- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022735263
作品紹介・あらすじ
【文学/評論】なぜ小林秀雄の言葉は人の心を魅了してやまないのか? 生誕111年・没後30年にあたる今年、『理性の限界』等で知られる気鋭の論理学者が、〝近代日本最高″の批評の数々を徹底的に考察する。〝受験生泣かせ″ともいわれる難解な論理の正体とは。
感想・レビュー・書評
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小林秀雄の作品からの抜粋を通して、思索の本質に迫っていく。傾倒していた哲学者ベルグソンのスタイルとともに、論理よりも直観を重視する考え方を説明する。人生の軌跡を辿ることで人物像が浮き彫りにされるが、人間味に溢れた一面には危うさが同居している。妹の高見澤潤子が語っている'兄 小林秀雄'からの引用は、人物像に彩りを添えている。一読したい本である。
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売却済み
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著者は、論理学や数学の哲学の専門家ですが、長く小林秀雄の魅力に取り付かれてきたとのこと。本書は、小林の魅力を示す文章の抜粋と、評伝的な著者の解説文から成っています。
「様々なる意匠」を排して、自分自身の眼で物を見ることをめざした小林の批評眼を高く評価しながらも、科学的世界観に対する偏狭な立場に陥ってしまうところに、その危険性を指摘しています。
著者のような小林批判は、一つの立場ではありうると考えますが、なぜ著者が、それにも関わらず小林に惹かれるのか、という点が、今ひとつ腑に落ちませんでした。危険性が同時に魅力であるとはどういうことなのか、もう少し迫ってほしかったように思います。 -
指名買いする読者はいないんじゃないかと思うくらい平凡なタイトルだが、読むと新たな発見を得られる。著者は留学先に全集を持参するほど小林ファンの哲学者。最初に小林独特の説得の手口の解説があり、彼の思想だけでなく文体までがベルグソンの影響下にあることが解き明かされる。ただ最後には、なぜ小林ほどの天才が非科学的で狭溢な世界に拘泥したのかわからないと泣きが入る。しかし各章の冒頭で必ず著者が気に入った小林の著作からの引用をたっぷりと読ませ、全人生の年代記は魅力的なエピソードにあふれ文芸評論家も嫉妬するほど手際がよい。
小林秀雄がベルグソンの哲学書を繰り返し読んでいたのは知っていたが、その当のベルグソンが日本で紹介される際に、訳者がわざわざ「危険な思想家」と注意を促すほどの哲学者だとは知らず、ますますそちらも読みたくなった。残念なのは、小林がいつ頃どのように原書に触れていったのかわからない点。それと彼の思想上、若い頃の関西への遁走はもっと詳細な分析がなされてしかるべきだったと思う。
いくつもの小林のエピソードから分かるのは、彼が全人生においても自身の思想の実践者であったことと、敵対者も虜にするほどの憎めない横顔だろう。授業にも出ず顔を出せば呼び捨てにされ金を貸せとたかられる指導教官や酒場で嫌みを言われカッとなって殴るのだが最後に懇々と説得され泣いてしまう生涯の批判者、これも酒で絡んで片腕を切り落とそうとやってきたのにあまりの安らかな寝顔に改心して帰ってしまう右翼など。
小林秀雄は書いたものは難解で退屈だが、話すとわかりやく面白いのは、文体がまるまるベルグソンのそれと同じで、まず結論ありきでそれを説明するための比喩はたくさんあるが至った理由は詳しくは明かさないためだとわかった。対して喋るほうでは、明治大学の講義のように、即興のライブで論理を組み立てていくのでその過程がよくわかるのだ。 -
【自分のための読書メモ】
「小林さんちの秀雄君」とは、記憶するに、『文学部 唯野教授』での愛称。「すこぶる博覧強記。唯一印象批評であっても読ませる内容にまで昇華できる天才」としてずっと理解してきた。
ただし、これまで、彼の文章を読んだことがない。すべて筒井康隆の受け売りなのである。すなわち、小林とは、名前だけは知っていて、『考えるヒント』は必読書のリストに上がっていて、中原中也と女を取り合ったことも知っているけれども、私たちの世代はあまり読んだことのない人。それが小林秀雄だ。(私たちの世代にとって、教科書や模試でよく読んだのは山崎正和であった。)
その小林秀雄が去年のセンター試験に復活した。そして現役高校生の多くの人生を狂わせた。どんな文章を書くのだろう? 興味があった。それが今回、この新書になったことで読むチャンスが訪れた。
驚いたことに著者は高橋昌一郎。何か対極にあるイメージ。手に取らずにはいられなかった。読了。意外なことに引用された小林秀雄の文章はとても肌になじんだものであった。そして生き方も魅力的な人物であった。(ただし、近くにいると大変そうではあるが。) -
「文は人なり」にあまり即しているとは言えず、「哲学」というよりは「評伝」になっているのだが、小林秀雄の魅力と危うさ?は十分に伝わってくる。
<逆説・二分法・飛躍・反権威主義>の組み合わせが楽観主義となる論法には気がつかなかったな。愛と優しさを漠然と感じてはいたが。これに読者ははまり込んで心酔し、信者になっていくのか。その構造は「反論理」「無責任」「学問ではない」と色々と批判されるし、危険と言えば危険ではあるのだろうけど、そこが魅力でもあるのだろう。
「科学思想によって危機に瀕した人格の尊厳」を救助するという小林哲学はもっと見直されていいように思う。 -
小林秀雄とかつての戦争との接触面を知ることができ、自分のもつ小林秀雄像が豊かになったと感じる。そしてその不可解な魅力は増すばかり…。
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大宮駅リブロ、¥820.