- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004315513
感想・レビュー・書評
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著者の川上量生は「ニコニコ動画」でお馴染みの「ドワンゴ」の設立者、「鈴木さん」とは「スタジオジブリ」の鈴木敏夫プロデューサーのことだ。鈴木さんは著者にインターネットの事を頻繁にたずねてくるのに、説明しているとすぐに飽きてしまい、なかなか聞いてもらえない。本書は、そんな鈴木さんにも分かるようにという切り口で「ネットとはなにか」「現在ネット社会では何が起きているか」を説明し、「今後ネット社会はどのような方向に進んでいくか」を予想したものだ。
先ず、ネットユーザにはネットをツールとして利用する人とネットに住んでいる人の2種類があり、そのスタンスの違いを理解することが重要だという。ネットをツールとして利用するのは一般的なユーザだが、ネットを住処としているというのは、リアルな現実世界ではなくバーチャルなネット世界を居場所とし、ネットでの人間関係を大切にする人々だ。ネット住民は、少数派であってもネット滞在時間が長く活発に発言するので大きな影響力を持ち、ネットサービスについても、その豊かな経験から優れたサービスを見分けてブームの先行指標となったりネット世論を作り出したりするので、ネット社会の動向を知るためにはとても重要な存在だ。これは日本だけではなく、世界中で起こりつつあることだと著者は分析している。
最近では、新聞、テレビなどのマスメディアに加えて、新聞社のニュースサイトやYahooニュースなどのネットメディア、Facebook、Twitter、LINEなどのソーシャルメディアで情報を収集する人も多くなっている。著者はそれぞれのメディアの定義と人々に与える影響を述べて、ネット世論がどのような仕組みで出来上がるのかを説明する。ネットとは、自分の見たい情報だけが見られるようになる仕組みが溢れているものなのだ。ソーシャルメディアを利用したネット世論操作がいかに簡単にできるかなどを知ることは、現代社会を生きる上で重要だ。
その他、ネット時代にデジタルコンテンツは無料になるだろうという考え方の妥当性、コンテンツとそれを流通させるプラットフォームの力関係、「オープン」なことが正しいとされてきたコンピュータの世界が今「クローズド」の方向に向かっている理由など、興味深い話題が尽きない。ただ「紙の本が電子書籍に置き換えられるのは避けられない未来だ」と断言しているのは全面的に共感できないところだ。ネットビジネスの成功者である著者が挙げる理由も理解できるが、これはビジネスの観点だけで割り切れるものでもないだろう。世の中から出版社も書店も無くなり、図書館はデジタルコンテンツを管理する場所になるという未来図は、想像しただけでも空しい。
インターネットはバーチャルな存在を資本市場と組み合わせることで、それをリアルな現実のものへと変える装置だ。そしてリアルのビジネスがどんどんネットに参入している現在、ネットとリアルは対立するものではなく融合するものになってきている。
インターネットとは何か、社会にどのような影響を与えるのかという事を正しく理解することは、これからの社会を生き抜くために必須の知識だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
よかった。
ネット原住民について理解が深まった。 -
川上さんいい人っぽいなあ。印象が変わった
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ネットを使ってどう稼ぐかを考えるヒントになればと思い読んでみた。だが、ネットでのビジネスモデルが難しいのは日本だけではく世界的な現象のようだ。
様々なテーマについて著者の知見が述べられている。
興味深い内容であった。
☆電子書籍の未来
紙の本が電子書籍に置き換えられるのは避けられない未来
そしてどのような未来になるか
・テキストや画像だけでなく、音声や動画などのいろいろなデータを取り込んでマルチメディアのパッケージ媒体となる
・自動的に内容が更新、追加、されるようになる
・検索、引用、メモ、読書記録の自動保存なの、読書体験の進化
・他人と読書体験を共有できるようになる
・自分の持っている本は、ネットワークに繋がっていらばどこでも様々なデバイスで読めるようになる。
☆ビットコインについて
著者の意見は懐疑的なようだ。野口悠紀雄氏は可能性について絶賛していたが。どちらが正しいのか。 -
3
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川上量生が考えるネットの未来。
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インターネットが社会に与える影響を様々なサブカテゴリーにおいて予想した本であり、題名とは少しニュアンスが異なる。
前提として、現在のインターネットは昔からインターネットを使っているリアルとは距離を置く先駆者(ネット原住民)が大きな影響力を有しているが、デジタルネイティブが多勢になるにつれてそれは小さくなるだろう。
ネット原住民のイデオロギーとして、自由、オープンというのがあり、実際オープンが勝利を多くもぎ取ってきたが、任天堂、アップルのモデルはクローズドであり、今後もセキュリティーなどを考えるとクローズド化が進み、プラットフォームの力が増そう。
コンテンツは配布コストは低下するのは確かだが、クリエーションにはコストがかかり、これを賄うためにはプラットフォーマーがコストを払うか、コンテンツプロバイダーが有料コンテンツを軸にプラットフォームあるいは一気通貫のサービスにより顧客を囲い込まないと賄えなくなる。
プラットフォームの力が強くなると、国家よりもプラットフォーム内の契約やルールが優先されてしまい、どこかで力を失いつつある国家が介入してくるだろう。徴税権もBitcoinやポイントで支払えば、回避することがかなり可能になってしまう。
電子書籍は長期的には勝つが、一世代くらいはかかるかもしれない。
テレビの強みはマスへの一斉配信であり、これはあと10年は継続する強み、またそのノウハウもテレビ局は持っており、これを生かすのが生き残りのキー。 -
キャッチーなタイトルに内容が完全に負けている・どうということのない,刺激の乏しい,だけど妥当な内容に,タイトルが負けている.タイトルだけ.
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品川Lib
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ぼやっと思っていたことが整理された。筆者の「思い込み」もあるだろうけど、それも呑み込んで読むのが良いと思う。