具体化された「現実へ逃げ込み」、他方で「現実を虚構化する強い力」が働くという背反するベクトルの同位相での含有。

    私自身、「不可能性」は現代固有のものではないと考える。「戦い抜きの戦争(冷戦)」といったものが存在したようにそれは歴史を俯瞰した際、多分に見受けられる現象だからだ。しかし、そのような時代性が個人の生活世界において決定的な意味を持つのが近代であるという大澤の指摘には部分的には同意できる。ニートや引きこもり、格差、拡大する失業率と先の見えない不安、そういったものを考える際の一助になるだろう。

  • 虚構の時代の果てより思考が鮮明化してて読みやい印象。果てのその後。

    現実は反現実によって秩序づけられている。戦後日本の反現実のモード三段階。

    戦後に始まる理想の時代にアメリカが以前は天皇がいた第三者の審級の領域に置き換わった。透明な存在であることの恐怖。永山則夫。

    虚構の時代には第三者の審級を不可視化する相対主義的なモードが主流となる。より包括的な、メタレベルのコンテキスト、参照を前提とする「意味」を、そうした外側のコンテキストへの参照を欠く「情報」の量が圧倒する。差異との戯れ。アイロニカルな没入。オウム真理教。

    不可能性の時代。
    第三者の審級が不可視化し、偶有性に満ちた世界においては、個人の選択性ー再帰性が顕揚される。必然性を持たない選択へと急かされるリスク社会。自己責任。自由を命令、快楽を強制するものとして第三者の審級が回帰する。不透明な存在の不安からの逃避の装置として。少年A。

    「一方に、危険性や暴力性を除去し、現実を、コーティングされた虚構のようなものに転換しようという欲望がある。他方には、激しく暴力的で、地獄のような「現実」への欲望がいたるところに噴出している。」

    他者性なしの<他者>への欲望。
    多文化主義と資本主義、キリスト教の隣人愛、普遍性の徹底化。

    第三者の審級の回帰を抑止する為に、
    統治者と被治者の厳密な同一性による民主主義
    東浩紀の一般意志2.0

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著者プロフィール

大澤真幸(おおさわ・まさち):1958年、長野県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。思想誌『THINKING 「O」』(左右社)主宰。2007年『ナショナリズムの由来』( 講談社)で毎日出版文化賞、2015年『自由という牢獄』(岩波現代文庫)で河合隼雄学芸賞をそれぞれ受賞。他の著書に『不可能性の時代』『夢よりも深い覚醒へ』(以上、岩波新書)、『〈自由〉の条件』(講談社文芸文庫)、『新世紀のコミュニズムへ』(NHK出版新書)、『日本史のなぞ』(朝日新書)、『社会学史』(講談社現代新書)、『〈世界史〉の哲学』シリーズ(講談社)、『増補 虚構の時代の果て』(ちくま学芸文庫)など多数。共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』(以上、講談社現代新書)、『資本主義という謎』(NHK出版新書)などがある。

「2023年 『資本主義の〈その先〉へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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