王朝序曲 上 (角川文庫 な 6-4)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041372043

感想・レビュー・書評

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  • 上下巻の上巻。桓武時代の複雑にもつれ合い絡み合う勢力争い人間関係を、藤原冬嗣目線で永井路子さんが描いた小説。
    桓武の時代、冬嗣の北家は房前時代の力は衰え、式家がやや優勢。
    皇子白壁を皇位に戻し、その先の山部を担ぎ出す為に百川達が行った策。井上、他戸を廃し山部(桓武)が皇太子の座につく。
    皇位を巡って藤原氏がうごめくのは不比等の時代から変わらない。
    怖いものなしだった帝王桓武、長岡京も続く大水害や不幸を怨霊の祟りに苦しめられる。
    藤原氏の策によって怨霊の祟りに苦しむのは、時代が変わっても時の帝。
    息子安殿との骨肉の争い。
    その頃の冬嗣は、権力の渦の中に巻き込まれることなく、ただ漠然と周囲を見つめ、したたかに兄を見ていた。
    兄真夏、異父弟の安世(父は桓武)と冬嗣。この後どうなっていくのか、永井路子さんがどう描くのかとても楽しみ。
    王朝時代、天武系から天智系へと変わり、天皇の周囲にうごめく藤原氏の権力争いの駆け引きを永井路子さんの考察で読む小説は読みやすく面白い。
    下巻も楽しみ。

  • 下巻にまとめて。

  • 永井路子の歴史小説は読みやすい。これも、桓武天皇の時代(主人公は藤原冬嗣)というあまりなじみのない時代だけど、すっと頭に入ってくる。
    藤原氏と言ってもこの頃はまだ北家が際立っていたわけではなく、若き真夏・冬嗣兄弟も父の官位に従って微官からのスタート。この後どうなるか、下巻が楽しみ。

  • 時は奈良時代末期から平安へ。桓武、平城、嵯峨と移り行く時代を、のちに左大臣まで昇り詰めた藤原冬嗣の視点で描く。
    帝位を巡り疑心暗鬼になる王族たちとそこに群がり覇権争いを繰り広げる貴族たち。出世街道からやや逸れたところにいる冬嗣は、遷都や政変の動きを冷静に見つめるが、やがて立場の異なる役職についた親子、兄弟は、腹の内は見せずに目の奥を探り合うようになる。
    教科書のなかで知った人物たちに血が通い、それぞれの立場から必然的に歴史的事件は起きる。久しぶりに古代史を舞台にした小説を読んでその楽しさを改めて感じた。

  • 2023/6/16再読
    ずいぶん読みやすいと思っていたら4年前に読んでいた
    藤原冬嗣をもう一回しらべてみようっと(´・ω・`)
    2019/6/21歴史小説家としてはダントツの永井路子先生ですが、最近読み漁っている杉本苑子先生の小説のほうがすごみがあり、事実を巧みにちりばめて物語を組み立てる感があります
    檀林皇后すごかった!
    さて、冬嗣があっさり、だけども現実はこんな風に動くよなと納得のいく展開で物語は進みます

    真夏と冬嗣の男兄弟らしい背伸びによる関係が秀逸の作品
    読後感は良いです
    良岑安世の位置づけが憎い!

  • 愛憎、相剋、無慈悲、ついでに冷酷。でも阿弖流為物語のスピンオフ的視点で見ると憐れ。遷都で失敗と成功の両方を体現した天皇の物語は不思議な時代感を漂わせる。でもよく見ると冬嗣の成長記なんだよな。

  • 2016/03/07完讀

    這本書刻劃平安王朝的誕生過程。天智血脈,懷著雄心壯志的桓武天皇,除了遠征蝦夷之外,決定與天武關係深厚的奈良和南都佛教強大的勢力訣別,784年遷都長岡京。

    桓武天皇在即位之前,就是藤原百川策畫巫蠱事件拉下他戸皇子和母親井上,讓他成為太子。而桓武天皇為了讓兒子安殿繼位,策畫了早良親王謀反的冤獄。長岡京大水災難,征蝦夷又大敗,人人都說是早良親王等怨霊所害,兒子殿親王也和父親事事反目。794年桓武天皇後來決定再度遷都山背(やましろ),更名山城。他嚮往唐制,認識了最澄之後,認同他所宣講的天台與發自內心的懺悔和清淨,動手將自己編的歷史中再度回復早良親王的清白。最澄搭上桓武所派的遣唐使船前往天台取經。

  • 平安初期の貴族たちのドロドロ人間関係を描く。藤原薬子のことを詳しく知りたいならぜひ。昔の人はもうスケベすぎ!


