終業式 (角川文庫 ひ 8-11)

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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041835111

作品紹介・あらすじ

かけがえのない、高校生だった日々を共に過ごした四人の男女。テストにやきもきしたり、文化祭に全力投球したり、ほのかな恋心を抱いたり-。卒業してからも、ときにすれ違い、行き違い、手さぐりで距離をはかりながら、お互いのことをずっと気にかけていた。卒業から20年のあいだに交わされた、あるいは出されることのなかった手紙、葉書、FAX、メモetc.で全編を綴る。ごく普通の人々が生きる、それぞれの切実な青春が、行間から見事に浮かび上がる-。姫野文学の隠れた名作。

感想・レビュー・書評

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  • 手紙やFAXという特定の誰かに書かれたものを第三者が読むには想像をふくらませる部分が多くあって、「え、これ誰のこと?」とか「ああ、多分こんなことがあったんや」とか考えながら読み進めた
    悦子たちの文で、「女はこうあるもの」というその時代の風潮、学生時代で盛り上がる会話など今と変わるもの、変わらないものを感じられるのもおもしろかった
    思うことをそのまま文にしたとしても本当の気持ちとはやっぱり違う部分があったり、感じてほしいようには伝わらなかったり
    読み終わったとき『終業式』というタイトルに改めてぐっときた

  • 手紙だけの小説。これは誰が誰に書いた手紙なんだろうと最初は考えて、途中からは多分この人の手紙だと思えるようになりどんどん面白くなった。 学生生活から同じ人物を手紙で読むことができて、大人になってからも変わってない部分と変わっている部分が見えてそれもまた面白かった。

  • 高校時代を共に過ごした4人の男女。卒業してから20年もの間途切れずに続く彼らの絆を、交わされた手紙、FAX、メモなどだけで綴る物語。


    高校時代の同級生4人とその関係者たちが交わした文章のやり取りだけで20数年の軌跡を追う一風変わった形式の小説です。「手紙」だけで展開するわけではないですが、一種の書簡体小説と言えるのでしょうか。

    特定の対象しか読まない事を前提とした、秘密のやり取りを盗み見ているようでちょっとドキドキします。
    今は誰もが携帯を持つようになり、こまめな手紙のやり取りや授業中に友人にメモをまわしたり、交換日記などもそうそうやったりはしないのかもしれませんが、私とは年代がずれているとはいえ、こういった密やかな交信、文章ならではの口語とは違うすこしふざけた、あるいは格好をつけた独特の空気感は学生の頃を思い出して何だか懐かしかったです。

    読者に提示されているのは、誰かが文章におこした部分でしかないので、具体的な出来事などは明確にはわかりません。推察による部分がとても広い小説だとは思いますが、だからこそ色々考えられて心に残るのかな。

    個人的には、優子が好きでした。頑張り屋で自立し、芯があるようでいて、どこか自分を押し殺し屈折している所のある女性。幸せになってほしいですね……。

  • 高校の同級生、悦子、優子、都築を中心に、高校〜社会人までの主に恋愛を中心とした出来事を綴った青春群像劇。手紙やFAXで構成されたそれは、時に一方通行だったり、タイミングが合わなかったりでもどかしく、しかしだからこそ、その不便さがドラマチックに作用する。現代から見た物語の時代は良くも悪くも前時代的で、感覚的に少しのめり込めないところはあったけど、手紙やFAXといったオフラインによるやり取りは、その余白に起こった出来事を想像する楽しみが用意されてていいなぁ。

    物語の後半は、結婚や離婚などいろいろな出来事を経験し、歳もとってちょっと悟りの境地に達した登場人物たちの哀しくも温かい言葉で手紙が綴られていて、胸に迫るものがあった。
    特に都築が離婚して今は離れて暮らす息子に宛てた手紙は、彼の女性遍歴を思い浮かべながら読むと、一層グッとくるものがあるのだった。

    ひとを好きになるということは、取りも直さずエゴではあるが、相手を思いやるふりをして自分が傷つくことを恐れるがゆえに、それを押し殺して真摯に振る舞うことだけに意味はあるのか。ひとを好きになるということは、自制できなくなるくらい取り乱してしまうことだ、みたいなことが書かれていて、なるほどなぁ、と思う。

