不在

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041049105

感想・レビュー・書評

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  • 『愛』がテーマの作品。
    『愛』のあり方に囚われ、固執していく明日香。
    自分の求めていた形が得られないと、ヒステリックに相手に噛みつく。
    感情のコントロールが出来ず、いつまでも過去にこだわり続ける彼女の姿に、読んでいてゲンナリ。
    父母・祖父・恋人、どの人物にも同情も共感も出来ず、登場人物の誰にも魅力を感じない。

    結局、明日香は愛に囚われない生き方を選んだって結末なんだろうけど。
    別に自らその道を選んだわけではないし、そこまでの道のりが冗長だった。
    引き付けられる内容でもなく、ただ長すぎる繰り返しに、何度となく読むのを断念しようと思ったほどである。

    「愛」がテーマの作品は、私には合わないのかもしれない。

  • 家族に対しても恋人に対しても、その接し方に最後まで何ひとつ共感も共鳴もできない女性の物語。漫画家として自立していることは彼女の誇りであるに違いないけれど、自分のことを気遣ってくれる人たちを対等に気遣うことがとうとうできずじまいだ。漫画の成り行きは自分のさじ加減ひとつでも、人生はそうもいかない。

  • 「眠れない夜は・・・」以来2作目のまる作品。
    結論から言って、この人の長編は正直きついかも。主人公の明日香は被害者意識が強くて、子供じみていて、かなり面倒くさい。自分以外の人間の心の痛みを顧みようとせず、ただ、「私はこんなに愛してるのに・・・」と自分勝手なこと極まりない。
    そんな彼女が遺品整理を契機に過去と向き合い、父の別の顔を知ることで過去のわだかまりと決別し、一人で前に進んでいくという物語なのだけど、そこまでに至るまでの彼女の思考や行動を延々と読まされるのはかなり重い。
    文章も、これが作者の持ち味なのかもしれないが、技巧に走った表現が散見され、慣れていないからか読みづらい。
    途中でピアノの部屋に出てくる男の子の正体もよくわからず、消化不良。
    登場人物も結局、だあれも好きになれず読了。爽やかな気持ちにもなれず残念でした。

  • うーん。難しいなぁ。
    なんだか読むのがつらいというか、重くてかなかなか進まなかった。
    主人公の明日香がこわくて、縛られてる感情がぞっとした

  • 医師だった父が亡くなり、かつて暮らしていた屋敷を相続することになった漫画家の斑木アスカ。
    仕事は順調で、劇団に所属し俳優を目指す年下の恋人ともうまくいっている。
    父と母が離婚してから25年ぶりに訪れるが、診療所も兼ねていたその屋敷は、家主だけが不在で何も変わらずに残っていた。
    家財道具の整理をすすめていくが、そこからは次々と過去が引きずり出され、アスカたちが出たあと父と住んでいたという愛人もあらわれ、穏やかだったはずの日々は次第に崩れ始めていく。

    どういう展開になるのだろう?と読み進めていたが、終盤でとつぜん物語の心臓がみえた。
    「愛」とはこうあるべきだ、と信じて疑わず、それを相手に押し付けることはとても暴力的で獰猛な行為だ。アスカの恋人に対する「愛してくれなかった!」という叫びが寒々しい。恋人である冬馬の指摘どおり、彼女が欲しがっていたものは忠誠だった。父親と同じ、ひとりよがりな愛。愛されない、愛されたい、そういう呪縛に囚われていると愛し方も間違えてしまうのだろうか。
    愛ではない何かを、愛だと思いたいがために、人は愛という言葉を口にする。
    ふつうのいえ、に生まれなかったことは自分ではどうしようもない残酷な境遇だったと思う。
    だがそこからきっと得られることもあるはず。アスカはそういう人に併走できるような物語を、作品をきっとこれからもつくりだせる。何も、無理に愛することはないのだ。

    「不在」って良いタイトル。

  • 描写の一つ一つがとても丁寧に描かれていて、割と重苦しいのに美しさと丁寧さと怖さが相待ってとても緊密していた物語だった。
    もうそこにはいないのに、過去の記憶さえも曖昧なのに、不在者の与える影響が、恐ろしかった。アスカの心が静か壊れて行く様が怖かった

  • 感想が難しい。
    大きな事件も展開もないけれど、丁寧な描写とことばが淡々とした文章の中に凛としていて、伝わってくるものがありました。

  • 難しい作品でした。言葉自体はそんなに難しくないし、ストーリーとしても読みにくさは感じられない。でも、誰にとっての、何の、どういう「不在」なのかがとても難しかった。ただ、冬馬が出て行くことを選んだ理由は、よく分かりました。何か一つに辿りつくために、何を捨てるのか、何を失くすのか、その過程さえも自分の意のままにはならない。ただ、血縁というのは苦しいもので、似たくない所が似てしまうのはとても良く分かる。少し生ぬるい血の臭いがする彩瀬さんの作品とは違った読み応えがありました。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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