- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041314166
作品紹介・あらすじ
美しいばかりでなく、朗らかで才能も豊か。希な女主人の定子中宮に仕えての宮中暮らしは、家にひきこもっていた清少納言の心を潤した。平成の才女の綴った随想『枕草子』を、現代語で物語る大長編小説。
感想・レビュー・書評
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清少納言の生涯を描いた傑作。
なめらかで自然な文章で、すっかり引き込まれました。
歌人として評価されていた家系で、清原元輔の娘。
本名は不明だけど、この作品では海松子(みるこ)。
父親っ子で当時の女性としてはレベルの高い教育を受けていた。
橘則光と結婚。
この作品では、他の妻が産んだ子供を育てることになっています。
(当時は複数の女性との関係は普通で、正妻は一番身分の高い女性になる)
なさぬ仲の子を育てるのは史実ではなく、作者自身の経験に引き寄せたもののよう。
ただ当時のことは正確な資料が残っていないので、絶対になかったとも言いきれないですね。
10年則光に捧げたから、この後の10年は自分のために使いたいと宣言し、則光がそれを受け入れることに。
田辺聖子さん自身は結婚前から作家だから、そんなにきっぱり分かれる人生ではなかったろうと思いますが、清少納言の場合は‥と思い巡らせたのでしょうか。
武骨で風流を解さない夫とは合わない部分があったが、宮中に上がっても意外に縁は続くことになる。
則光は何かと心にかけ、清少納言がほめられると嬉しかったと伝えに来るのだ。
離婚したのではないのかとからかう周囲に、則光は兄妹のようなものなのだと答え、それが通るように。古い表現では妹背というと夫婦になるから、微妙なところ?
宮中で中宮定子に女房として仕えることとなり、美しい盛りで教養があり朗らかな定子に魅了され、自身もお気に入りとなって楽しい生活を送ります。
定子の実母は藤原家の正妻になるにしては身分は普通な受領階級の出だが、個人的に教養が名高かったため、気さくで知的なのは育ち方だったようだと。
定子の一家を見守る描写、いわば敵方である道長の人物を冷静に認めるあたりも。
とっさに機転が利く性格の清少納言は、貴族の男性とも丁々発止とやり取りがあり、恋愛もいくらかはあったよう。
時には誤解されつつも、水を得た魚のようにいきいきと宮廷生活を泳いでいきます。
はたして、後半は。
定子の実家が没落し、道長の世になっていくので、辛そうですが‥?
「枕草子」はそんな状況の定子を慰めたい気持ちもあって書き続けられたもの。
主従のつながり、一途な思いは感動的でしょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平安にハマるきっかけを作ってくれた本。”人間って、なんて愛おしいんだろう!生きることって、なんて面白いんだろう!”というのは田辺女史の人生観でもあるらしく、文章が生き生きしている。
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清少納言がすごく現代的で、とてもなじみやすい。紫式部日記にある人物像から高慢な人、というイメージが先行したけど、清少納言のおかれた状況をみると、とても革新的な人ではあったと考えられる。
和歌のやりとりや、白楽天の詩の引用など、どうしても注釈無しでは難しいところを、さらっと地の文で清少納言に説明させるその書き方が鮮やか。 -
今まで生きてきた中で感じてきたことがあるであろう、言葉にならない感情をうまく言葉に表し、読み手であるわたしに感動を与えてくれました。
まるで目の前で起こっているかのような宮中の出来事の描写が本当に素晴らしいです。
清少納言や彼女を取り巻く周りの存在がますます大好きになります。
下巻も楽しみ。 -
清少納言は殆ど知らなかったのだけれど、この小説によって大好きな古典人になった。なんと生き生きと描かれていることか!そして主人と女房との強い信頼関係も深く知ることが出来た。
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高校生の頃の愛読書の一つでした。清少納言がすごく生き生きと魅力的に描かれていて、1000年の時の隔たりがあっても、感性・感情が共通するものがあるんだということが驚きでした。源氏物語の恋愛の面倒くささのない、さっぱりしたところが、高校生の自分にフィットしていました。
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これよく読みますね〜実になんども読む。細雪といい勝負
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一千年前のワーキングウーマン&エッセイスト・清少納言。彼女の生きていた王朝時代と現代は、感覚的にかなり近いのに驚きさえ感じます。コレを読めば、古文がもっともっと身近になること請け合い。
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古典「枕草子」を現代風な語り口に。どうやら田辺さんと清少納言は共通点が多くあるようで(よそ腹の子供を育てた事とか)田辺さんの一面も垣間見られる気がします。その感覚は、現代とちっとも違ってなくて、共感する部分が多くて驚きます。それから、藤原道隆(道長の兄)一家の栄華物語でもあります。同時に読みたい本→永井路子「この世をば」