光秀の定理 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.94
  • (92)
  • (199)
  • (82)
  • (13)
  • (2)
本棚登録 : 1306
感想 : 151
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041028100

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 恥ずかしながら自分にとって初めての歴史小説。忠臣蔵の物語が多いとは聞いていたが、これも御多分に洩れずその一つである。光秀と聞いても本能寺の変の一場面しか知らないリテラシーだったため、どこまでが史実なのかはわからないが、正しさは問題ではないのだろう。物語で描かれる光秀は歴史の教科書よりも実際に生き、思考し、逞しかった。

    事前に聞いていた通り、この物語はモンティ・ホール問題を理解した僧、愚息と剣客新九郎という二人の光秀の忠臣蔵が中心に描かれている。関係ないが、数学の確立の問題はどうしてこう頭が痛くなるような問題ばかりなのだろう。物語を通して登場するモンティ・ホール問題もそんな頭痛の元の一つで、全く厄介な問題である。数学者がいなくなれば頭痛薬分のお金が浮くのではないだろうか。知らんけど。

    かくいう光秀のサクセスストーリーは見ていてとても楽しかった。明智家を再興するという軸に沿って行動する男らしさは自分も見習わなければならないと感じた。しかし光秀がこんなに生き生きした人物だとは思わなかった。てっきり織田信長絶対殺すマンとして生を受け、本能寺で見事念願果たして死んだとばかり思っていた。史実がどうであれ、教科書の二文だけでは人の人生など語れないということが身に染みてわかった。よく教科書に残るほどの功績を残したいという人がいるが、ろくでもないまとめられ方をすればいいと思う。これは成功者への嫉妬である。勝てば官軍、負ければ賊軍。いつの日か時代が変わり、光秀も、ついでに私も、官軍の仲間になる日を夢見ている。

  • 明智光秀がメインではない。
    愚息という世捨て人の坊主と、剣術の達人である新九郎、このコンビがメインです。(架空の人物かな?)
    私は戦国の歴史はとんと疎いので史実をおって正確な感想は言えないが面白い一冊でした。
    長良川の争いで明智家が離散したあとから朝倉家、のちに信長に仕え、かの有名な本能寺の変まで。
    歴史小説は本の中での言動にどこまで感情移入してよいかわからないけれど光秀の苦労心労はこの時代では特に辛かったであろう。
    それはともかく、とにかく愚息の考え方、身分の上下に関係なく我の通すのがかっこよかった。
    本当にそこまで曲げられない信念があってもこの時代大変そうに思えるけれども。






  • 戦国時代の雄となる「明智光秀」が世に出るまでの話が中心。新九郎と愚息、2人の朋輩と共に定理とからめて時々頭を使いながら進行するので楽しく読めた。

    歴史の教科書では「信長の側近でありながら、天下統一の土壇場で裏切り、三日天下に終わった裏切り者」のようにまとめられていたが、「そんなはずがあるわけ無いだろう」と学生の頃から違和感を感じていた。

    最後は敗戦の将となり賊軍扱い。仕方の無い事だが、後の世で歴史は都合のいいように書き換えられ。謎の多い武将の一人となってしまった。しかし、謎が多いからこそ、明智光秀という人は興味深い。

    来年の大河で取り上げられて、再び脚光をあびるかも知れないが、この小説のように今までの定説には一石投じて欲しい。

  • 正直あんまり食指が動かない感じで読み始めたんだけど、数学的な話題と歴史、そして何よりサブキャラ二人が魅力的過ぎて光秀もさらに言えば信長も魅力3割増し!

  • 地に足の着いた独自の価値観を持つ僧と侍。彼らを通して光秀を描き、彼の性格、背負っていたもの、そして、なぜ本能寺の変を起こすに至ったかを解き明かした作品。
    登場人物が少ないが、それだけにそれぞれの人物の輪郭がしっかりとしていて、ストーリーに引き込まれていきます。
    真面目で優秀で、部下からも好かれる人だったんだろうな、光秀という人は。

  • 時代を変えた謀反人ともされた明智光秀は一体どんな人物だったのか。自分の信念から独自の世界観を持った坊主と技を極める兵法者から見た光秀とその時代を描き出した小説はなかなか面白いストーリーだった。
    愚息という名前もとぼけていて妙だが、そんな奴らが時代を冷静に見ていたなってありそうな、なさそうな。人を食った描き方ならやはり垣根涼介らしい。

  • 愚息が特に魅力的。知性があり、物事の本質を見極めることができる。権力者におもねることが一切ないところは、気持ちが洗われる。。
    愚息と新九郎の、息がピッタリ合った関係性が心底、うらやましい。
    そんな二人とかけがえのない友情を築いたという点で、光秀の人間くささが際立つ。それゆえ、有能だけれど、愚直で不器用なところが魅力的に思える。
    愚息が熱弁した釈迦の論理、かりそめの一場面にいたずらに惑わされず、その背後にある連続する必然を見よ。これは、心にとめておきたい。
    根本的に、信長と光秀は見ている世界、目指す世界が違った。歴史の一場面だけを切り取ると、人間の行いが引き起こしたことであり、必然ではない。でも、その背後にある連続する必然、それこそは人として我々がどんな道を歩んで行くのかにつながる。歴史は苦手と感じていたけれど、最近、歴史小説を読むのが楽しい。

  • メチャ面白かった。大河ドラマとイメージが一緒でよくわかった。信長の原理を読んだ後、是非読みたいと思ってた。その期待が期待通りでした。
    我慢強さ、先見性、正義感、プライド、即決断、なんか人間臭くて、あるあるかな(笑)
    日本人らしい^ ^

  • これは面白い。

    歴史苦手なんだけど、愚息と新九郎のキャラが立っているので退屈しない。
    そして光秀との絡みだけを追っていけばいいので凄く読みやすかった。

    何より四つの椀が非常に効果的というか、私はヒントが出るまでわからなかったので、それに引っばられて読まされた感じかな。

    なんというか、ストーリーもキャラも椀の謎というアクセントもよく考え抜かれてて読後の充実感がかなりある小説です。

    歴史好きで男の友情とか好きな人にオススメです。

  • こんなところでフロムが出てくるとは、ビックリした。一石を投じたすばらしい作品だ

著者プロフィール

1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。04年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞の史上初となる3冠受賞。その後も05年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞、16年『室町無頼』で「本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞。その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理』などがある。

「2020年 『信長の原理 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

垣根涼介の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ピエール ルメー...
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×