獄門島 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304037

感想・レビュー・書評

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  • 初読み横溝正史さん。
    舞台は岡山県笠岡にある島。
    イマイチ金田一耕助を分かってないのかもしれないが、事件を未然に防ぐ人ではないのだね?
    全て解決したあとまだあったオチがなんとも言えず最後まで楽しませる工夫。
    しかしこの時代50前後の女性は老婆なのか。

  • かつて流刑の地とされてきた獄門島へ渡った金田一耕助。それは戦友からの遺言を果たすためだった。「三人の妹たちが殺される」という言葉通り、巻き起こる不可解な連続殺人事件。その悪夢を解き明かすことはできるのか。

    『犬神家の一族』『八つ墓村』に続いて、ぼくにとって三作目の横溝正史作品。犬神家での相続問題、八つ墓村での閉鎖環境における因習や人間心理、それを両方味わえるのが獄門島かなと。ミステリという縦糸に、人間ドラマという横糸を呪いのように入念に編み上げていくところに唸らされる。

    トリック自体はちょっと無理があるのでは?と感じなくはないけど、その犯罪を行うに至った過程や心理が克明に綴られていて、その読み応えがすごい。推理で畳みかけるように明らかになる謎。その終わりで語られた皮肉な現実には思わず絶句してしまった。ラストシーンも余韻が残るね。読み終わった時、静かに手を合わせたくなる。

    風景も人の描き方もとにかく丁寧で安心感がある。言葉にはさすがに若干の古さはあるものの、物語は今読んでも新鮮で重厚。これが70年も前に発表されていたとは、すさまじい完成度と言わざるを得ない。深さとエンタメ、ミステリと人間ドラマ、精密な描写とドライな文章、どのバランスも絶妙だなと感じた。

  • 文句なしに面白い。閉ざされた島、凝り固まった人間関係、座敷牢に幽閉されるキチガイ、因縁や祟り…横溝正史作品のこの禍々しさ最高。そんな中で金田一耕助は朴訥としていて和むから大好き。それにしても、ちょっと頭がアレだったとはいえ、特に悪いこともしていないのに殺されてしまった被害者たちには同情を禁じ得ない。終戦直後の時代、色々な偶然が重なって起こってしまった、まさに悲劇。名作だなぁ。

  • 私の中で不定期で、無性に横溝作品が読みたくなる時がある。

    今回もその不定期期間がやってきたらしく、まだ読んでいなかった獄門島を読んだ。

    金田一さんのシリーズって本当に、地方の閉塞感満載の島や村、事件が起こる名家の因縁、伝説等がよく似合う。

    今回もそのご多分に漏れずで物語が展開していくのだが、犬神家や八つ墓村のようにおどろおどろしい感じではなくて、
    結末がなんとも寂しく、そして切ない。
    時代のせいで皆の思考が少しずつズレた結果の、悲劇。

    面白かったのでラスト1/3は一気に読破。
    まだ読んでいない人は、是非!

  • あー、
    金田一さんが石鹸で髪の毛洗ってもらってるー(読むたびに思ふ)
    あれは何なので良いのだが、お小夜さんの方、「へぼい伝統」ですらなく、徹頭徹尾蔑視されてゐる。
     そして我らが金田一さんは、多分全員が首尾よくアレするまで、手を出せない。
     しかも今回あれぢゃん。