     桓武天皇は最澄や空海の本を読んだ時に出てきて興味があったのだが、ここまでドロドロの時代を生きた男だったんだな。甘く見ていた。
     この頃人間の下半身の事情がひどすぎて、「人間」という獣って感じがしてよい。殿上人が笑わせる。

    _____
    p36 辛酉の年
     桓武天皇が即位した年は、中国の暦で言う辛酉の年だった。この年は革命を司る年とされていて、勢い勇んで天皇に即位したのに、桓武の時代はぼろぼろだった。

    p57 早良親王の死は…
     早良親王は桓武によって島流しにあった。その背景には、桓武の子息である安殿親王が次期天皇に付けるようにする世襲問題があった。
     藤原冬嗣の母:永継(ヨウキョウ)と桓武天皇のただならぬ関係の子:安世も私生児ながら皇位継承権を持っている。歳の離れた弟も早良親王と同じような立ち位置に立つとわかった冬嗣は、生まれながら死ぬ運命を背負った弟を可愛いと思いながら複雑な思いだった。

    p107 薬子は母のよう
     藤原薬子と安殿親王がただならぬ関係になったのを、永井路子は、安殿の性癖の異常性として描いている。
     安殿の母:藤原乙牟漏は早良親王の祟りで病没したとされている。早くに母を失った安殿は、母の愛に異常な性癖を持った。という設定である。そこで、年上の包容力のある藤原薬子に溺れてしまった。

    p133 孤悲
     万葉人は、「恋」を「孤悲」と書いた。シャレ乙。
     離れている者同士が、それに耐えられず身悶えするという、激しい意味を込めている。安殿の薬子を求める気持ちも、恋よりも孤悲である。

    p221 桓武という男
     冬嗣の兄:真夏の桓武評、冷酷な帝王・権力欲の権化・人間性への無理解。
     桓武は色々と政策に積極的だった、だから冷徹にならなければいけないところもあったのだろうが、、、そういう人物だったのだろうな。

    p225 怨霊の使い方
     早良親王の祟りを実質認めてしまった桓武天皇。これがいけなかった。これ以降怨霊というものが悪用されるようになった。
     荘園の年貢の横領のために、「今年は天候不順で…。祟りのせいでしょうか…。」という言い訳が起つようになったし、陰陽五行の胡散臭い霊媒師が金儲けをできるようになってしまった。それに仏教の坊主も儲けられるようになった。
     日本は長く怨霊信仰から抜けられなかったというが、それは誰かが無くさないようにしていたということである。ここになぜ怨霊信仰が無くならなかったのかの片鱗が見えた気がする。
    ______ 

     これはマニアックな歴史小説。一般人受けはしない本でした。

  • 桓武天皇の時代、藤原冬嗣(北家)が主人公。
    兄・藤原真夏や、皇太子・安殿、冬嗣の異母弟・良峯安世が
    物語の主軸に登場する。

    上巻は、桓武天皇の即位、長岡京、平安京への遷都、
    蝦夷地の攻略、水害の発生などを背景にしつつ、
    桓武天皇とその皇太子・安殿の相剋が描かれる。
    桓武天皇と最澄との親交が少し描かれていたが、
    こちらも下巻でなにか発展するのだろうか。

    下巻ではどのような展開になるのか楽しみ。

  • 上巻
    桓武天皇、そして平城、嵯峨へと続く平安初期の話
    主人公は藤原冬嗣か?
    藤原兄弟そして天皇の親子と兄弟、そして皇室から外される皇子等久しぶりの平安初期の話
    憶えていない点もあるが、思い出しつつのんびりと

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著者プロフィール

(ながい・みちこ)1925~。東京生まれ。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。1964年、『炎環』で第52回直木賞受賞。1982年、『氷輪』で第21回女流文学賞受賞。1984年、第32回菊池寛賞受賞。1988年、『雲と風と』で第22回吉川英治文学賞受賞。1996年、「永井路子歴史小説全集」が完結。作品は、NHK大河ドラマ「草燃える」、「毛利元就」に原作として使用されている。著書に、『北条政子』、『王者の妻』、『朱なる十字架』、『乱紋』、『流星』、『歴史をさわがせた女たち』、『噂の皇子』、『裸足の皇女』、『異議あり日本史』、『山霧』、『王朝序曲』などがある。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

永井路子の作品

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