新書621 悪の正体 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.34
  • (2)
  • (15)
  • (16)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 145
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022737212

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 神学研究科出身の佐藤優が、『悪』とは何かについて、主にキリスト教的見地から綴った一冊。

    今まで読んだ本と違い、キリスト教の知識がベースとなっているので、キリスト教にそこまで興味ない自分にとっては、正直面白みには欠ける感じだった。

  • 「悪」というテーマについて、キリスト教神学での考え方や小説・映画などに表現された洞察を掘り起こしながら論じている本です。

    著者の発想の根幹にあるのは、やはりキリスト教における「悪」の考え方ですが、とくに現代においては「悪」に対する感度が鈍くなっているという状況判断にもとづいて、「悪」の具体的なかたちを例を引きつつ考察しています。そのうえで、「サバイバル護身論」というサブタイトルが示しているように、読者一人ひとりの日常のなかにもひそんでいる「悪」を見抜き、それに対処するための方法についても論じられています。

    キリスト教徒ではない読者としては独断的にも思えるような「悪」についての議論を、現代の社会状況における具体的な「悪」のありかたにまで落とし込んでいく振れ幅の大きさが著者の議論の魅力のひとつなのかもしれません。

  • サブタイトルにあるとおり本書は悪からわたしたち自身を護ることを目的とするとともに、すべての人間に内在する悪への自覚を促しています。悪に無自覚であれば他者の悪の脅威を回避できないばかりでなく、自分自身の悪に気づかないため知らずに人から恨みを買っていたり憎しみの対象になっていることがあり、二重の意味で危険に身を晒すことになります。

    また悪への考察を通して資本主義において悪は構造的に組み込まれており人がいかに悪に陥りやすいか、著者が信仰するキリスト教プロテスタントが悪(原罪)に対して自覚的であるかに触れています。

    『人のセックスを笑うな』のユリを例にとって指し示される悪魔のありようは、現実において具体的に悪がどのように顕れるかについてイメージを与えてくれます。

    「何も命令せず、要請せずに、人を自在に動かす。権力における自らの優位性は手放さない。そんな人物には気を付けた方がいい。これこそ典型的な悪の技法にほかならない。」

  • 自らが正真正銘の善人だと胸を張れる人はいない。
    私も6対4の割合で悪人だ。

    現代は悪への感度が鈍くなっているらしい。
    犯罪などのわかりやすい悪だけが悪ではもちろんなく、
    どの人間にも内在している悪、その本質を
    プロテスタントの立場から聖書の言葉を引用し論じる。

    「悪は人間によって行われる」という一点が、この書の力点。シンプル。

    たしかに、善人・悪人という区別なく、皆が悪を行うものだとすると、人を無闇に断罪し、人に期待し絶望することもない。

    私も自分が悪い行いをしがちなのだと念頭においておこう。
    そして偽善から善に限りなく近づこう。

  • "悪は人間により行われ、だれの中にも悪がありえる。
    旧約聖書、新約聖書、ロシア正教会、などのキリスト教、ユダヤ教等の経典を読み込むと、それぞれに悪のとらえ方が異なっていることが解説される。"

  • 中々馴染みがない聖書についての技法、もっと聖書が読みたくなった

  • 世界のいたるところに潜んでいる「悪」について、聖書を手がかりに、極めてロジカルな視点でアプローチしている。新書とは思えないほど濃い情報量で、一読しただけでは理解が追いつかない。巻末に記された読書法を駆使して、繰り返しのアプローチをこころみてみよう。

  • 何も知らない人がこの表紙を見たら
    「悪の正体はこの表紙の男だ」と思うことでしょう。

    でもこのかたはこの本の著者の佐藤優さんで、良い人なんです。

    私はソーシャルライブラリをやっていて、
    佐藤さんの新刊がでるとわかるようになっています。
    そしてどこの図書館にあるか調べて、
    すでに予約者が並んでいると、
    慌てて予約してしまうんですね。
    実にまた、佐藤さんが次々と本を出すんですよ。

    でも佐藤さん曰く、生活のためにはこんなに仕事しなくても大丈夫なんだけど、
    聖書の言葉「受けるよりは与える方が幸いである」が原動力となって、
    睡眠時間を削って、執筆活動や講演、そして勉強をしているのだそうです。

    「すべての人が、幸福に生きるために、真に役立つ知識が身に着くことを願っている」そうで、
    「人に騙されない、悪意に翻弄されない、経済的に成功する」という功利的な意味も含めて
    「いかに良く生きるか」を目標に、「日本人の知の技法を高める」が長年のテーマなのだそうです。

    この本に限っていえば、キリスト教の理解が深まって、すごく良かった。
    佐藤さんの哲学系の本はいくつか難しくてコリゴリだったけど、
    これも同じく哲学系統とするなら、すごくわかりやすくなったと思う。

    「悪や悪意はどこに現れるか。それは人間と他者の関係に現れるのです。
    自分の出世や名誉、利益のために人を道具として利用しているところに悪は生まれてくると考えています」と佐藤さん。

  • 最初の導入部、資本主義の構造から語る悪、人と人の間に悪が産まれる、というところは面白く読めた。悪があるのが当たり前、それを自覚すること。
    後半に入った4章以降、引用してくる聖書や本の部分が、なかなか実世界の事象とのリンクができない。宗教や基本知識が少ないからか?

  • 与える側の人間になるが、人を救う言葉。重いですね。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤優の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×