寄居虫女 (単行本)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041018347

感想・レビュー・書評

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  • 作風は、秋吉里香子か真梨幸子のよう。イヤミスだが最後の展開はどうなんだろう。山口葉月がそのまま存在した方が良かったのでは?
    大多数の人間は、他人の決めたルールが好き。誰かが作って敷いてくれたレールに沿って動くことを楽だと思い責任を取らなくても良い立場、目立たないスタンス、面倒が少ないのを好む。誰かに委ねる感覚は気楽を超えて快楽たり得る。隷属する喜び、ストックホルム症候群、拘禁反応、マインドコントロール。

  • いつのまにか家の中に入り込み、入り込まれた家は必ず崩壊する。…そんな恐ろしい女「寄居虫女」に破壊された家族の物語。
    今現在女が入り込んでいる家庭と、すでに崩壊された家庭を訪ねて歩く被害者遺族の充彦の視点が交互に描かれ、寄居虫女の恐ろしさを少しずつ見せていく構成。
    ところが終盤、この作品には意外なツイストがあります。これを無理やりと取るか、面白いと取るか…私はなんとも腑に落ちなかったので、★一つ減点でした。
    なんだかんだ一気読みしてしまいました。

  • 歌舞伎役者のように顔を白塗りに化粧し、夏でも腕全体が隠れるような長い手袋をして肌を隠す異様な姿の女-葉月に家を乗っ取られ、家庭崩壊に追い込まれていく人々。
    他人の家にうまい事入りこみ、その住人の心の隙に取り入る。
    そして、彼らの心を支配し、蝕み、財産を食い物にして生きる。
    そんな恐ろしい女、葉月がターゲットに選んだのは夫婦と三人姉妹の家庭。
    夫婦仲は冷え、姉と妹にはそれぞれ可愛がってくれる肉親がいるもののまん中の美海だけは何故か母親に疎まれ、家族の中で一人浮いている。
    そんな家族の元に一人の小さな男の子がやって来る。
    その男の子に母親は溺愛していたが亡くなった末息子を重ねて見るようになり、身元の分からないその子を保護する事になる。
    やがて、その男の子の母親と称する女-葉月が家にやって来て同居、さらに葉月の弟だという男も家で生活するようになる。
    最初は違和感を感じていた母親、姉妹の内の二人は彼らに取りこまれ、洗脳されていく。
    父親は葉月にうまい事言いくるめられて家に寄りつかなくなる。
    やがて、たった一人まともだった美海にも彼らの魔の手は及ぶ。
    葉月は飴と鞭を使い分け、一家を破滅に追いやる。
    今までもそうやっていくつもの家庭を崩壊に導いてきた葉月だったが、被害者の一人である男性が彼女と彼女に連れ去られた自分の弟を追っていた。

    読んでいる時はそれなりに楽しんで読める本でしたが、読み終えてみるとストーリー展開やラストがあまりにご都合主義だし、ちょっと薄いな・・・と感じました。
    主人公の美海だけがまともな感覚でいる中、葉月を追う男性がいるので早くその二人が結託しないかな?と思うもそうならないし、美海がまだ幼児の男児に風呂場を覗かれる件もそのままだし、美海に好意を抱く男子生徒も存在が生かされてないし・・・。
    まあ、その辺置いといてただの読み物、と割り切ればそれなりに楽しめる本だと思います。

    あと個人的に読んでいて思ったのは、こういう事件って昔もあったのかな?あったとしたら今とどのくらいの件数の差があるのかな?ということ。
    葉月はいくつかの条件が重なった家族をターゲットに選びますが、その一つとして家長である夫の存在が薄いというのがあり、昔のような大家族、ダンナが大黒柱としてデン!といるような家族は確かに入る余地ないだろうと思う。
    また、近所の人とのつきあいが濃かったらこういう事件は起こりにくいような気がする。
    家族というひとつの団体が孤立していて、その中の個人個人も孤立している。
    もっと家族が信頼で結ばれていたら、葉月のような女を退けられたんじゃないか。
    あと友達だって、表面上だけじゃないつきあいをしていたら救いの手をさしのべてくれたんじゃないか。
    そんな事を読んでて感じました。

  • 初読みの作家さん。人ってこんな風に洗脳されていくんだって怖くなる話だった。それ以前に皆川家はバラバラだったけど。洗脳されていくのが怖かったけどラストは想像と違っていた。呆気なかったし結局何だったんだろうってなってしまった。

  • 雫井侑介の『火の粉』がおもしろかったので人間が怖い系の話が読みたくて検索したらこの本が話題だったので読んでみたら見事に面白かった。やっぱりホラーものより人間の怖さが世の中で一番怖い。なにしろ普通に生活していて何も悪い事はしていなくてもヤドカリの家のように寄生されたら狂わせられてしまう。大好きだった家族、兄弟で憎み合うようになったり洗脳されてしまう。そういう危うさがきっと誰にでもあると思う。
    今回は山口葉月の正体がまさかまさかの展開でそこもまた面白かった。
    初めてこの著者の作品を読んだけど他の作品はどんなのがあるのか気になる。

  • 読み始めは、一気に行けそうな雰囲気だったけど、途中で気が滅入ってなかなか進めず・・・ラストは盛り返して一気にいけたけど、終わり方がちょっとキレイ過ぎかな・・・一種のストックホルム症候群?w

  •  皆川家に突然現れた男の子。げっそりと痩せ、裸足でどう見ても普通に育てられていないその子を見た留美子は、ちょうど同じくらいの年頃の息子を亡くしていたこともあり、家に招き入れて面倒を見るようになる。しばらく過ごさせたら返す予定だったのだが、思いがけずその母親・山口葉月がやってきて、夫からDVに会ってもう家には帰れないという。同情した留美子は2人と一緒に生活することを決意。しかし2人が入ったことにより、皆川家は崩壊の一途をたどることになる。

     少し前に読んだ「ケモノの城」でも描かれていたような、学習性無気力やマインドコントロールなどで、次第に家族を思いのままにあやつっていく恐ろしい女が描かれている。怖いもの見たさでページをめくる手がとまらなかったが、最後のオチはちょっと無理があったのではないだろうか。そんなオチにしなくても、十分読めた作品だったと思うんだけど。

  • うーん。最近この小説のような洗脳されているとしか思えない事件が多いだけに、興味を持って読んだ。同居している人間が徐々に洗脳されてゆく過程が描かれているが、実際の事件を背景に書かれているのだとすると、まだまだ取材不足の気がするし、洗脳と言うおぞましい世界に関して小説にするだけの勉強していない気がする。だからこの小説には洗脳される側、洗脳する側の心理描写が不足しており、読者に恐怖が伝わらない。

  • あれ、なんかこんな事件あったなぁって思いながら読んでると参考文献にそのようなものが。
    たしか怖い本で探してこれを見つけたのですが、はい、おもしろかったです!
    グロくない心理的な怖さ。
    ボリュームはありますが、読むのは苦にならない感じ。

  • 尼崎や北九州の事件を題材にしたような話。
    同情を誘ってある家庭に入り込み、信頼を得て、やがてその家族を精神的、暴力的に支配していくヤドカリオンナ。
    丁寧に書かれている分、読むのが辛かった。
    見も知らぬ他人を家に入れてはいけないと、つくづく思う。
    (図書館)

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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