悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (1973年2月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041304044
感想・レビュー・書評
-
横溝正史でも特に有名な作品のひとつだが、個人的には陰鬱さや得体の知れない恐ろしさではトップクラスではないかと思う。人物達の関係性は時代を考慮すればありそうな話ではあるし、実際にあったことでもある。それをフィクションとして練り上げまるで実際に起きた事件のように錯覚してしまうほど現実的だが、ある意味「小説のような終幕」によってこれはやはりフィクションなのだと再認識する、これが作家の力なのかと思い知った。
作中の密室殺人やその他のトリックは捻りがあり難解という訳ではなく、あくまでこの作品の最大の魅力は人物同士の複雑な関係性や人の心の奥底にある恐ろしさや浅ましさといった負の側面の塊が要所要所で垣間見えるところではないかと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
横溝正史の面白さがわかって6冊目が本作です。最初は展開がゆっくりで、なかなか読み進めなかったが、金田一耕助が西に行くあたりから、どんどん読み進めました。生きているはずがない人が、生きているかもしれないという不気味さがじわじわと感じられてきて、新しいことがわかると、○○と○○は、本当の親子なのだろうかとか、○○の素性がはっきりせず怪しいとか、いろいろ考えながら読めました。そして、クライマックスも、想像を上回る展開でした。また、ラストで、犯人の手記が出てくるところで、島田荘司の「死者が飲む水」を思い出しました。犯人がそうしなくてはならなかった事情が丁寧に描かれています。その一方で、事件の舞台が田舎の閉鎖的な村ではなく、都会の華族社会である分、怖さはあまり感じませんでした。それでも、至る所に事件の伏線が隠されていて、読みながら考えられる面白さがあると思います。
-
#読了 キャラクターも時代背景も舞台設定もとても好みだった。夢中で読んだ。
読んでいる途中で「自殺へ追い込むほどの秘密って何?」って見当もつかずに読んでいたんだけど、途中でもしかして……と思い始めてからは、ますます重苦しい気持ちになってしまう。
自覚をもって一線を越えてしまう二人はどうかしてるし、知らずに踏み越えてしまった二人はただただ悲しい。前者の二人だったら「そういうことをしそうだね」って読者を納得させる描写はすごいなー。 -
金田一耕助シリーズ5冊目。タイトルは知っていたが、内容は全くの初見である本作、『悪魔が来りて笛を吹く』を手に取ってみた。
「美禰子よ。父を責めないでくれ。父はこれ以上の屈辱、不名誉に耐えていくことは出来ないのだ。由緒ある椿の家名も、これが暴露されると、泥沼のなかへ落ちてしまう。ああ、悪魔が来りて笛を吹く。父はとてもその日まで生きていることは出来ない。美禰子よ、父を許せ。」―――娘・美禰子へこのような遺書を遺し、命を絶った椿元子爵。しかし、美禰子の母・秌子は夫がまだ生きているのではないかと疑っており、その疑惑を裏付けるように、元子爵に似た人物が周囲で目撃される。そして不気味に流れるは、元子爵が最期に遺したフルート曲「悪魔が来りて笛を吹く」。退廃した旧華族が生み落とした"悪魔"による惨劇が幕を開ける―――。
戦後日本の混乱期を舞台に起こる惨劇、明かされるは旧華族の忌まわしき罪業。ざっくりとした事件の全体像は予想し易く、そこまで意外性のある展開ではなかったが、「悪魔が来りて笛を吹く」―――この曲に込められたメッセージは全く予想できなかった。これが明かされるラストシーンには総毛立った。読者の記憶に刻みつける至高のラスト。 -
はじめての横溝正史。犬神家の一族を読みたかったが、図書館になかったので、タイトルだけ聞いたことのある本作を読むことにした。舞台が戦後であり文体も少し古いが、今も衰えない名作だな、と思った。
伏線だろうな、というところが分かりやすく、それをきちんと回収してくれて読んでいて楽しかった。
斜陽一族というのがミステリーとの相性がいいのか面白かった。他作品も読みたい。 -
中盤に場面が明石、淡路に移ったあたりから盛り上がってきて、怒涛の展開で一気に読んでしまいました。
終盤、人間関係が複雑で混乱したけど、細かい設定も凝っていてとてもおもしろかったです!