街道をゆく 32 阿波紀行、紀ノ川流域 (朝日文庫 し 1-88)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022644862

作品紹介・あらすじ

淡路島から大鳴門橋を経て入ってゆく「阿波紀行」。阿波の中央を深く刻んで流れる吉野川をさかのぼる。長曾我部元親、三好長慶、稲田氏などの「兵ども」が領土経営にかけた思いをたどる旅になった。「紀ノ川流域」は、在阪の筆者にとって気軽な旅。根来寺を訪ねて豁然たる境内に往時の殷賑と根来衆の強悍さをしのび、日前宮の圧倒的な森の下を歩いて「木の国」の芯を感じる。

感想・レビュー・書評

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  • 先日、私は和歌山県の旅から帰ったばかり。根来の近くも通過しました。勿論、以前に根来寺を訪ねた時は、火縄銃の銃痕を見ました。森の神々が祀られる神社も訪ねたことがあります。
    阿波は、四国遍路をしている時に訪ねました。吉野川を遡って大きなクスノキを観に行く時に、脇町も散策しました。懐かしいです。

  • 【読了メモ】藍、蜂須賀氏、三好氏、吉野川、衢地、根来寺、覚鑁、和歌山城、穴太衆

  • 以下引用~
    新政府がその裁きとして、稲田の家臣団を北海道に移したことはすでにのべた。(徳島の稲田騒動。阿波蜂須賀氏との対立)

    この脇町を脱出した小野五平にとって、目的は政治ではなく、将棋だった。
    当時、将棋界には弊風がつもっていたが、かれは実力と努力でこれを改革しようとした。
    柔術を改革して柔道をつくりあげた嘉納治五郎は阿波の対岸の大阪湾岸の人だったし、また俳句短歌を改革したのは、阿波のとなりの伊予の人正岡子規だった。かれらがいなければ、将棋、柔道、俳句といったものは、こんにち衰弱していたかもしれない。

    豊臣政権というのは、名子制を廃止したという点で、革命政権だった。当時、それに反対する地侍(名子の親方)による一揆が各地でおこった。豊臣政権はいちいちそれらを攻めつぶし、地侍を城下によんで大名の家臣にするか、あるいは在地のまま農民身分におとすか、どちらかにした。名子については土地をあたえ、自作農にした。豊臣政権は、ひとことでいえば、自作農設定政権、だったといっていい。徳川政権が、それをひきついだ。

    根来寺は、全国に情報網をもっていた。たとえば、1543年、薩摩の南にうかぶ種子島に鉄砲が伝来したときくや、すぐ人を出すという機敏さは、容易なことではない。
    鉄砲伝来譚には、かならず根来寺が出てくる。
    その後、根来衆は、戦国大名にさきがけて鉄砲をもって武装し、後年、豊臣秀頼によって堂塔・行人ともにほろぼされるまで、抜きん出た鉄砲集団として四方からおそれられていた。

    どうも、日本の大寺は、当時のヨーロッパ風にいえば、大学にあたるらしい。二和寺は真言学の単科であり、興福寺も東大寺も、仏教古典学の大学であった。

    信長は、中世的な不合理なもの、説明しようのない怪態が、政治や経済、あるいは軍事を握っていることを、身震いするほどきらった。このため比叡山延暦寺を焼きはらった。

    根来塗の赤は、似たようなものがないといえるほどに美しい。本来、赤というのははげしく主張する色である。が、根来塗の赤は、主張や執着というどぎつさを去ってしまったもので、こういう色はまれに天然のなかに見る。たとえば残照の雲間にふとあらわれてつぎの瞬間に消えるかもしれない赤である。

  • 【いちぶん】
    それでも阿波に、
    「これだけですなあ」
    というものがあるというのは、大きい。他の府県がうらやましがって、西洋風のパレードをやったり、民謡と日本舞踊の街頭進出を試みたりしているが、洗練度がちがう。歴史は、真似られないものなのである。
    (p.84)

  • 新義真言宗、宗祖覚鑁なんて人初めて知りました。興味わきます。根来寺行ってみたい。

  • もっと早くに読んでおけばよかったと後悔。
    何度か行った所が表面だけしか見てなかったと思う。
    紀州に関すると根来衆と雑賀衆の違いが明確になって嬉しい。この本を見ながら根来寺へ行ってみたい。
    初版が1978年だから変化している箇所も多々あろうけれど、歴史として読み解くには違和感はない。
    歴史を創ってきた人物たちの個々の名前は覚えられないが一つの山脈としてとらえることが出来るのも発見。
    どれだけの書物を読んで書かれたのかを想うと気が遠くなりそう。

  • 14/9/7読了

  • 根来寺の事! 三好、吉野川などなど本当におもしろかったよー。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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