白雪堂化粧品マーケティング部峰村幸子の仕事と恋 (角川文庫)
- KADOKAWA (2013年1月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041006566
作品紹介・あらすじ
中堅化粧品会社・白雪堂に新卒で入社した峰村幸子。看板ラインの「シラツユ」販促キャンペーンチーム担当となった。だが、シラツユの売上は下降線、峰村が先輩の槙さんに相談しながら考えた企画は他のメンバーには理解されない。就職浪人中の彼氏との溝も深まり、さらには情報漏洩疑惑や合併の噂まで聞こえてきて…。眼前にそびえる壁を自然体で乗り越えようとする峰村の姿に頑張る気力が湧いてくる、お仕事小説の白眉。
感想・レビュー・書評
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主人公の峰村幸子は中堅の化粧品メーカーのマーケティング部の新入社員です。ロングセラーの看板商品である基礎化粧品ブランド「シラツユ」の30周年記念販促キャンペーンチームの担当になりましたが、企画中のデータ収集で「シラツユ」の売り上げがじり貧なことに気がつきます。企画案はなかなか認められず、就職できずに大学院に進学した彼氏とはギクシャクし、それでも同じチームの先輩社員の槙さんに助けられながら、前向きに頑張っていきます。主人公の入社から1年間のお仕事成長物語です。タイトルに仕事と恋と書いてありますが、恋の方は彼氏しか出てきません。
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一人の女性の自立。
そんなふうに括ってしまえるかな?
周囲に多いタイプ。
自分は自分の意志で発言、行動しているつもりで胸を張っているけれど、実は自分に影響を与えた人の借り物の言葉を口にして、そのひとを真似て行動していることが傍目には滑稽なくらい見えているのに、本人だけが気づかず、人の意見には左右されない、と公然と言い放つ人。そのくせ、自分には力がない…などと矛盾することも口にする人。
槇さんや成宮のように行動できる人はさほど多くはないと実感する日々。
言葉と力が釣り合っている人には、なかなか巡り会えず、組織に属していることの虚しさを感じてしまう日々。
守るものがなければ、私も飛び出してしまいたいのだけれど。
そんな自分もまた、口だけ人間なのだなあ…と、嘆息しきり。
お?と思わせられたのは、壊れかけた峰村と直也の関係が持ち直したこと。よくあるストーリーなら、直也から離れて成宮との新しい恋にでも走りそうなのに。
なんだかそこは、無条件にうれしかった。直也の成長も、微笑ましく感じた。
もっとビジネス成功物語的な展開をするかと思っていたが、こじんまりとした身近なテーマでまとまっていた。
手放しでは良作とは言えないけれど、読んでみても損はしない。そんな作品でした。 -
気軽に読めるお仕事系の小説で面白かった。
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中規模の化粧品会社の新入社員の奮闘記。
守秘義務というものはあるけれど、飲み屋で話のネタにしないにしても、恋人や同僚には話してしまうことって多々ある。それがいつ自分の首をしめるかはわからない。
起業するという判断も、転職するという判断も自分の判断だからこそ輝ける。
マーケティングという仕事は全然想像がつかず、未知だったが自分がやりたい仕事は実はそういったものなのかも、と思った。もうこの年で転職はしたくないけど、部署移動は志願してもよいかも... -
まだ社会人になって間もない私には、新入社員の幸子にとても近い立場で読むことができた。
ベテランの人でも、若手の頃を思い出して共感するところが多いのではないかと思う。
学生とは違う人との付き合い方に驚いたり、会社での理不尽な出来事に納得がいかなかったり。
入社して間もない人間の方が、会社のおかしなところに気付きやすいものだと思う。
会社の売上データがまとまってないというのはかなり極端だとは思うが、戦略を立てて動けていない中小企業は多いだろうな。
