シンセミア 1 (朝日文庫 あ 39-1)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022643773

感想・レビュー・書評

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  • 初・阿部和重作品ですが、面白いですね。内容からは、表紙の意味がちょっと不明ですが、これから分かってくるんでしょうか。まだホンの序盤ってことを考えると、最初からここまで求心力があるのは凄いと思います。どこにでもありそうだけど、でもやっぱりちょっといき過ぎた”神町”を舞台に、普通ぽいけど、でもやっぱり度が過ぎた人々が織りなす、ミステリあり、恋愛ありのマルチ視点物語。次々に事件が起こるばかりで、今のところ解決は程遠そうですが、どんな風に展開していくのか、続きが楽しみです。

  • 自分の地元の話なので、すごく親近感がわいた。作家もその地方の出身なので、方言の再現度は完璧。田舎の何もない閉塞感はよくわかる。狭いコミュニティの中での噂話、何もない環境の中で芽生える狂気。文庫で4冊と長編だが、一気に読めた。登場人物に善人はいないし最低の人間ばかりだが、憎めないのはなぜか。滑稽に思えて笑えてしまう。最後は主要人物のほとんどが死んでしまった。あまり内面が描かれなかった小悪人どもはのうのうと生き残ってる。滅茶苦茶だけど面白かった。

  • 文庫本で全4巻。圧巻。活き活きとしている。生々しすぎる。エグい。ベッチョ文学。現代社会。群像劇。戦後日本の歩み。アメリカ。占領下の記憶。名残。天皇家。ドラッグ。穢と禊。まあぜひ読んでみてくださいと言うことです。

  •  このブログに書いてはいないが、阿部和重は過去に『アメリカの夜』、『ニッポニアニッポン』などを読んだことがある。正直ちょっと退屈でよくわからないところもあり、私には合わないのだろうかという印象を持っていた。それに何か解説本みたいなのを読まないと理解できないようなものはあまり好きではないし・・・

     友人の薦めもあったので、文庫になったところをIからIVまでまとめ買いした。

     これは、面白い!今まで読んだ阿部和重の中で一番面白いし、1つの長編作品として珠玉である。登場人物が異様に多いのだが、作品が進むに連れて各個性が埋もれずに際立っている。どんな人間にも暗闇があり、悪の部分の物語が随所に描かれているのだが、全てがよくあるドラマ的な展開を遂げるわけでもなく、現実の人生のように、あっけない幕切れだったりするところがなかなか素晴らしいと感じた。

     阿部和重のファンでもそうでなくても、読んで損のない長編。小説が好きだという気持ちが少しでもあるなら試してみてはいかがかな。

  • 総じて“クロニクル”、と括られうる長大な小説を私は好むのだ、という傾向を改めて解悟。
    すべての伏線が緻密に張られていてそれがクライマックスで一気に明かされ余すところないカタルシスに至る、といった作品では決してない。
    破綻、とまでは言わないけれど、どっかでパズルに組み込むことを忘れてしまったのかな、なんて感じられる微少なパーツもあるにはあるが、あらゆる事情が陰惨で破滅的で暗澹たる結末に向かって加速してゆく物語そのものが持つ悪魔的な魅力は、そうした細かな瑕を殊更問題にはしない。
    つまりは、作者のストーリーテラーとしての才能、文章を産み出す純然たる能力の為せる業に違いない。
    正直、オチはあまり好きではなかったが、一晩1冊のハイペースを崩さずに読み切らざるをえなかった、という観点から、星5つ。

    少しだけ、奥田英朗の「最悪」を想起させた。

  • 圧巻。
    「物語」とは何か知りたかったら、これ。
    悪人、狂人、ダメ人間しか出てこないのも凄い。

  • どこまで広がるのか、どこまで神町は破滅に向かっていくのか、と言うくらい物語はとどまる事を知らない。

    しかし、最終的には多少強引ではありましたがしっかり物語は完結しました。

    ラストは若干サプライズで終りますがね。


    自身の出身地を舞台にこれだけの壮大な物語を書き上げた阿部和重。

    今までの小説とは明らかに異なるジャンルを開拓した感じがする。

    新たな才能を見た。


    これは阿部ファンでなくとも読むべきだ。

  • 読み始めは普段読んでいるタイプの本ではなかったのと、かなり酷い話だったのでとにかくキツかった。でも、最後までぜひ読んでください!阿部氏の才能をすごい感じて、いろんな意味でほんとにゾクゾクっときました。オススメ。

  • この田舎町にはまともな人間は一人もいないのか。堕落の兆候があちらこちらに感じられて、先がとても気になる。

著者プロフィール

1968年生まれ。1994年「アメリカの夜」で群像新人賞を受賞しデビュー。1997年の『インディビジュアル・プロジェクション』で注目を集める。2004年、大作『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞、第58回毎日出版文化賞、2005年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞受賞。『シンセミア』を始めとした「神町」を舞台とする諸作品には設定上の繋がりや仕掛けがあり、「神町サーガ」を形成する構想となっている。その他の著書に『ニッポニアニッポン』『プラスティック・ソウル』『ミステリアスセッティング』『ABC 阿部和重初期作品集』など。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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