- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043410057
感想・レビュー・書評
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この方の小説は読了後いつのまにか半分以上内容を忘れてしまいます。しかし断片的に鮮明に覚えていて、どの小説にも美しかったなという印象を受けます。日常を丁寧に書いているのに普通の日常とは思えない、不思議できれいで、仄暗い雰囲気が好きです。
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なんでこの人の書く物語は
こんなにかなしくて絶望的でくらくて
なのになぜか優しくてどこかにひっそり希望が隠れてるんだろう
そして、夢と現の狭間のような世界 -
お手伝いのキリコさんのお話は良かったな。自分の出来ることをやるとこ、私との内緒のおやつとか何でも話せる人になっていた。しかし、頼まれ事で失敗して辞めさせらてしまった。
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基本的に人間は信じていない私ではあるが、それでも人生のどこかで誰かに助けられた場面があったことは認めざるを得ない。いかに人間嫌いな私でも、たった一人で生きてきたわけではない。普通の人は助けてくれる人というのは家族であったり恋人や友達であったりするのかもしれない。だが極端に知り合いの少ない私は、いざというとき力になってくれたのは、赤の他人であることが多かった。通りすがりの優しいおばちゃんや、名前も告げずに去っていったサラリーマン。よくぞあの時あのタイミングで、と奇跡を信じたくなるほどありがたい助けもあった。
たぶん、世の中はそいういうふうにできているのだ。不幸と幸福のバランスがとれるように、なんらかの物理的作用が働くに違いない。
だから、用事が終わった後煙のように消えてしまってもちっとも不思議ではない。たとえそれが恋人であっても。役目を終えて舞台から降りただけなのだから。 -
7つの短篇は独立したお話だが、小説家である主人公の語り手「私」は全部に共通している。
短篇の並び方は時間順ではなく、読んでいくうちに主人公が最初の短篇の「今」の暮らし方になった経緯がわかるようになっている。
後半の短篇では、主人公の恋愛が主に描かれる。
私は「エーデルワイス」が心に残った。主人公の前に現れた熱狂的な男性の読者。
この短篇を最後まで読むと、この男性が何者か、なぜ主人公の前に現れたのかがわかる気がした。
それから、主人公の息子(赤ちゃん)の友達であるカタツムリの縫いぐるみがでてくる部分がいいです。この縫いぐるみを見てみたい。 -
文体が綺麗!切ないのにキラキラしている。
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短編集で、所々に小川洋子の別の作品のアイコンが散りばめられていて、彼女の作品を読んでいる人にはたまらん一冊。
物語自体も、小川洋子特有のオマージュや隠喩が散りばめられていて、人の内面を鋭くえぐるというより、やんわりと押し入ってくるような風合いの作品ばかり。
ちょっと難解な所も私は好きです。☆4つ -
「失踪者たちの王国」「盗作」「キリコさんの失敗」「蘇生」がよかった。
あたしとは違う温度感を持つひとから見たお話なのに彼女の周りに起こった事、見た事があたしの頭の中で精彩に浮かび上がる。
キリコさんのような生き方はステキだ。
自分に想いがあり、もしかしたら伝わる人には伝わるかもなくらい。
多くを語らない。
「盗作」のあの頃のわたしに必要だったとのくだりになんだかとっても共感した。私も一時とても必要としていたものがあってそれを得てたかどうかもあやふやなんだけど、そんなときに道義的かどうかはさして問題じゃないのだ。
アナスタシアもステキなご婦人だった。 -
「まぶた」「博士の愛した数式」以来の小川さん作品。この人の小説はするすると読めて、読んでるときはとても心地いいのに、読みおわったあと不思議なくらい透明なままだ。自分の中に残らないと言ってもいい。心のささくれにひっかかりもせずに、少し離れたところで息をし続けている。そう、確かに、感情移入とかそういう感じはないのだが、それが嫌ではなくて、繰り返し眺めてはまた伏せる、静かな結晶のような。