他にもワンマン経営者とそれに服従する幹部とか、現状維持に甘んじて挑戦する意欲のない気風とか。
幸子は30周年にふさわしい企画を、と仕事を与えられたのに、新しいアイデアを提案したら、ほとんど検討してもらえずに却下される。
みんな最初は違和感を感じるはずなのに、だんだんと「こんなものか」とその状況に慣れていってしまい、不自然さに気付かなくなる。
私も上記のようなことはほとんど経験していて、他にも、なんでそんな非合理的なやり方をするのか聞いてみたら、「ずっとそうやってきたから」とか、「そういうものだと思っておけばいい」と言われ、しまいには「なんでだろうね?」なんて聞き返された、なんてこともある。
さらに、他方ではまったく違うやり方で仕事を進めていて、雑用を任された私が二つの部門の間に挟まれて動けなくなったりとか。
あーもう、社会人は大変だ。
それでも、幸子は周りの人に支えられながら仕事を進めていく。
失敗もあるし、まだ学生の彼氏とは就職を機にギクシャクしてしまっているけれど、仕事には全力で当たる。
その姿を見ると、仕事って楽しいものなのかもと思えてくる。
仕事への考え方は人それぞれで、うまくいかなくなったときに取る手段も人それぞれだ。
うまくいかなくても地道にやるのか、環境を変えてみるのか。
転職したっていいし、しがらみが嫌なら自分で起業したっていい。
女性のお仕事ものというくくりでは『株式会社ネバーラ北関東支社』もあるが、社会人のいいところも悪いところも見れた本作の方が好み。
ここのところ滝羽麻子の作品を立て続けに読んでいるが、文章にクセがないので苦にならない。 -
仕事、恋。
自分で道を選ぶ。
幸せかどうかも、自分が決める! -
お仕事するって、ただ食べていくだけではなくて
自分の人生の大部分を占める要素。
でも情熱の持ち方も、誰と何をするかも、
仕事への捉え方も、人それぞれ。
結局は、自分の仕事の意義を
どこに見いだせるか。
自分が大好きな化粧品をプロデュースすることに
全力を注げる、幸子の生き方に少し憧れる。
それだけ頑張れるのが、羨ましい。 -
人に恵まれると何事もうまくいく。
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題名長いな
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新社会人峰村の入社一年目を描いた物語。
同期入社だけど中途採用で、
社会人経験のある成宮。
同じチームのキャリアウーマン槙さん。
そして会社の絶対的存在のマダム。
就職出来ず院生となった峰村の恋人。
その他にも必ず誰もが自分にちかしい立場の人物がいるんじゃないかな。
社会に出たばかりのときは、
先輩社員がとにかくかっこよく輝いて見えたなとか、今の自分はそういう存在になれているのかな
とか、これからの人生についてとか…
過去も未来も考えさせられるお話です。 -
高校生や大学生向きかな。
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お仕事小説として、リアルなところも書けていて、読みやすくて面白かったのですが、少し物足りない面がありました。
ただ、ヒロインは入社1年目で、このヒロインの視点で語られるので、物足りなさを感じるのはある意味当たり前なのかもしれません。
とても、爽やかで優しい表現が多くて、誰もがこんなに仕事に一生懸命にできればいいのにねえ、と汚れた大人の私はちょっと思ってしまった。 -
新入社員あるあるもありつつのお仕事もの。
みんないろんなモチベーションで働いてるんだよなーとか考えつつ、さわやかなストーリーで一気読みできた。
おもしろかった。 -
お仕事小説の一種のような体裁ながら、マーケティング業務のリアリティーがなさ過ぎて興醒めでした。
残念! -
おもしろかった〜〜!瀧羽麻子さんの本、何冊か読んだけど、晴れのちブーケもいいけど、白雪堂も大好きになりました!悪い人が一人も出てこないwそしてお仕事をされながら書いているって事にも共感が湧きました。もっと次の作品読んでいきたいと思いました!!!