    とても面白かった。

  • どん、と強い衝撃を、何度も受ける一冊。
    痛かったり、恥ずかしかったり、羨ましかったり、色々な種類の衝撃を不意討ちで、喰らいます。

    「地の文」が一切なく、登場人物が他の登場人物に宛てた手紙だけで物語は進みます。

    主人公が高校2年生であった時を起点にした、約20年間が描かれています。

    同級生への淡い恋心、先生の悪口、同級生の噂話、受験、進学…
    そんなことで埋め尽くされていた手紙の内容は登場人物達が年齢を重ねると共に変化していきます。

    別離、結婚、不倫、奪取、離婚…。
    彼らに起きた様々な出来事が、変化する手紙の内容から、推察されます。

    手紙というのは、ある程度自分を客観視していたり、
    少なくとも自分の気持ちを文章にできる程度に整理できていないと書けないもので、その上でどうしても他者に伝えたい気持ちが詰まったものなので、出来事の受け止め方や、人の心について、核心をついている表現が多く、そういう意味で、色々な種類の衝撃を受けたのだと思います。

    作中にはいくつか、投函されない手紙も登場します。これが非常によい持ち味を発揮しています。

    伝えたいと思って書いた後に思い直して、自分の中に仕舞う感情。
    これが手紙の書き手の本心を表していて、作品全体をぐっとリアルに仕上げています。

    結局投函されなかった手紙の中に
    「なんていうのかな、わがままを言ってくれなきゃ応対できないんだよ、他人は。わがままを、ありったけのわがままをぶつけることが、それが他人を好きになるということなんだ。好きな人にはわがままを言われなければ意味がないんだ。
    こんなことを言ったら相手に悪いとか、こんなことをしたら相手に悪いとか、そういうことを考えることがもう、冷たいことなんだ。」
    という文がありました。強く印象に残りました。

    とても素敵な一冊に出会えました。おすすめ。

  • 手紙形式が斬新!
    高校時代からの友達が大人になっていく様子を手紙を通して描かれている。
    頭で整理しながら読むのが少し大変だった。

  • 高校生のキャピキャピした文面から
    日々を重ね、ゆっくりと大人になっていく
    登場人物たち。

    その変化が、手紙、交換ノート、FAXだけで
    鮮やかに描かれてゆく。
    出さなかった手紙、伝えられなかった言葉が
    こんなふうに表現されることに新鮮さと驚き。

    まるで、この作品の中に生きていて
    私も彼ら彼女らと手紙を交わしていたかのように
    思わせられるのも、文面のイキイキと
    したリアルさゆえだと思う。

    読書中、この世界の中の仲間に加われて
    楽しかった。

  • 高校3年生(第1章「制服」)から20年後の結婚離婚(第4章「指輪」)まで仲良し男女4人組とその周囲でかわされる書簡で構成された物語。本当に伝えたい思いは行間に潜ませ、彼らは大人になっていく――

    すべてこれハガキ、手紙、FAX、案内状等々の書簡のみでできている。なのに各々の人となりがよくわかるし、終わりの方には誰かさんの秘めたる思いがあかされたりする。
    ちなみに彼らが高校3年生だったのは70年代のようだ。ソックタッチ、パンチdeデート、エマニエル夫人というワードに懐かしさを覚える人はよりいっそう楽しめるだろう。

  • love is not saying sorry.

  • 2018/03/02

    手紙とファックスのやりとりだけで、登場人物たちの20年近くを追う。
    20年。
    スタートは高校生、表現に時代を感じるものの、なんか自分もこんなノリの手紙のやり取りしてたなあと思い出す。
    その後大人に近づいて文体は落ち着き内容も年相応に紆余曲折していく感じ、なんかリアルでした。

    都築がしょーもない。
    上辺では平静を装っていても、どうしようもなく弱くていい加減で、それを直視しないように文学にハマってみたり(ハマったフリをしてかっこつけたり)、自分の失敗や弱さにしょーもない言い訳をつけて正当化したり、もうほんとしょーもない。
    でもこういうしょーもない人はいるし、自分にもそういうところある。

    あとミポに鳥肌。
    末田先生の手紙に涙。人生の大先輩の文章だった。
    優子、よかったね。


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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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