  •  もはや病みつきで、取り憑かれたように引き続き読んだ横溝正史5冊目。
     1947(昭和22)年の作品で、金田一耕助デビュー作である『本陣殺人事件』の翌年。『本陣』は金田一が20代の頃で、戦前の話であったのが、本作では30代になっており、彼が戦争で徴兵されて戦地に赴いていたという意外な事実が記されている。物語的にも復員兵が故郷に帰るとか帰らないとかいうことが書かれている。
     本作には、横溝正史の怪奇趣味はさほど現れていない。かなり純粋な本格推理小説だ。
     先に読んだ『八つ墓村』(1949年)が事件の渦中に巻き込まれた第三者の独白体による冒険小説になっていて、金田一探偵はたまに顔を出す程度の遠景の人物であったのに対し、本作はほとんどが金田一耕助の視点で書かれている。だから推理の経過もある程度読者に晒されながら進むのだが、やはり結末部の直前に「あっそうか」と真相を掴む場面では、その推理の内容は書かれず、後回しにされる。
     この「後回し」「事実記述の未来への延期」が、本格推理小説での決定的なエレメントなのであろう。そこに至るまでは、探偵自身が「勘違い」して間違った方向に推論を勧めたり、あるいは探偵の代わりのワトソン的な独白者が甘い推理で迷走する。この「延期されていること」という不安感はたぶん根源的な心理であって、得体の知れない怪異に襲われ、あやしい存在?の正体の解明が先送りされるホラー小説と重なる部分もあるように思う。もっとも、ホラーの場合だと「未来に延期された真相」の「未来」が永遠にやってこないままに終わる場合も多い。
     事実、真犯人、霊現象の由来など、この「現在不在であるもの」へのノエシス、求心力が、小説を推進する原動力となる。またこの求心力は、フロイトの症例研究系の論文にも見られたことを思い出す。
     本格推理小説では必ず用意されている結末での真相解明は、「不在」への読者の欲望を一気に満たすエクスタシーの瞬間であり、私の印象では、頭がほわっと白くなる感じである。
    「なんだそうだったのか!」という快哉で終わる推理小説に対し、ホラー小説ではたとえば「なんだやっぱりダメか!」などと終わる場合など、何種類かタイプが分かれそうだ。「白くなる感じ」というエクスタシーを組織的にうまく構成してやることが、推理小説やホラー小説、あるいはそれ系の映画などの物語プロセスの定型であるように思う。
     横溝正史はどうやらディクスン・カーあたりに熱中してきた人のようで、作家となる前身としてミステリ系の雑誌の編集などもやっており、とにかく古今の推理小説をたっぷりと浴びて自家薬籠中に蓄えているようだ。たとえば時期の重なる江戸川乱歩についてはどう思っていたのだろうか? そうした背景もちょっと気になる。

  • ショックが隠せない...

    「気ちがいじゎが仕方ない」という言葉の意味はまだマシだったが、釣鐘のトリックなどはどれも正直言って少しショボい。

    坂の途中で和尚が一人になっていた時間があったり村長が見回りの際に「小便に行く」と言って一人になった時間があった、などの情報も完全な後出し。

    それに結局"見立ての必要性"、"見立てた理由"に関してはほとんど説明されていない。
    見立てが好きだからなんていう理由で納得できるわけないし...

    雰囲気自体は悪くはないんだが、どう考えても東西ミステリーベスト2回連続1位に輝いた作品とは思えない。
    期待がデカすぎた。

  • 最高に美しくて無意味な死

  • 夏の文庫フェアで手に取った。古風な美しい日本語で、読んでいて心地よかった。ミステリーとして王道の手法を用いているなと思った。種明かしはちょっと強引で、こじつけ気味の所もあって、腑に落ちきらなかった。でも淡々としている犯人に代わって耕助の痛ましい表情やそぶりが彼の境遇の悲惨さをよく表していてすごいと思った。

  • [艶なる故殺]「三人の妹たちが殺される」と復員船の中で死に際に男が放った言葉を胸に、名探偵の金田一耕助は瀬戸内海に浮かぶ獄門島へ降り立った。外の者しか気づかない気狂いの空気がその島には立ちこめていたのであるが、金田一が到着するやいなや、島を取り仕切る網元の三姉妹たちが次々と猟奇的な方法で殺害されていく......。数ある金田一シリーズの中でも、その完成度の高さから出色と言われるミステリーの金字塔。著者はもちろん、横溝正史。


    謎解きと同時に、その謎の解決があわせて犯人の人間性や時代の空気感までをも浮かび上がらせていくところが妙。戦後間もない頃を舞台としているのですが、まさにその設定でなければ成り立たないストーリーに陶然としてしまいました(そしてそういうストーリーはなぜか一様にある種の特異性が絡まって面白い)。横溝正史の金田一シリーズは本書が初めてだったのですが、よく知られる『八つ墓村』などから次第に手を伸ばしていこうと思います。


    また、会話文の巧みさも本書の素晴らしさを際立たせる一要因になっているのではないでしょうか。立て板に水のごとく読む者を次に誘うだけでなく、感情の波の満ち引きまでをも自由自在にコントロールしてしまうかのようなやり取りの数々に魅了されること間違いなしです。特に、ところどころでキーパーソンとして出てくる床屋の清公と金田一の会話なんてまさに「声に出して読みたい日本語」です。

    〜気ちがいじゃが仕方がない。〜

    比較的最近にDVD作品も発売されてるんですね☆5つ

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

横溝正史の作品

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