- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022513137
作品紹介・あらすじ
南北戦争以前、横暴な夫のもとに騙されて来た女性が、二人の娘たちと暮らし始めると…。優しくて残酷で詩的で容赦ない長編小説。
感想・レビュー・書評
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幼稚な語り口でありながら、それぞれの視点から描かれる残酷で美しい日々。毎回この本を開くと、深淵に引き摺り込まれるような恐さがある。傲慢な男、騙された妻、そして奴隷達それぞれの美しい語りが素晴らしい。
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[メモ]
語り手の過去と現在が交互に語られるような構成となっていて、そこから現実の中にも過去が張り付いている、過去は通り過ぎたものではなくて、今と交錯しているという印象を強く受けた。
南北戦争や奴隷制などの時代的背景は物語の中で詳細な説明されることはなく、ちいさな楽園での出来事を、そこで生活するひとの目線で描いている。
個人的に話の内容は重く苦しいと感じたが、それだけにはとどまらせないそれぞれの語り手たちの語りが幻想的で素敵だった。
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最初の雰囲気から、こうなって行くんだと言う圧巻の作品。ラストに居たり、以前視た「カラーピープル」を思い出した。
この作品、恐ろしいまでに感情を押し殺し、淡々と、事実を突き詰めて行く手法。
残酷なシーンも寓話的に、擬人法を多用しているところが逆に寒気を感じさせる。
選書する際「柴田さんの訳なら最高だ」とチョイスしてよかった。頭に残存する微熱がたまらない。いわゆる「文学」とは大きく異なり、骨組みが無い、ふわふわしていつつ、流れも掴めない。しかしひたひたと何かが起こり、収まって行くという本。
邦題の「優しい鬼」=kind one
よくつけたもんだと舌を巻く。
アノニマスの「人」は本性むき出し・・それが故に無気味で真は冷たい・・んだと。
善き神は私達を見下ろすとき、色なんか見ないと両親は言っていたわ」の言葉がこの作品のコンセプトか。 -
文学
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なんかこう……暗いな……
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何これ、すごい。
と、読みながらずーっとビックリしてました。
世界には、すごい作家がたくさんいるんだなぁ、と毎回思うことをまた思った作品。
幻想的に描かれているのに、なんだかすごくリアリズム。
人の記憶の持つ不思議な特性が生々しく再現されている。
辛い思い出、苦しい記憶というのは、輪郭がボンヤリして、時間の前後も混沌として、後で振り返ろうとしたとき細部がよく分からないことって、実際あるよなぁ、と思う。
そのボンヤリ具合、抜け落ち具合がすごくリアルで、読んでいると、まるで語り手が本当にそばにいて、少しずつ休み休み話しているのを聞いているような気がしてくる。
自分の愚かさが原因で起こることは、思い出すのが苦しいから、特にあいまいになる。
よくこんな作品書けるなぁ。人の罪を、こんなにも美しく。
最初のうち、主人公が白人なのか黒人なのかも分からない。だから社会のどの階層の人なのかも正確に分からない。南北戦争より少し前の戦争で脚を失った、ってことは、たぶん白人? 「優しい鬼」って、誰のこと? いったい誰のことを指しているの? ねえ、あなたいったい何の話をしているの? と、頭の中をぐるぐる回る疑問。とにかく読むのがやめられない。
作者がピンホールカメラで撮った、っていう写真もすごくいい。ピントがぼけていて、まるで登場人物の頭の中の風景を覗き込んでいるみたい。
あとがきで言及されていた他の二作品、「インディアナ、インディアナ」と「ネバーホーム」も柴田さん訳で出ているなんて、くーっ、なんという幸せ。
絶対読もうと思ってます! -
南北戦争以前のアメリカで、奴隷制度や教育の不足から倫理的には獣以下の暮らしを送る人々を、とある白人女性の視点で描いた、壮絶な寓話のような物語。作品の力は文句なしの星5つなのだけど、あまりの悲惨さにメンタルゲージが削られたぶんー1。
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次々と起こる残酷な出来事もただ過去の一ページとして、密やかに語られる。
その言葉の余白にあるのは、後悔や恐れ、悲しみ、憎悪?
時に小説はそこにある言葉以上に能弁になる。