獄門島 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304037

感想・レビュー・書評

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  • 名言だけ覚えていて犯人を忘れてしまっていたことに気付いたので再読しました。

    因習の残る村社会での連続殺人という「出てくる村人全員あやしい」事件に金田一が挑むわけですが、この手の舞台設定ではやはり読者は”分家筋”などの言葉が出てきた途端に「お家の相続に関わる殺人事件なのだろうな」とすぐに察することができるわけです。しかしそれに気づいたことで作品の魅力は全く損なわれず読む中で飽きもこない。なぜなのかというと、その相続争いの行方をぼやかしつつ犯人当ての楽しみを持続させる存在として、元兵士の鵜飼やビルマから復員中の一、復員兵上がりの海賊など戦争を裏テーマにすることで可能になったあやしいヤツらがこれでもかと投げられているためです。普通、ムラで生まれた者たちが皆ムラの外に出ていくなんて状況は基本発生し得ないわけで、終戦後すぐという時代設定がないと、こういう形での殺人劇にはならないし、ここまで悲劇として完成されたラストにはならなかったのでは、と思うのです。だからトリック以前の問題で、この舞台を作った時点で横溝正史の天才ぶりが際立っているなと、そう思いました。

    ところで、金田一が殺人を未然に防止するような行動を取れなかったときに、語り手がすぐに「この時ああしてれば、悲劇は防げたのに」的な地の文を必ず入れるので、そこがちょっと可笑しかったです。「この人は助かるのかな…」という希望を一瞬たりとも抱かせない鬼畜ぶり。

  • 誰が犯人なのか最後まで分からなかったので、面白く読めた。最後は報われない感じだけど、上手くまとまった気がする。セリフ量が多いけど、それでも登場人物たちの切羽詰まった雰囲気や悲しさなどの感情がとても伝わる書き方でとても惹き込まれる。さすが先生。

  • エグい、だけどなんか惹かれる。それが金田一耕助シリーズ。

  • 大昔に読んだかもしれないが全て忘れているので、新鮮な気持ちで読んだけども面白くはなかった。探偵・金田一耕助シリーズの一番名作とされている作品を履修することができた以外の感慨はない。名作とはいえさすがに古いなという印象を持った。
    昔の作品ではあるが文章は読みやすいのは良かった。

    以下ネタバレ

    --
    本鬼頭家の娘3人が殺される。序盤は分鬼頭家の面々が怪しい。並行して、本鬼頭家の早苗さんが、復員した一かもしれないと勘違いして、偶然島に逃げ込んできた海賊を匿う。その海賊か、あるいは本鬼頭の気狂いの二代目あたりが犯人かと思わせて、真犯人は和尚、村長、村医者それぞれの個別犯行。先代の遺言を受けての犯行であったが、戻って本鬼頭の跡取りになるはずだった一も実は戦死しており、計画は成就しなかった。


    なぜ私が楽しめなかったのかは以下:

    読んでいて、まず殺された娘3人が終始頭悪そうなので殺されてもなんとも感じない。金田一耕助も、結局は事後に推理しているだけで事件は何も防げなかった。犯人の犯行も演劇じみていて、ストーリー内でも、俳諧好きの先代とその意志を継いだ3人の犯人の「見立て」演出のなせるわざだと説明されており、そういう趣向を金田一も「みんな気狂いだ」と論じているが、現代の私からするとリアリティがなさ過ぎて面白くない。

    戦後時の話なので、文明の利器も当然少なく、ハリボテの釣鐘ぐらいしか装置的トリックもない。その他は「何時何分に誰々をどこどこで見かけたのでアリバイがある、うむむ、、」の積み重ねで構成されるため、現代の私が読むと物足りなさを感じるのはもちろんなことだとは思う。

  • 梅の木に逆さ吊りにされた娘の死体、、、ショッキングな見立て殺人から物語は始まる。この殺し方の華麗さ、横溝先生の筆が冴える冴える。呪われた一族の血みどろな連続殺人に、金田一耕助のどこかのほほんとしたキャラがうまいぐあいにマッチして、なかなかに魅力的。

  • これは…!すっかり油断してた…!
    こんなに面白かったなんて。

    島全体や島民に漂う不気味さ。終戦直後という時代背景。底なし沼にはまっていくかのような恐怖感と重苦しさ。それらを緩和してくれる金田一耕助という愛嬌と知性と人情性。

    洗練されたバランス感覚に畏怖の念さえ覚える作品だった。

    金田一耕助ファイルを全部読まなくちゃ!

  • 横溝作品のなかでも有名な傑作ミステリ。
    孤島で起きる見立て殺人、美人姉妹や、美少年、戦争の傷跡等、戦後の日本のその世間からも離れた場所で凄惨な事件が起きる。
    読みづらいと感じることもあるかも。それでも読後は余韻に浸れる圧巻の読み応えだった。さすがミステリの古典。

  • 八つ墓村より面白かった
    本家と分家の関係性、島民の小さいコミュニティが生々しい

  • 傑作と言われるだけある、凄い読み応えのある作品でした。
    俳句による見立て殺人というのがもう斬新だし、何もかもが鮮明に思い浮かばれるおどろおどろしい表現力に圧倒されました。
    ここまで「気ちがい」が連発するのも珍しい笑
    時代だなあと感じました笑

    終わり方があまりにも悲しすぎて…読後感の強い作品です。

  • 余所者を寄せ付けない排他的な島というだけでワクワクしてしまう。それが海賊の子孫や流人の子孫で構成されているというのがまた曰く付きで、事件の背景としてぴったりだ。
    美人だが倫理観のない3人姉妹や、縄張り争いに利用される美少年、座敷牢の狂人の登場にもワクワク。もう少し活躍して欲しかったが、嘉右衛門には誰も敵わなかったということだろう……
    俳句や芝居の見立て、安倍晴明の話も面白く読んだ。
    本陣殺人事件から戦争を挟んでこの事件が起きたという時の流れがなんとも切なかった。大事な跡取りを戦争に送り出さなければならないこの時代の人々は身を切られるような思いだっただろう……戦後の混乱を生き抜くのも大変だったに違いないと想像させられた。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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