農耕社会の成立〈シリーズ 日本古代史 1〉 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312710

感想・レビュー・書評

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  • 岩波新書版の日本通史では一番古い時期を扱う。古代史6巻の1。縄文から弥生への変遷過程を考古学の観点から叙述。さらに考古学の発展史にも触れながら、この時代がどのように捉えられてきたのかについてもよくわかった。メタヒストリー。

    次巻「ヤマト王権」は歴史学の立場からこの時代にも遡りつつ叙述される旨が書かれてあり、考古学的な評価と歴史学的な評価の違いも面白そう。

  • 豊富な出土資料の分析から、日本の古代の実相に迫る試み。

    ・縄文・弥生・古墳の各時代の文化には連続性がある(縄文文化=縄文人の文化、弥生文化=渡来人の文化、という二項対立的捉え方は、もはや有用ではない)。
    ・本州では、弥生時代を通じて、急速に社会が変貌していく。
    しかし、変化の様相は、各地域(北九州、中国地方、中部、関東、東北)ごとに大きく異なる。
    ・北海道の続縄文文化、沖縄の後期貝塚文化も、あくまで地域特性に応じて緩やかな発展を遂げたにすぎず、「遅れて」いたり「閉じて」いたりしたわけではない。

    昔の教科書で知識が止まっている自分には、目から鱗がたくさん。

    ただ、著者自身はしがきで断っているが、古代の史実について、限られた資料から「断定」できることは極めて少ない。
    著者による推測部分も、一旦は批判的に考えてみる必要があろう。

    著者は「文献資料の検討を主にする歴史学と遺跡・遺構・遺物の検討にもとづく考古学」による、異なる見解を闘わせる議論が、今後の発展を導くと展望する。
    史実の探求には、柔軟な考え方が必須ということだろう。

  • 大陸から渡ってきた「渡来人」によってもたらされた稲作を中心とする弥生文化が、縄文文化にとって代わったといった、縄文時代と弥生時代を画然と区別する見方を退け、縄文文化から弥生文化への連続的な変遷と、地域に応じた多様性の存在を、分かりやすく解説しています。

    一般向けの入門書で繰り返し語られてきた、縄文文化と弥生文化を対置する図式を批判するに当たって、学説史的な解説にも多少立ち入ってはいますが、入門書なのであまり詳しい議論はなされておらず、どちらかというと考古学における近年の諸成果を広く紹介しながら、著者自身の抱く歴史像を描き出すことに努力が傾けられているように思えます。

  • 弥生時代という名称から受けるニュアンスは、学校の歴史教科書でインプットされたものからの脱却はなかなか難しい。
    何かしら、歴史の進歩という観点から、渡来人が持ち込んだ新たな稲作文明により、弥生時代に突入したという観念で頭脳が洗脳されてしまっていたようだ。
    この本は、日本列島における旧石器時代の人類文化が実在することを証明した岩宿遺跡の発見と調査から説き起こし、定形的前方後円墳の出現の読み取れるヤマト王権の成立期までが述べられている。
    朝鮮半島と密接に関係していた北九州地域からジワリと稲作文化が日本列島に浸透していったという緩やかな縄文時代から弥生時代への移行が日本各地の発掘調査から述べられていた。
    現代人の時の経過の認識では想像のつかない緩やかな時間の経過のなかで、古代の歴史を検証していくことの重要性を改めて認識した著作でした。

  • 縄文時代は、決して文化的に遅れた社会ではなく環境に適応した社会であった。そして、弥生時代は縄文時代と入れ替わったのではなく、少しづつ変化していった時代であった。そうした古代社会の変貌がリアルに理解できた。

  • 学校で習ったステレオタイプの古代が改められた。石器、縄文、弥生、古墳。どれも単線的なものではないのだな。渡来人説のステレオタイプも改められた。

  • 1パーセントから読み解いてる。

  • 弥生時代の前の縄文時代から弥生時代に至るまでを考古学の観点から記述したもの。年代に沿って、また地域ごとに記述していくスタイルにより、何がどう変わっていったか、地域ごとの差は何かといったことがわかりやすいのではないかと思われる。

    以下、私見。
    弥生時代から古墳時代への変わり目が面白い。
    弥生時代の呪術的な埋葬から、次第に権力者の権力の象徴としての埋葬へと変わったのでしょうか。稲作が定着したての頃は天候や豊作を祈る呪術的な力が強かったんでしょうが、富と資本の集中により次第に世俗的な力が強くなっていったんだろうなと推測。

  • 旧石器時代から弥生時代後半までの歴史考察。考古学者の議論によって、歴史を解明してきた経緯を知ることができる。歴史の知識がある人で歴史好きなら、楽しめるはず。

  • 最近の考古学の成果をふんだんに盛り込んで、改めて日本の古代史を問い直した意欲的なシリーズ。本書はその第一巻で、石器時代から弥生時代までを扱っている。3年前の刊行だが、state‐of‐the‐artな考古学に関する知見がまとめられていると考えていい。この本はその第一巻で、縄文~弥生時代に関する最新の情報がまとめられている。

    僕が子供のころに教えられてた古代像とは・・・、縄文時代は狩猟採集、そのあと渡来人がやってきて、水稲稲作が始まり弥生時代になる、なんて画一的な教えられ方をしてきたもの。しかし、本書によると、今はそうは考えられていない。縄文時代と弥生時代ははっきりした時代区分ではなく、地域によって時間差をつけて、さらに地域による特色を維持しつつ、徐々に交替していったようである。

    そもそも、稲作は、気候の冷涼化に伴い、従来の狩猟採集では不足した資源を補うために行われたようで、突如、渡来人が持ち込んで始まったものではないようだ。すでに縄文時代の終わりから、原始的な農耕は行われており、稲作はそれを基に徐々に浸透していった模様。

    また、教科書では、渡来系の弥生文化が縄文文化を駆逐したかのように描かれている。が、実際にはそんなことはなく、弥生土器には縄文土器の影響が色濃く残っているし、漁労のような日本土着の縄文文化は弥生時代にも継続している。

    弥生後期から古墳時代にかけて、日本の原型である倭という集団が形成されるわけだが、その出発はいかにも海洋民族らしい、gradualなものであることがわかる。

    シリーズは全6巻。これからが楽しみ。

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著者プロフィール

明治大学文学部教授 ※2022年11月現在
【主要著書】『農耕社会の成立』(岩波書店、2010年)

「2022年 『南関東の弥生文化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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