不在

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 630
感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041049105

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で借りた本。
    幼いころに別れた父親が亡くなった。遺産として屋敷をもらった娘明日香は、なぜかほかの親族は屋敷に入れないようにとの遺言を守り、1人で(彼氏と)屋敷の片づけを始めていく。

  • 25年、疎遠だった父が死んだ。
    医師であった父が最期まで守っていた洋館、
    祖父と共に守った錦野医院を遺された
    漫画家の明日香は、年下の劇団員の恋人
    冬馬と共に家財道具の処分を始めたのだが…

    もう絶対こうなるだろうなぁ…という
    結末に向かってゆるゆると進むものの
    目が離せなくて一気に読んでしまいました。
    不在。この世に存在しない、父からの、
    祖父母からの、家からの束縛。
    あの家で、認められたかった。
    それだけの願い。

    またはあの家に居たにも関わらず
    「いない」と評価された
    父と娘が「不在」だったのか…
    色々考えさせられる物語です。

    主人公の明日香が漫画家なので
    心情が経験がトラウマが思いが
    作品となって反映され昇華されるのだなぁ…
    いつかその哀しさや悔しさや苦しさが
    作品の肥やしとなり明日香が本当に
    幸せになる日が来ればいいなぁ…と思いました。

    いつもの綾瀬さんの物語は文の美しさ、
    描写の美しさに引き込まれるのですが
    今作は主人公の感情に引っ張られました。

  • 2018.10.11.以前一冊読んで苦手と思った彩瀬まるさんの作品。前に抱いた、なんで独りよがりな人なんだろうと思ったが、姉に勧められ、そうじゃなかったら読まなかったろうなと思いながらすすめられて読んでよかったと思った。
    いい年になって親からの愛情を受けられなかったから云々というのはおかしいと兄からたしなめられる主人公、本当にそう思った。最近流行りの毒親小説に辟易している私にとって大変新鮮な切り口だった。

  • 人間は自分がされてきたことしかできない。

  • 屈折した家族の物語

  • 漫画であれ、小説であれ、
    自ら何かを作り出すことは
    生半可なことじゃない。

    父と娘。
    私も自分の人生と重ねて読んだ。

    この一文が好き
    「私と父の間には、ある一時期、とても美しい花が咲いていた。」
    きれいごとじゃなく、時間がかかるかもしれないけど
    共感できた。

  • ‪著者の特徴である生々しい表現やファンタジー要素は薄く、むしろ漫画家が主人公という自身を投影したかのような現実的な設定。そこで描かれるのは家族という呪い。家族の在り方が変わりつつある現代日本において“正しい家族”なんて概念は成立するのか?坂元裕二や是枝裕和に通じるテーマを感じた。‬

  • 書き下ろし

    漫画家の明日香は、父母の離婚後二十数年会っていなかった父親が亡くなって、病院だった家屋敷を遺産として受け取ることになり、屋敷内の片づけをするうちに自分と父親との関係、祖父母のもとでの家族関係、母や兄との関係、恋人との関係を見つめ直すことになる。

    祖父や父が兄を選んで自分を選ばなかったことに鬱屈を感じ続けてきたが、凡庸な父もそうだったのではないかと思い至る。また面倒を見ていた年下の恋人が自分のもとを出ていこうとしたときに暴力をふるったことで父親の血を意識する。父が自分の作品を読んでいたこともわかり、最初は拒絶感を持っていた屋敷が慕わしいものへと変わっていく。

    自分が書いてきた作品も、「私みたいな大人や子供を一人にしないために漫画を描いていたんだ。」と気づき、「愛を手放すことについて、ただ悲しい以外の感情にたどり着きたい。」とああたな境地を目指していく。
    このあたりは作者と重なるのかな。

  • 不在の存在感。そんな不思議な感じのする本でした。
    三つ子の魂百までが当てはまるのかな。
    主人公の行動にイラついてしまうのは、自分が主人公に共感しているから?似た性格だから?
    だから読むのが辛かった。
    自分に当てはめながら読んでしまうところが、この作品の良いところでもあると思う。

  • なんとも読後の感想が書きづらい作品だ。
    失礼ながら初めて目にした作家さんで、タイトルだけで図書館で借りたのだが、このタイトルの意味するところがとても解釈が難しい。
    そもそも7歳の記憶って個人差があってもかなり曖昧だろう。それから会ってもいない祖父や父、足を踏み入れてもいない屋敷にどのくらい思い入れが残っているのだろうか?
    その不在と向き合って、それが仕事や恋人にどのくらいの影響を与えるものだろうか?屋敷整理もただ次々淡々と処分している印象だし、きみこ、かれん母娘の存在感も薄いし…
    父親が残した「他の家族は立ち入らないこと」の意味もよくわからない。似ているから?
    そして、主人公の生い立ちがあまり関係しているとも思えない自分勝手っぷりが好きになれない。

    今自分も遺品整理と実家の片づけをしているので、屋敷に「さようなら」と告げるシーンは鼻につーんときた。
    そして不在に向き合った結果に生まれそうな作品の相談相手が緑原だったこと、それを読めて良かった。
    読む人によって捉え方が大きく違ってくる作品だと思う。
    文章、表現は好きなのだが、ストーリーには入り込めませんでした。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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