蜘蛛ですが、なにか? (3) (カドカワBOOKS)
- KADOKAWA/富士見書房 (2016年7月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040709420
感想・レビュー・書評
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三巻を読み終わったけど
面白すぎ(^O^)
続きがきになる〜!
ゲームで言えばやっとレベ上げできて
さー、本編をガンガン進めていくぞーと
いう所でしょうか。
ここからどんな話の流れになるのか
楽しみです!四巻買いに行かないと詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
迷宮からの脱出は、逃れるためではなく立ち向かうために。
思考の堂々巡りという言葉があります。
迷宮入りという言葉もあります。
この世界にはどうにもならないこともあるのだという現実は、読者の誰にとっても立ちはだかっていることと存じます。
けれど、具体的に越えられない壁を認識する機会に恵まれているか、そしていざそれと対峙した時に越えていけるかと言えば、どうでしょうか?
少なくとも私は、この戦いを見た後にそう言い切れる気がしません。
地龍アラバ戦、序盤の総決算となる巻です。
主人公が己の誇りを賭して絶対に避けて通れない相手との戦いです。このためにこの巻は編まれているのでは?
そう思うくらいに、おそらく彼との戦いは熾烈を極めました。
双方、言葉を発しない中で主人公が思った心の声、いいや魂からの共感のすべてが名台詞だと思うくらいには。
双方には当然、油断も驕りもありません。
アラバはスキルとステータスに留まらない、長く生きる中で研鑽を重ねた戦巧者でした。
主人公のお株を奪うかのように、空間を活かす知略の持ち主でもありました。
それどころか、持てる手札どころかまだ見ぬ山札まですべて投じてきたアラバはここまでで、もしかすればこれからも、最高の強敵であり続けるのかもしれません。
彼の撃破すなわち、弱者としていつも追われていた主人公が強者として脱皮した瞬間です。
続いて迷宮からの脱出も成し遂げました。
けれど、物語はまだまだ続きます。
続いている時点で、読者はこの物語が「定番外し」ということに気づかされると思います。
逆に言えば、「蜘蛛に転生」ってあり得ない導入からはじまった物語、ここまでのお話はまだ「定番」なのです。順当に強くなり、強敵を打ち倒すというだけならば、王道はこの時点で終わっています。
スキルとステータスの数を増やして喜ぶだけの段階は過ぎ去ります。主人公は次の段階に向けて動きはじめます。
戦闘が選択肢のひとつに過ぎなくなり、物語のジャンルがガラリと変わるのです。
元々この作品、「異世界転生」って要素以外にジャンルが行方不明な気がしないでもないですが、それにしても大きく変わるのですよ。
つまりは、ここから戦う相手は目に見えるものとは限らなくなります。
打倒アラバが視野に入るまでにも「D」とのはじめての会話、人族との遭遇・人助け・虐殺、人気キャラであるロナント爺さんとの邂逅もここ、と。
今後の布石となるイベントは目白押しでしたが、一番大きな点はやはり「禁忌」カンスト&効果発揮。
この謎のスキル、現時点では詳細が明かされません。
主人公と読者の持つ情報格差の最たるものですが、主人公は憤りつつも「自分」が最も大切にしている「誇り」と「自由意思」を手放そうとはしません。
なんのことかって?
改めて読み返してみるとわかりますが、Web版と比較するに、展開が分岐するポイントはここであると言い切れます。
事実、この先の巻は書き下ろしが増え、見た目は同じでもほぼ別物と言える物に仕上がっています。
ここでひとつ。
理不尽な逆境に立ち向かってきた主人公にとって、最初から最後まで障害となるものは「世界」でした。
迷い込んだのは物理的なダンジョンとしての「迷宮」だけではなく、さらにその外側にある「異世界」そのものでもあったわけですね。
そんなわけで本編と足並みを揃えてきた「S」編ではメインメンバーが理不尽な陰謀に巻き込まれます。
世界の裏側で巨大な力が動いていることに薄々気づきながらも、神の息がかかったソフィアという巨大な壁に阻まれて目先に迫った問題の解決さえままならなりません。
これもある意味では世界に囚われていると言えるのかもしれません。
自分が何と戦うのか? それを知らなければ戦うことすらできないのです。
広いはずの外界にいて未だ自分の為すことを知らない「S」のこれからと、「私」のここからに思いを馳せつつ。