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さらっと流れる季節の中、お仕事物語、奮闘"独り立ち"編…って感じかなぁ♪。
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中堅化粧品会社の新人・幸子の仕事と恋。
瀧羽麻子が描くお仕事小説。 -
う~ん、なんというか平均的。会社の業務の様子や周囲の人物もだし、その中で感じる気持ちや感情の揺れ全てが平均的。もう少し主人公の個性が欲しかったし、ストーリーがあっさり進み過ぎているので印象に残りにくいかなぁ。
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解説で知ったけど、ネバーランドと同じ作者の方だったのかあ!(確実に読んだだけど、なぜかブクログに登録してなかった)
うーん、新入社員っていうのがなあ。
せめて3年目とかじゃないとリアルじゃない気がしたんだけど、会社ってこういうものなんでしょうかね。
以下引用
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「だけど、あせっちゃうのよね。下手すると一週間ずっと、会社の中のひととしか話してなかったりするじゃない? 生活がここで完結してるっていうか、行動範囲が限定されてるっていうか。世の中にちゃんと追いつけてるのか、不安になる」
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会社に長くいればいるほど、社員にはその色がついていく。最初は不思議に思っても、だんだん違和感は薄れ、あたりまえのようにおそろいの空気をまとって同じ考えかたをするようになる。あせっちゃうのよね、と表情を曇らせた槇さんのことを、わたしは思い出した。
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今の状況の、全てが望んだ結果というわけではないにしても、誰もが選択し決断して、その積み重ねが現在につながっている。なんでも選びたい放題とはいえないが、ひと昔前に比べたらはるかに選択肢はひろがっている。
「でも、自分で決めなきゃいけないしんどさっていうのもあるよ」
槇さんは言った。
「この感じ、二十代前半じゃわからないかもしれないけど。少なくともわたしはわかんなかったな。二十三のときには三十歳の自分なんて想像もつかなかったし、いつか自分が三十になるってこと自体、実感できなかった」 -
化粧品会社の新入社員の女の子の話。一生懸命な働きっぷり。主に仕事の話。
2014/6/11 -
沢山の選択によって私の今は成り立っている。だから色々無茶した10代の頃を含め、あの時ひどかったなぁとか思うこともあるにせよ辿るべきみちだったんだろうと思う。そしてそう思える今があることが幸せ。
選択するって意外と難しいしエネルギーを使う。けれど実際は何を選択するか、よりも選択した今を肯定できるかの方が人生において大切なんだろうなぁ、とあまり物語と関係のないレビューでした。 -
ワーキング小説として楽しく読んだが、合併などこんな簡単ではないだろうと思われる心理描写が軽すぎる気がした。
その軽さが気軽に考えずに読めていいのだろうけど。 -
化粧品会社のマーケティング部に勤める新人の峰村幸子が看板商品であるシラツユの30周年記念キャンペーンに向けて奮闘する話。
すぐ読めるライトノベルで、等身大の自分と向き合えるストーリー。個人的には、峰村の先輩兼シラツユキャンペーンパートナーの槇が5年目(30歳)で、彼女の先輩らしさ、仕事に取組む姿勢(自信、積極性、ベテランさ)と自分を比べて、しっかりせねばと反省。そして、主人公峰村のように周りに「幸せそうな子」と見られるような人になりたい。
印象に残った言葉
「誰でもはじめははじめて」
「名が、体を表してる。いつも幸せそうだもん」
「「おもしろいこと」が外にあるから、ためらいもなく出ていくのだろう」
「今の状況の全てが望んだ結果というわけではないにしても、誰もが選択し決断して、その積み重ねが現在につながっている。なんでも選びたい放題とはいえないが、ひと昔前に比べたらはるかに選択肢は広がっている。「でも、自分で決めなきゃいけないしんどさっていうのもあるよ」」 -
新卒の頃を思い出して懐かしくなるお仕事小説。大切なのは自分自身で選び取ること。
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仕事と恋に真っ直ぐに向き合おうとする主人公が可愛い、すごく優等生っぽい小説。さくっと読めた。
『会社には仕事をしにきている。それが大前提で、ただプラスアルファとして、なにかささやかな楽しみが欲しい。ささいなことで構わない。毎朝エレベーターで一緒になる素敵な先輩とか、新しくオープンしたカフェでの休憩とか、そしてたとえばカレーとか。』 -
おもしろかった笑
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就職活動中に読んだ一冊。働き方の個人差や学生と社会人の意識の違いが描かれていて面白かったです。社会人になってから読むと、また違う感想を持つかも。
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文庫棚にあって、裏表紙の紹介をぴらっと読むと「お仕事小説の白眉」とか書いてあるので、借りてみた。長くておぼえられないタイトルである(単行本のときは『白雪堂』というタイトルだったらしいが、それはそれでワカランよな~)。
