めんそーれ!化学――おばあと学んだ理科授業 (岩波ジュニア新書)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005008896

作品紹介・あらすじ

沖縄の夜間中学で化学を教えることになった著者。生徒の多くは戦争で学校へ行けなかった、おばあたちだった。化学式や計算ではなく、料理から化学変化とは何かを学び、石けんづくりから酸とアルカリの性質を知る――おばあたちの昔話も飛び出して、化学の世界が実体験と重なってゆく。楽しい授業へ、めんそーれ(いらっしゃい)!

感想・レビュー・書評

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  • 夜間中学生たちの学びから(盛口満) | web岩波
    https://tanemaki.iwanami.co.jp/posts/2062

    めんそーれ!化学 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b427331.html

  • ゲッチョ先生の本は生物(植物、菌類、昆虫、動物など)ばかりだったので(多分。私が読んだ・見たところでは)、理科の先生だと知っていても「化学」は意外な感じがした。
    が、読んでみると、さすがゲッチョ先生、化学でも切り口が面白い。
    沖縄の夜間中学で「おばあ」たちに化学を教えた体験から書かれた本で、おばあたちは正式に化学を学んだことは今までなかったわけだが、アメリカ統治時代を生き抜いてきた人たちだから、人生経験、生活体験が豊富で、ゲッチョ先生の問いかけに具体的な反応をしてくれるのがいい。ある意味、おばあたちも先生なのである。おばあたちの経験にゲッチョ先生が化学的裏付けをしてくれる。
    『ロウソクの科学』に書かれていたような実験もあり、『ロウソクの科学』より読みやすい。
     ゲッチョ先生がいい先生だな、と思うのは、謙虚であること(おばあたちの経験を敬意をもって聞いている様子がわかる)、とにかく生活に根差していること。理科の授業が面白くないのは、「これ勉強して何の役に立つの・何の意味があるの」と思うから。二酸化マンガンに過酸化水素水をかけて水上置換で酸素を取り出すことに何の意味があるのかが全くわからなかった。
    ゲッチョ先生の授業は、化学がどのように生活の中で生きているかをきちんと教えてくれる。
    「濁っている」もの(例えば水溶き片栗粉)と「溶けている」もの(例えば砂糖水)と「濁ったままでいる」もの(例えば牛乳)はどう違うのか初めて知った。
    あとこの世には「金属」と「非金属」と「金属と非金属がくっついたもの」でできている、とか金属の3大性質は「みがくと光る」「電気を通す」「たたくと延びる」である、とか、すっきりしてわかりやすい。私の人生でこんなにすっきりと教えてくれた理科の先生はいなかった。単に運が悪かったのか?いや、やっぱり、教え方が下手な先生が多いんだと思う。だから理科が嫌いになる子どもが多い。
    小学校高学年以上の児童生徒に読んでほしいが、化学を教える先生にもぜひ読んでほしい。学習指導要領とか縛りはいろいろあると思うけど、魅力のある授業をしてほしい。私も子どもの頃にゲッチョ先生に教えてらってたら、人生変わったかもしれないな。

  • こんな理科の授業だったら理科も好きになれただろうなぁと思う。ゲッチョ先生の身近なものから理解しやすく見せてくれるやり方もいいし、夜間学校の生徒さんの戦前から生きてきた生活の濃い話が絡んでくるのもおもしろい。生活のなかに、実際に経験したりよく見てきたことでないと、教科書だけでは頭に入ってもほんとうの理解と繋がることはできないんだなと思った。

  • 身近なものから化学を学ぶ沖縄の夜間中学での授業を基本に書かれた本
    化学に興味がある人はよんで実験してみたり
    子供と一緒に実験したら面白いんじゃないかな

  • 戦時下で学校に通えなかった方々が「第二の人生」(?)で余裕のある時期を迎え、夜間学校へ集まる。生活経験はともすれば講師の著者より、皆さんずっと豊富な訳で。科目が「理科」なだけに日常生活へ根ざした脱線を繰り返して楽しそう。そして、その楽しそうな体験談の中にはチョイチョイ戦争体験も混ざり、当時の厳しい状況が滲む。身近なものを使った実験ばかり。しかも結構、食べ物が多い。いいなあ…!

