阿片: 或る解毒治療の日記 (角川文庫 リバイバル・コレクション K 9)

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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042047025

感想・レビュー・書評

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  • 阿片を喫んだ時の、幻影のようなものを描いていると思いきや、解毒治療に望む際の冷静な考察を書き連ねたもの。魅惑的な断章で綴られる一編。以下、抜粋。/ストラヴィンスキーは自分では知らずにいるが「春の祭典」は、細心な正確さをもって、解毒治療を管弦楽として現している。/罌粟は気が長い。一度阿片を喫煙んだものは、また喫むものだ。阿片は待つことを知っている。/阿片は目的を罰する。/五本目のパイプの後で、一つの思念は、その姿を変えて、しずかに、水の中へ墨汁を滴らした時のような高尚な気ままさで黒衣のダイヴァのように短縮った姿で肉体の水の中に下りて行くのだった。/「阿片は生命を停止して、人を無感覚にする。あの気持ちよさは一種の死から来るのだ」と言い放つのは造作もない。/阿片、それは宿命の女だ。寺院の偶像だ。忍びの間だ。/阿片を喫煙んでいる人は、四方を坂にとりまかれている。精神を高所に保つ事は不可能だ。夜の十一時だ。五分間喫んで、時計を出して見ると、もう朝の五時になっている。

  • 再読。うちにあるのはリバイバルコレクションじゃなくて普通の角川文庫クラシックスだけど表示されないからこっちで(山師トマと逆パターン)

    タイトル通り阿片中毒の解毒治療で入院中のコクトーの日記というか散文。治療中とはいえさすがコクトーだけあって内容・思考回路はかなり明晰。いわゆる治療の経過などではなく普通にエッセイとして読める内容。プルーストやレーモン・ルーセル、ブニュエルの「アンダルシアの犬」の話や、友人としてピカソやサティなどの名前がちょいちょい出るのでミーハーに楽しめる。

    デッサンもたくさん収録されていて興味深い。最初のうちはシンプルなのにどんどん複雑怪奇になっていくのが、明晰な文章と裏腹でシュール。筒みたいなものが沢山描かれてるんだけど、なんの強迫観念なんだろうこれ・・・チクワ?(違います)

  • 5/30 読了。

  • 仏文学は苦手だ。 仏文科の人間にも近づけない。其処にあるのは嫌悪ではなく 嫉妬だ。解釈ではなく 羨望だ。

  • すべてはスピードの問題だ(不動のスピードは即ちスピードそのものだ。アヘンは即ち絹のスピードだ。)僕らのスピードと別なスピードを有し、僕らにとって、単に相対的不動性しか示さない植物と、それ以上の相対的不動性を示す鉱物との次に位して、あまりにスピードが速い為、また遅い為、僕らの目にも止まらなければ、また僕らが彼らの目にも止まらない様々な世界が始まる。

    阿片は、僕らに植物の生活を感知させる唯一の植物質だ。僕らは、草木のあの別種のスピードを、おぼろげながら知ることが出来る。

    阿片は精神を延び広げる。然し決して尖らせはしない。

    夢の中のエピソードは、夜のスクリーンの上に説けて、早速消えてしまいそうなものだが、実はそうでなく、僕らの肉体の不透明な外側にしみ込んで、これに島瑪瑙のような深い木目を印す。夢によって形成された僕らの部分がある筈だ。その部分は、他の形成によるあらゆる部分の上に被いかぶさる。

    僕の或る断面から生まれ、パンセが内から外への急激な通過に際して受ける硬化によって生まれるスタイル。
    僕らの中から出て来るものは、どんな不細工なものでもかまわずに、いきなりとっ摑まえて、それを石化すること。

    敗北の美学のみが永続的だ。敗北を解せない者は負けだ。

    僕はオリジナリティが大嫌いだ。僕は出来るだけそれを避けてきた。

  • 今読んでる

  • 46頁
    『花嫁花婿』のテクストに就いて。僕はあのテクストの荒げずりの文句が、ミロの『ビーナス』と、ミレーの『晩鐘』と、ジョコンダの絵はがきを三つ並べて見るような感じを与えるようにと希(ねが)った。

    77-78
    (一九三〇年)阿片が、性慾的な執着をすべて取り去ってしまうというので、用うる者の衰弱を来すとなすは当らない。何故かと云うに、阿片は、陰萎の原因とは決してならないのみか、かなり下等な類に属するこの執着に代えるに、性的に常態にある組織(オルガズム)の知り得ない極めて奇妙な然もかなり高等な類の執着を以ってするのだから。
     例えば、阿片による教育を受けていない性的本能が、男女の性別及び社会的階級の差別を超越して或る特殊のタイプを求めて執着すると同じく、阿片の感化を受けたこの超性的本能は、世紀と芸術とを乗りこえて、その外見にあやまられることなしに、一つのタイプの精神を嗅ぎつけ、探(たず)ね、それに結びつく。(ポールの部屋に於けるダルジュロ、アガート、スター達やボクサー達)(『恐るべき子供たち』)

    借りた所:川崎市図書館
    借りた日:2006/07/06-2006/07/20
    読んだ日:2006/07/06-2006/07/20

  • イメージの断片。
    バラバラな。なのになんでこんなに読ませるし、支離滅裂にならないんだろうか。すごい重力だね。

  • 何も言うまいよ。

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著者プロフィール

(1889年7月5日 - 1963年10月11日)フランスの芸術家。詩人、小説家、脚本家、評論家として著名であるだけでなく、画家、演出家、映画監督としてもマルチな才能を発揮した。前衛の先端を行く数多くの芸術家たちと親交を結び、多分野にわたって多大な影響を残した。小説『恐るべき子供たち』は、1929年、療養中に3週間足らずで書き上げたという。1950年の映画化の際は、自ら脚色とナレーションを務めた。

「2020年 『恐るべき子供たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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