悪人

著者 :
  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022502728

感想・レビュー・書評

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  • 九州で起きた殺人事件を題材に
    「悪人」とは何なのかをテーマに徹底的に掘り下げる。
    物語の最初で既に犯人は逮捕されており
    結末は見えているけど、グイグイと引き込まれる。
    設定だけ抜き取ると
    「出会い系で知り合った色恋沙汰と浅はかな殺人」
    となってしまうけれど
    登場人物を様々な角度から描写し
    読み進むにつれて心象が様変わりする。
    宮部みゆきの「理由」にも似た完成度。
    「どっちも被害者になれんたい」
    「少女のちくわのエピソード」
    がたまらない。
    アメリカのロードムービーのような、
    素晴らしい恋愛小説です。
    そこに九州の方言が切なさを倍増。
    光代は優しい、いい女だ!と思っていたら
    映画版では深津絵里という完璧なキャスティング!

  • (2009より転載)
    今までに読んだ吉田修一作品の中では、一番だったと思う。
    終章のタイトル…ずっと考えながら読んで、読み終わっても考えて、 やっぱりあいつだよなー、と私は思ったけど、 読む人によって違うんだろうな。そういう話を書けるのはすごい。
    2009/3/12読了

  • 読んだのは2回目。
    さすがに、1回目に読んだときほどの衝撃はないけど、色々と胸にくるものがあります。
    やり場のない怒り、もどかしさ・・・
    決して誰も悪くない、というわけではないけれど、誰かを責めることもできないというか・・・
    読みごたえのある一冊です。

  • 悔しさ、悲しさ、切なさ…
    いろいろな感情がまじりあった不思議な読後感

  • 長編だったが、続きが気になってあっという間に読んでしまった。ただおもしろいだけではなくしっかり残る作品。

  • 初めてこの作者の作品を読んだ。
    文の構造に不正確な部分が少し見られたが、表現、描写が簡潔で美しく読みやすいと思った文体だった。

    人物全員がざらりとやすりをかけられるような不快な一面を持っている。

    主人公は「それくらいで?」と思えるほどあっけなく殺人を犯す。そのくせ母親や恋人に自己犠牲的に愛情を示す。
    その恋人は知り合って数日で、しかも肉体関係のみのつながりを根拠に彼と逃避行する。彼女の心理が一番不可解に思える。

    被害者と彼女を峠に捨てた大学生は人間の屑みたいに書かれているし、被害者の父親が、そんな娘に育ったことも感じていないのが哀れでならない。

    主人公の祖母は子育ても孫育ても失敗している。子供や孫は勝手には悪くならない。養育者はその子を必ず庇護すべきであるのに放置した結果でしかない。「ばあさんは悪くない」にまた違和感があった。

    「悪人」を描く筆力に脱帽である。

  • 軽く読むつもりだったのにそうはいきませんでした。全く先入観なしに、映画化されていたことも知らずに読みましたが、素晴らしい内容でした。特に祐一くんには泣かされました。短絡的に結論を出すことはできないのだと、改めて思わされました。あと、大嫌いなマスコミの下劣さも。この世からマスコミとかメディアとかってなくなれば良いと思います。ついでに子金持ちのボンボン二世も。祐一くんに肩入れした結果ですが、タイトルを"悪人"ではなくしてもらえるともう少し救われます。

  • 何年か前に映画を見て原作は初めて読んだ。
    映画を観た時、もうどうしようもなく落ち込んでしまって、胸が切り裂かれる思いがしばらく何日も消えなくて、作り話なのにこんなにも痛みが生々しく心が持っていかれてしまう体験は初めてで、衝撃的だった。
    それを覚えているから、原作を読んでいる時は、なるべく作品に入り込まないように注意しながら読んだ…が、やっぱりダメだった。またも落ち込んでしまった。
    そういう意味では、かなり現実逃避のできる本で、そういう意味では、リフレッシュなのかもしれないけど、いかんせん落ちている。
    でも読んで良かったと本当に思う。
    この作品で唯一救いを挙げるとすれば、ここでの悪人は、自分の中の善を追及した先の最終的な選びようのない結果にすぎない、社会的には悪だけど思想的には善でいられることもあるんだ、と感じることができたことかな。

  • 私がレビューでさんざん叩いてる吉田さんですが
    こうやってたまに当ててくるから嫌いになれない!

    出会い系サイトで知り合った男女の殺人事件の話
    こう書くと簡素だが、人間の感情について深く考えさせられる

    人を殺した人間が「悪人」なのか
    「悪人」だから人を殺したのか

    作者のずば抜けた描写力が如何なく発揮された作品
    ハードカバーでも相当分厚い本だけど、
    その7割は人物と場面の描写といっても過言ではない

    事件に関わるさまざまな人間を一人一人完全に描ききっているのが
    この作品の最大の良さだと思います
    まぁ、一人か二人、この人なんだったの?ってのもあったけど
    とりあえず、一人称をころころ変えるという書き方がうまい

    ほぼ全てが実在の地名で、セリフはすべて方言
    きっと九州の人だったらさらにリアル

  • 祐一は周りの悪から絡まれて悪事を行い、
    悪人となってしまったような感じ…

    悪と悪人は違うんじゃないか…
    読んでみると
    悪って、そんじゃそこらに
    いっぱい転がってる…

    そのことを考えるなんて
    そうそうにないかも…

    極論かもしれないけど、
    ルールって必要なんだけど、
    ホントにいつでも必要なのだろうか…

    まだ、先にストーリーがあるなら
    光代には、もう一歩
    踏み込んでほしいと想った次第。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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