風神の手

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515148

感想・レビュー・書評

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  • 遺影専門の写真館「鏡影館」にそれぞれの理由で集う人々。彼らのあいだには数十年に及ぶ因果が紡いだ縁が隠されていたことがわかっていく…、緻密に練り上げられた物語にどっぷりと浸かれる物語でした。

    最初の短編で「えっ!?」という哀しさに打ちのめされたと思ったら、また違う意味での驚きが訪れ、そしてあれもこれもが繋がって、終盤にやっとすべてが明らかになっていく。ややこしくもつれた糸をこれだけ鮮やかに解き放つ手腕はさすがだなあと感じ入るばかりでした。

    最近特に作者さんは抒情的な語り方をされていると思うのですが、今回もそういった側面が強く、かつての「どんでん返しありき」な印象はほとんどなくなりました。

    この話も、登場人物たちの正しいとはけして言えない選択肢にもきちんと意味があるので、複雑な心情を抱かされます。

    そして正しさを貫き切れない弱い人だからこそ、支え合ってつながり合って生きていかなくてはいけないのだろうな、と感じたのでした。

  • 偶然吹いた一陣の風が神の手のように様々な偶然を引き起こしていく。タイミングといい場所といい、ここしかないというドストライクで嵌っていく。未来とは人知を超えて変わりゆくもの。運命の不思議に泣き、笑い、時には叫ぶ。受け止める我々人間にできることは、しっかりそれを真正面から受け止めること。4つの連作短編が読み進むごとに伏線を回収していく。おもしろいように大きく広がっていく風にこのうえない心地よさを感じた。

  • 巡り合わせの妙を柔らかく伝えてくれました。
    タイトルへの導きもすんなりと入り、久々の道尾作品に、いつのまにか引き込まれてしまいました。
    遺影専門の写真館が舞台というのも、時の移ろい、過去の思いを投げかけてくれたと思います。

  • 2018年9冊目。やっぱり道尾さんの紡ぐ世界はとても綺麗で美しい。些細な運命の悪戯に翻弄される人々がいる一方で、それによって新たに生まれるものもある。何かが少し違っても存在しなかったかもしれない⌈今⌋を生きる人々が濃密に描かれている。

  • 登場人物たちの人生が知らず知らずのうちに交差し、やがて大きな長編を構成する連作短編集。
    趣を異にするひとつひとつの短編は、それぞれが心に沁みいる素敵な物語だが、読み進めるに連れて読者の予想や思い込みは小気味よく裏切られ、ひとつの事実に収斂していく。非常に面白く、読み応えのある作品だった。

    #風神の手 #NetGalleyJP

  • 遺影専門の写真館を舞台とした連作短編集。
    人物と事件が気持ちよく連なっていく様は職人技。気持ちよく読書が進んでいく。

  • 遺影専門の写真館という設定からして、そうくるかーという感じ。伏線が張り巡らされた、考えつくされた物語だと思う。火振り漁やウミホタルを見てみたいなーと思ったり。

    最終的にきれいにまとまっているけれど、個人的には「それは犯罪だろ!」と思う部分がチラホラあり、それによってみんなの人生が少しずつ変わってしまっている点はちょっと気持ち悪いかな。

    全体としては展開が面白くてエンタメとしてもミステリとしてもいい感じです。

  • 人生ってそーゆーもんかもしれない。
    もしあの出来事がなかったら、あの時あの選択をしなかったら、今こうなってないかもしれないし、そもそも自分は生まれてないかもしれないし。
    それが巡り巡って可視化されて、それを追いかける旅の末に辿り着く真実。
    色んな糸が絡まりあって、今のそれぞれがいる。
    寂しく、悲しく、でも少しだけあたたかいミステリー。

  • もしもあの時、こうじゃなかったら。
    きっと別の人生を歩んでいたかも知れない。
    そう思うことは、誰にでもあるはす。
    ほんの小さな嘘からの行き違いが、偶然となって人生は紡がれていく。
    そして偶然は必然になる。

    この物語には、そんな偶然のパズルが巧妙に次々とはめ込まれて出来ている。
    最初の話は嘘から始まる切ない恋物語…かと思いきや、次の話から一気に変わる。
    ひとつの地域で生きる人々の、同じ時間を軸とした話なのかなと思ってほっこりしていたら、また次の話で大きく飛んだ。

    見えなかったピースのひとつずつが、パチン!パチン!とはまっていく感覚がたまらなく面白い。
    そして読後感もいい。
    きっと今ある自分の人生も、偶然の積み重ねで出来てるんだろうな。

    作家のアタマの中って、本当にどうなっているんだろうね。

  • 1つの物語が、あちらこちらに繋がっていて大きな時代を生む。
    自分の決断や行動が、もしかしたら誰かに影響を及ぼしているかもしれない。自分だけの人生の選択ではなかった。
    自分がみている人の人間性が本当は違う方向からみたら違う人にみえることもある。わかってるつもりでも人の片面しかみてないかもしれない。
    自分で選んで進んでいるのか実は流れが決まっているのか
    のらりくらりと 人の人生を垣間見たいときに、よんでみるのよき。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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