タンパク質の一生: 生命活動の舞台裏 (岩波新書 新赤版 1139)

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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311393

感想・レビュー・書評

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  • DNAからmRNAに遺伝情報が転写されてアミノ酸が合成されるプロセスは学校で習った気もするしよく知られている。本書は、そこから先のタンパク質の振る舞いについても解説した本。誕生−成長−輸送−輪廻転生+品質管理と章立てされている。まさに分子生物学の最前線なのだろう。

    ・DNAはめちゃコンパクトに折り畳まれているが一本のヒモである。枝分かれなのない一本のヒモなので、そこから作られるアミノ酸の列も一本のヒモになる。情報の保存のためにはこれ大事。

    ・分子シャペロン。アミノ酸の列=ポリペプチドがきちんと折り畳まれて(フォールディング)タンパク質になるのを手助けするタンパク質。まず、らせん状のαへリックスや平たいβシートを形作ってから、立体的な3次構造を作る。さらにサブユニットが会合して4次構造となる。ポリペプチドはきちんとフォールディングされるとは限らず、結構失敗して分解されたりしている。

    ・アミノ酸には親水性のものと疎水性のものとがある。基本水分の細胞内部にタンパク質
    がうまくなじむには外側を親水性にして、疎水性のアミノ酸は内側に配置しないといけない。また疎水性のアミノ酸同士は凝集しやすいのでそれもまずい。

    ・システインに含まれる硫黄同士が結合するジスルフィド結合。タンパク質のフォールディングのクリップ的役割。

    ・分子シャペロンは熱ショックタンパク質(HSP)・ストレスタンパク質としても働く。熱などのストレスがかかった時に誘導されて、タンパク質の変性を防いだりする。また変性したタンパク質を元に戻すシャペロンすらある。

    ・合成されたタンパク質の輸送には、宛先指定に葉書式と小包式がある。微小管などの繊維が細胞内を走っており、小胞がそれの上を目的地まで走る。複雑。

    ・アミノ酸はリサイクルされている。数分の寿命しかないタンパク質から、数ヶ月の寿命を持つものまである。時間遺伝子もタンパク質の分解を利用している。ピンで分解するユビキチン・プロテアソーム系と、バルクで分解するオートファジー系とがある。

    ・品質管理のステップ。生産ラインのストップ→シャペロンによる修理→廃棄処分→細胞アポトーシスすなわち工場ごと閉鎖。うまくいかないとフォールディング異常病に。白内障、アルツハイマー、パーキンソン、プリオン病・・・

    まさにミクロコスモス。これが自分の体で起こっていると真剣にイメージすると眩暈がしそうだ。

  • 小さなタンパク質の精巧な生成過程に感動した。 進化論だけではとても説明できないような気がした。 進化の歴史が自分の想像をはるかに超えるほど長いということだろうか。

  • 細胞の仕組みをそこで働くタンパク質を取り上げてその一生を追いかける。タンパク質の誕生、その成長、その輸送、輪廻転生、そして品質管理。DNAに保存された情報をmRNAに転写し、リボソームはmRNAを端から3塩基ごとに翻訳してアミノ酸を作り出す。そのアミノ酸はペプチド結合で一本のひものようにつながっていく。そしてこのポリペプチドを構造をもった形に整形して機能を持たせる。それでようやくタンパク質となる。どこにでもあるタンパク質であるが、その仕組みを知れば知るほど自然の作り出す精緻な仕組みに驚く。進化と一言でいうが、遺伝子の突然変異などによる試行錯誤と自然選択だけでこれほどの精緻な仕組みが出来上がるのだろうか?多数の試行ととんでもなく長い時間のおかげか。

  • 人間はおよそ60兆個の細胞で構成されているとのことですが、細胞という舞台では様々なタンパク質という名の役者が様々な役割を果たして極めて精緻なシステムを稼働させています。本書は、その様子をわかりやすく説明してくれています。細胞のなかで起きているタンパク質の製造工程や品質管理の巧みな仕組みは驚かずにはいられません。とても好奇心をそそられました。

  • 岩波新書の科学書は内容の専門的具合と網羅具合がちょうどいい

  • ◆きっかけ
    ブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』2017/6/3

  • 我々にとって重要な栄養素かつ自身の組成要素でもあるタンパク質の話だが、タンパク質自体の解説ではなく、どのように造られ、どのように消滅していくかのライフサイクルに着目した本。よって物語の主役はタンパク質そのものではなく、取り巻きの細胞や細胞内小器官だ。DNAがタンパク質の設計図ということは、よく見聞する話であるが、その設計図から、最終製品の製造・流通・修理・廃棄に至る、生命インフラの話とも言えるだろう。こうした具体的メカニズムを説明されると、なんと精巧・巧妙なカラクリがあるものだと、ただただ感心するばかりである。しかもそれが、細胞一つ一つの中で24時間365日営まれている訳なので、生物とは(単細胞生物ですら)奇跡だとあらためて実感する。

  • 生物学はどうにも弱い。知識も不足しておる。わかりやすいんだと思うけど、読み手がその下を行った。

  • 2008年刊。著者は京都大学再生医科学研究所教授。

     タンパク質。それは人体の固形部分(30~40%)の約20%を構成する。のみならず人体の恒常性維持や各種機能を発現させる物質でもある。
     本書はそのタンパク質に関し、①それが作用する世界(細胞)、②誕生、③成長(分子シャペロンの働きを中心に)、④人体内での輸送・移動、➄タンパク質の死と再生(輪廻転生)、そして⑥機能性の維持・確保のメカニズム(品質管理)を解説する。

     一言でいうならば難しい書だ。しかし最先端研究は元より、その一般利用にも思考を巡らせ得る書という意味で美味しい書である。

     クロイツフェルト・ヤコブ病に関係するプリオン、あるいはアルツハイマー病に関係するアミロイドβなど、個人的関心に関わる事項にも言及されており、難しかったが、意味ある書だったと感じた。要再読か。

  • ミトコンドリア!
    元々何億年も前に、人間の細胞に進入して、そのまま共生するようになったバクテリア。つまり元を辿れば人間と別の生物だった。

    分子シャペロン!
    タンパク質に関して言えば、およそ3か月でほぼ入れ替わる。
    細胞のレベルにおいても、一年経つと身体を構築する全細胞の90%が入れ替わる。
    体重の2割弱がタンパク質。

    プリオン病(BSE狂牛病)伝播型プリオン
    ただタンパク質が細胞に入り込むだけでDNAは全く関わりなく増殖する。簡単にいえば、BSEに感染した牛肉を食べるだけで感染する。プリオンは熱に強く100度で煮沸しても一部が残存する。正常型プリオンは普通に体内に存在していて、それを巻き込んで伝播型プリオンが増殖していく。
    怖い病気だ。

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著者プロフィール

永田和宏(ながた・かずひろ)京都大学名誉教授、京都産業大学名誉教授。歌人・細胞生物学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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