- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041008263
感想・レビュー・書評
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相変わらずおもしろかった。1部2部を読んでから3年ぐらいたっていたのでやっと読めたという感じです。3冊目になっても面白さは相変わらずでした。読後感がいいですねー
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ジョーカーゲーム、ダブルジョーカーに続く3作目。
続編はたいてい前作より評価が落ちるものだと思うけど
今作は前作、前々作と同様に面白かった。
今作のテーマは「引退」だろうか。
どの短編の結末もスパイの引退を感じさせるものだったと思う。
D機関が凄すぎる印象は残るが、
その方が小説としては面白いから仕方がないのかもしれない。
次回作がもし発表されるなら、是非読みたい! -
シリーズ第3弾。極めて冷めた淡々とした文章で綴られる大日本帝国陸軍のスパイたちの活躍。本作も短編集で、『誤算』、『失楽園』、『追跡』、『暗号名ケルベロス 前編』、『暗号名ケルベロス 後編』の5編を収録。
一番の読みどころは、スパイ養成組織『D機関』を統括する結城中佐の生い立ちに迫った『追跡』だろう。まるで『ゴルゴ13』のデューク東郷の生い立ちを描いた作品のようだ。 -
スパイは決して目立つ存在ではないので、少なくともそういうところは押さえてるところがリアリティがあった。
007みたいに派手にドンパチを繰り広げるのはどう見てもただのヤカラ。と言っても、あれはエンタメだからそれはそれで良くて。
最近スパイものでも派手にやるのがたまにあるので辟易してたところに、静かにやる感じのがあったので良かった。 -
再読。
D機関シリーズ第3弾です。
そして、私はこの第3弾が1番好き。
全5編(うち2編は「暗号名ケルベロス」の前後篇)あって
どの話もとにかくクオリティが高い。
その中でも1番好きなのは「誤算」かな…。
どう読んだって任務の"失敗"だと思うことの連続、
それが全部誤算ではなく計算つくされて
起きた事象だったという話。
D機関のスパイ達、というか結城中佐の抜かりなさが
度肝を抜くレベルです……。
「失楽園」もすごくスマートなどんでん返し的話だし、
「追跡」も信じてたものがひっくり返される。
全編通して全く展開が読めないのが面白いんだな…
はーーー本当大好きです。
ジョーカー・ゲーム。 -
今回もどのD機関もかっこいい。特に「暗号名ケルベロス」が読み応えたっぷり。
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安定の面白さ。
D機関のスパイたちが凄すぎて、もはやなにがあっても
そうだよね~そんくらいできるよね君たちはって驚かなくなった笑
魔王の過去を調べる、追跡が最高に面白かった。
やっぱしわたしたちはみんな、魔王の掌の上なのさ!
2018.08.12 -
大戦中、日本帝国軍内に秘密裏に存在したスパイ養成機関通称D機関。
そこに所属するスパイ達を軸として、あるいは狂言回しに据えて語られる連作集第三弾。
今巻のテーマは「選択」と「岐路」と「決断」。
時間が進み第二次世界大戦の狼煙火が大きくなったせいか、今巻登場するスパイ達には、既刊とは一味違う印象を抱いた。
顕著なのは「追跡」と「暗号名ケルベロス」。
基本的に自らの頭脳のみを恃みとする自負心の塊であるD機関スパイの価値観はブレず、「誤算」のようにその先見の明で祖国の敗戦を見通しながらも任務に従事し続けるのだが、「追跡」と「ケルベロス」のラストではスパイの余生が示される。
あるものは己の負けと衰えを自覚し、あるものは己が引き受けた責任を果たす為、スパイとしての人生に見切りをつけるのだが、彼等が新しい人生に示す決意表明が潔く爽やか。
特に「ケルベロス」は結末だけ見ればバッドエンドなのに登場人物が覚悟を貫き通す読後感が清々しく、ハッピーエンドに見えてくるのが不思議。
「標的の目に世界がどう見えているのか、常に意識するのは当然」
これは作中の内海の言葉だが、ならば表題作のラストにおける奇妙な爽快感は、読者が内海と視点を共有しあたかも彼の目を通しカモメ舞う船上の青空を見ているからか。
そして事実、これから坂道を転がり落ちるかのように戦争の泥沼に沈んでいく日本軍の歴史を知る者にとっては、リタイアしたものこそ正しかったのではないか、幸せな余生を選び取ったのではないかという感慨も滲む。
内海が言う責任とはノブレス・オブリージュの亜種、貴きものが負いし義務改め優れたものが負いし義務。謎を解く行為に取り憑かれた人間の業深さ、義務を蔑ろにし戦果のみを求めた人間の滑稽さが招いた皮肉な結末が心に残った。
また、概ね高評価の中で低評価をつけている人の理由も理解はできる。
「人である前にスパイであれ」なD機関に非人間的完璧さを求めて読んだら、今巻では「スパイである前に人である」また「スパイから人に戻った」諜報員の在り方や人間味がフィーチャされ、物足りなさを感じたという所か。
しかし徹底した個人能力主義であるD機関において、結城中佐は各自の選択を否定せず、個々の判断を尊重するに違いない。それが原因で有能な人材を失う事になっても、だ。
スパイの賞味期限は自らの能力の限界を悟った時、守るべきものを託されてその責任を引き継いだ時。
最新刊では戦況とスパイの変化を感じ取ったが、結城中佐の一切ブレない圧倒的な存在感は健在。
「追跡」では英国のスパイが結城中佐の生い立ちに迫るのだが、その素顔は暴けなくても、老人の口から語られる結城中佐の輪郭がより濃くなるような終盤のエピソードが心憎い。 -
あまりに並外れた能力と自負があると、ここまで功名心に惑わされず黒子に徹することができるのか。
強烈な自負のもとでは、自分の期待に応えることこそが快感で、(愚かな)他人の称賛など侮蔑に入るのだろう。公爵が結城中佐なのか、二人は別人なのか。別人ならば、現役時代肩を並べていた頃の話が読みたい。