タンパク質の一生: 生命活動の舞台裏 (岩波新書 新赤版 1139)
- 岩波書店 (2008年6月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004311393
感想・レビュー・書評
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【荒井善昭先生】
生物が生きているとはどういうことなんだろうと一度は考えたことがあるのではないでしょうか。タンパク質は確かに生体を構成し、比率も大き い重要な有機物であることは皆さんも認めることだと思います。しかし"一生"とあたかもタンパク質が生き物自体であるような題名がついていることにちょっと惹かれてしまいます。読んでみるとなるほど不思議な生体の仕組みに引き込まれてしまいます。狂牛病という病気が注目を集めた時期がありました。この狂牛病の原因は、生き物ではなくプリオンというタンパク質なのですが、恐ろしい変なタンパク質もあるものだと思っていました。しかしこのようなタンパク質の働きは決して特殊なものではないことが判りました。生体物質といったらまず上げるのはDNAでしたが、この本を読んで私はまずタンパク質かもしれないと思うようになりました。生きているということの考えが大きく変えてくれる本かもしれません。ぜひ皆さんも読んでみてください。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
岩波新書の「近代秀歌」のあとがきによれば,著者の永田和宏さんは岩波新書で理系と文系の両方の著書があるただ一人の著者だそうだ.
というので興味をもって読み始めたのだが,実は最後まで読み切れなかった.いろいろなものの名前が次から次に出てきてどうにも憶えられない.まいったなぁ.今とは隔世の高校時代にたった一年間だけしか生物を勉強したことのない私には歯が立たなかった. -
今まで読んだ新書の中でいちばん面白かったです!
テーマとなるタンパク質が馴染み深いものであるだけに、聞いた事のある用語も頻出し、簡単に入りこめます。とくに、コナンを読んだことがあるなら始め数ページで興味を持つ事がっちり請け合いです。
タンパク質と人間の生涯の違いは、恋をしないことくらいかもしれません。彼らは淡々と、生まれて育ち、ときに病気になったり間違いを冒したりもしながら、せっせと働きやがて死んでいきます。中には途中で自殺を選ぶものもいます。
タンパク質の生涯はすべて、世界である私たちを保つためのものなのです。感動して涙すら出てしまいます。 -
ヒトの身体はその60〜70%が水分であるが、固形成分の約20%はタンパク質である。そして、そのタンパク質の約3%は、毎日古いものから新しいものへと入れ替わり続けている。およそ3ヶ月で体内のタンパク質はすべて入れ替わることになる。ヒトを構成するタンパク質は5〜7万種類。これはDNAの情報に従って20種類のアミノ酸を配列合成したものである。しかし、合成されたタンパク質のうち、正しく機能する(フォールディングする)ものは30%ほどしかないものも少なくない。(中には2%ほどものもある!)では、いかにしてヒトの身体はヒトとして維持されているのか。タンパク質の絶え間ない合成と分解のメカニズム。
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読み助2013年3月18日(月)を参照のこと。http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2013/03/post-a5f1.html
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タイトル通りたんぱくの一生について、かなり専門的な部分について解説しながらも、読み手が理解できるところまで噛み砕いて説明している。
自身を(まさに)形作っている細胞の正体について知らないのは、あまりにもずさんすぎるだろうと思い、本書を購入したのだが・・・、読んでみると驚愕の一冊である。
細胞組織のなんと精緻なことか!
しかしそれでいて、彼らの仕事の大雑把なところは人間という特性の最小単位を体現しているようで非常に興味深い。
たしかに、本書は専門的であり、読みにくい。しかし、ペンと紙を用意しイメージを描きながら読み進めることで十二分に本書を理解し楽しむことができるだろう。
本書は、岩波新書の中でも文句なしに名著の部類に入る一冊である。
読み終わった後には、自分の体を多少なりとも尊敬することになるだろう。 -
だれの一生?
タンパク質の一生。題がおもしろいので買ったはいいが
難しいかった。
タンパク質は、肉や大豆等を思い起こす。
タンパク質は、細胞の一つ一つを構成し、人の命を支える。
たまには、たんぱく質を意識して、食べるか。。。 -
面白かったです。とても興味深い内容。細胞、分子の単位でそんな壮大な物語が展開されているとは思わなかったです。後半から少し難しくなり、全てを飲み込めたわけではないですが、知識を深めてもう一度読み直したいと思います。
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[ 内容 ]
細胞という極小宇宙で繰り広げられる生命活動の主役はタンパク質である。
それぞれに個性的なタンパク質には、その誕生から死まで、私たちヒトの一生にも似た波乱に富んだ興味深いドラマがある。
数々の遺伝病やプリオン病・アルツハイマー病など、タンパク質の異常が引き起こす病気の問題も含め、最先端の科学の現場からレポートする。
[ 目次 ]
第1章 タンパク質の住む世界―細胞という小宇宙
第2章 誕生―遺伝暗号を読み解く
第3章 成長―細胞内の名脇役、分子シャペロン
第4章 輸送―細胞内物流システム
第5章 輪廻転生―生命維持のための「死」
第6章 タンパク質の品質管理―その破綻としての病態
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
平易な文章で、説明もうまく実に読みやすい。
タンパク質という1つのテーマを、一生になぞらえて(というか実際そうなのだが)そのシステムを追っていく。そうすることで、システムの様々な要素が、一つ一つ意味を明確にもち、理解もしやすい。変に教科書的な説明にならない点、実に新書的に素晴らしいと思う。
生物関連の内容を扱った本を読むたびに、そのシステムの複雑さ・巧妙さに驚かされるが、本書ももちろん例外でない。
物理学が自然をシンプルなものに還元していく方向(もちろんその過程の複雑さはある)であるのに対し、生物学は途方もなく複雑なシステムであることを発見していく学問であると言えるのかもしれない。著者も言うように、新たな要素の発見がさらにシステムを複雑・巧妙にしていくということなのだから、それも当然かも知れない。