著者の名前は「たきわ あさこ」。文庫タイトルにある主人公の名前は奥付のルビでは「みねむら ゆきこ」だが、本文では「幸せな子供で、サチコ」(p.79)になっていて、何かが間違っているようだ。(※)
白雪堂化粧品に新卒で入った峰村の、初夏から次の春までが描かれる。「はじめははじめて」「なにかをかえる」「ひたすらはしる」「どんでんがえし」「それぞれのみち」「おわりとはじまり」と、章のタイトルがすべてひらがな書きなのが、ちょっと目をひく。
このお仕事小説はなかなかおもしろかった。まず人物造型がくっきりしている。主人公の峰村、先輩の槙さん、同期の成宮、白雪堂化粧品の創業者の娘で「シラツユ」という主力ブランドを30年率いてきたマダム、といった会社の面々、そして峰村のプライベートでそれなりの存在感がある院生の(それは就職浪人の仮の姿であるらしい)直也など。
峰村は、槙さんとともに、発売から30周年をむかえる「シラツユ」販促キャンペーンのチームに加わることになる。白雪堂といえばシラツユ、というほどの代表的な商品とは比べにくいが、『We』も、いまの前身の『新しい家庭科We』の創刊からはほぼ30年。
この販促キャンペーンの話や、シラツユブランドをつくりあげ手塩にかけてきたマダムの言動などは、『We』がこの先売れるのかというようなことを考えるうえでも、なんだか気になるし、フェミックスはどうかと振り返って思うところもずいぶんあった。
「コンセプトっていうのはね、単純にいえば、どんなものをどんなひとにどんなふうに売るかってことよ」(p.42)と、槙さんにかみくだいて教えられ、峰村は過去30年分の業績数値をまとめる。数字は、販促としてやっていることが正しいかどうか、判断を助けてくれる。問題は、白雪堂ではそういったデータがまとまっていないことだった。
▼売上の変化をグラフにしてみて、ぎょっとした。信じられないことに、売上げは三十年前と比べて三分の二ほどに縮んでいた。物価の変動があるから、数量ではほぼ半減に近い。自分の手で加工しただけに、年を経るにつれてじりじりと短くなっていく棒グラフは、リアルだった。(pp.44-45)
「シラツユ、大丈夫なんでしょうか」としょげる峰村を、槙さんは「しかたないのよ、ずっと同じメッセージで、同じタレントを使って売ってきたんだもの。よくこれまでがんばってきたなって思うわ」と慰める。
▼ブランドも生きものなのだ。人間と同じように歳を重ね、最後には死んでしまう。(p.45)
その「シラツユ」をなんとかする計画を峰村や槙さんは考える。不景気だから仕方ないだろうと上司に言われながら、でもそれだけじゃない、「シェアが落ちてきたのはずいぶん前からです。思い切ってなにか新しいことをやらないと」と峰村は考える。そうして峰村たちがたどりついた案は、「ブランドの若返り」だった。
シラツユを使っている消費者を年代別に示したグラフを比べ、今のシラツユのお客さんは30年前から使っている人たちが大半で、新しいユーザーを取り込めていない、という仮説を峰村たちは示す。このままお客さんが高齢化するばかりでは苦しい、ターゲット層をもう少し広げていかないと、ということだ。
「ブランドの若返り」という案をすすめていこうとして、上司やマダムのダメ出しにあいながら、峰村と槙さんはあれこれと知恵をしぼる。ある日、居酒屋で二人で飲んでいてひらめいたのは、シラツユの下に「子供ブランド」をつくることだった。だがその提案も、なかなかマダムのお気に召さない。
▼「なにかを変えるって大変なことなんだね。ものごとも、ひとの考えかたも。シラツユがまさにそうじゃない? ずっと同じやりかたでやってきて、周りからも評価されて。その積み重ねがあると、簡単には変わらないし、変えられないのかも」(p.71)
『We』のことを、つい重ねてしまう。周りからの評価がどのくらいかはともかく、ここまでやってきた30年、いまの『くらしと教育をつなぐWe』に変わってからも20年という年月。シラツユのお客さんのように、『We』のお客さんも、20年前、30年前の方々が、そのまま高齢化している部分が大きい。Weフォーラムへ初めて行った頃に「若い」と言われていた私が、いまだに「若い」と言われたりするのだ。
峰村と槙さんは、あきらめず、しつこくマダムを説得した。シラツユをもっと多くの人に使ってもらいたい、せっかくの商品を今のユーザーだけが独占しているのはもったいない、若い人にもっとシラツユのよさはわかってもらえる、等々。
そして、マダムから、シラツユの子供ブランドにはGOが出た。そのあとも、いくつかの壁はあるが、峰村はそれに対処しながら、仕事とか働くということを考える。そこのところの悩みや迷い、よろこびやホッとする気持ちなど、そうやんな~と共感できるところがあった。
峰村が23歳、峰村が頼っていた槙さんが30歳、今の私よりずっと若いなあと思う。マダムが、昔に比べたら頭が固くなって、動きが鈍くなってきたかもしれないと自身を振り返るところに、ちょっとどきっとした。
転々といくつも職場を変わってきた自分を振り返って、私は仕事になにを求めているのだろうなあ、ということも考えたりした。
※主人公の名のよみについて、角川書店にたずねてみたところ、奥付のルビが間違いで、次回重版の際には修正するという連絡をいただいた。
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