  • 千葉出身で千葉大理学部出の沖縄大学教授~夜間中学校でおばぁ達相手に理科を教える。肉じゃがを作り元素を考える。ロウソクで燃焼を考える。ベーキングパウダーで参加を考える。叩いて伸びるのが金属、コンビーフのオープナーを延ばして針を作った。コーラは電気を通すか。金属と非金属と金属と非金属がくっついたもの。砂糖と塩の違い、炭水化物は燃える。タンパク質は糖に変化する。デンプンのいろいろ。同じ炭水化物でもこんにゃく(マンナン)やセルロースは消化されない。小麦粉からガム(実はグルテン)。空気から窒素を取り出すためにアンモニアを作って、それから硝酸をつくる。牛乳が白いのは水と混ざりにくい脂肪の周りにタンパク質の壁をつくる。油と油は混ざりやすいので危ない場面もある。廃油からせっけん。アルカリの添加物。~生活実感が溢れる反応で、普段だとスルーしてしまう発言も真剣に応えようと思う。「へえぇ」という反応よりも「ああ」という反応を引き出せたら成功

  • 「ほぼ日」で紹介されていて読みたいと思った本。

    すごくおもしろかったです。
    著者が沖縄の夜間中学校で実際におこなった理科の授業を文字に起こしたもので、この時の生徒の多くは戦争で学校に行けなかったおばあさんたち。
    その日の授業のトピックに導かれて、連想ゲームのように生徒たちから飛び出す昔話がびっくりするくらいおもしろい。ただの「化学についての読み物」というだけじゃない、不思議な魅力にあふれた本です。

    本のテーマはあくまでも「化学」だから、生徒たち一人一人の顔までは詳しく見えてこないのですが、それでいて、ときどき、戦争による大混乱の沖縄で懸命に生きている人々の姿がふっと目に浮かびます。
    え?っと思っても、話はすぐまた授業に戻って化学のお話。
    まるで魔法の力でほんの一瞬だけ過去に時間を遡り、チラっと昔をのぞいたらすぐまた戻る、ということを繰り返しているような、そんな本でした。

    「自分は学校に通いたいと思って60年待ちかねていました。ようやく、私が通える学校ができました」という言葉に見られるような、いくつになっても学びたいという姿にはとても心動かされます。でもこの本を読んでいると、それ以上に、彼らが生きてきた長い道のり自体に自然な尊敬の気持ちを抱いてしまいました。

  • 沖縄に移住したゲッチョ先生、夜間中学で化学を教えます。そこでの生徒は、沖縄のオバアやオジイたちと外国人。実生活に沿った実験と授業で大いに盛り上がった様子。生活での体験を科学的に説明し、生徒たちも楽しく理解できているようだ。
    ゲッチョ先生は、埼玉での中高での授業も楽しくわかりやすかったのだろうなあ。

  • 学校に通えなかった沖縄のおばあに夜間中学で化学を教える作者。化学はものの学問。「へぇー」ではなく、「あぁ」と思わせる。生活や身近な物の学問である化学に魅力を感じるとともに、人に物を伝えたり教えたりする難しさと面白さを感じた。
    ジュニア新書であり、これから化学を学ぶ学生やいま勉強している学生、教員を目指す学生はもちろん、我々おっさんも、あれって化学のこのことだったのか、とか、共感するつたえかたとか、学ぶところは多い。

  • 普段自分がやっていたり目にしたりする作業や活動の中にはサイエンスがたくさん詰まっていて、そのほとんどをサイエンスで説明できる。
    それらは深堀していくと結構難しかったりするのだけど、そういった知見を沢山持っていると生きてる上で絶対楽しいし日々の生活に役に立つから、(いまからですが)生涯学び続けていきたいなあと思った!

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著者プロフィール

沖縄大学人文学部教授

「2019年 『琉球列島の里山誌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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