巷説百物語 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 463
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  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043620029

感想・レビュー・書評

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  • 巷説百物語シリーズの始まり、やはり御大は面白い…。

    『妖怪の宴 妖怪の匣』とかで顕著なんだけど、御大は妖怪の存在自体を信じてはいない。いない側の立ち位置なんだけど、いないのに巷説で語られてきたことにむしろ強く興味を持っている(もちろん、神秘否定というわけではなく、道理が成り立たないからいないとしているに過ぎないのが御大の面白い部分なんだけど)。
    つまり妖怪が成り立つ理屈というか、何故そんなものが受け入れられたのか?ということに主題がある。

    だから本書は一貫して”妖怪の実在を肯定していない”。けれど、妖怪の仕業とした方が収まりが良いように構成されている。芝右衛門狸なんて特にそうだし、柳女は加害者がその仕組みを利用した形だな。
    冥界も妖怪も無いけれど、それを突き詰めていけば破滅しかない。
    兎角渡世は生き辛く、故に妖怪/冥界(ブラックボックス)が必要とされる。説明されないことが救いになることもあるってことだな。

    御大の妖怪観に馴染んでいると3倍くらい楽しい。思わずシリーズ全館買ってしまった。オススメです

  • 一見、不可解な事件を、小悪党の御行一味があやかしに見立てて鮮やかに決着させる。変幻自在な語り口で物語を紡ぐ著者の筆が冴え渡っています。

     江戸時代末期の天保年間。怪異譚を蒐集するため諸国を巡る戯作者志望の青年・山岡百介は、雨宿りに寄った越後の山小屋で不思議な者たちと出会う。御行姿の男・小股潜りの又市、垢抜けた女・山猫廻しのおぎん、初老の商人・事触れの治平、そして、何やら顔色の悪い僧・円海。長雨の一夜を、江戸で流行りの百物語で明かすことになったのだが…。闇に葬られる事件の決着を金で請け負う御行一味。その裏世界に、百介は足を踏み入れていく…。

     「小豆洗い/白蔵主/舞首/芝右衛門狸/塩の長司/柳女/帷子辻」の七編から成る時代小説。血腥い事件とあやかしを結び付けて着地させるだけでも凄いのですが、そこから妄執や情念、果ては人間の業まで立ち昇らせる著者の手腕に唸らせられっぱなしです。また、怪談とは言っても、単なる絵空事ではなく、それを生み出す人間の想像力を介して現実を映し出している作品でもあります。「必殺仕事人」を彷彿とさせるキャラ立ちした登場人物たちの手際の良さも堪能でき、シリーズ化も納得の著者渾身の一作です。

  • 大好きなシリーズ、
    夏は読み返したくなる。

  • 再読

    音読でするする進む文章。
    節回しが愉しい。

  • 再読。時代小説や怪談、あまり得意ではないのに何故か読めてしまう。古い言葉を使っていても、リズムが良いから頭に入ってきやすいのかな?巷説百物語シリーズ一作目。又市さんや百介さん達の細かいところは出てこないけど、この先いろんなしがらみが出てきて面白かった気がします。スッカリ忘れてしまっているので楽しみ。

  • 悔しいッ‼️

    その① 直木賞作品だと思ったら『後』だった
    その② めちゃ面白かった(笑)

    『後』買うぞ(笑)

  • 小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、そのほか一癖あるメンバーと(進んで)巻き込まれている考物(物書き)の百介による、怪し恐ろしの(時代版)厄落し。京極さんの本を沢山読んでいると、同じ題材が何度も出てくるので、よりわかり良い。が、やっていることは京極堂とそれほど変わらないかもしれぬ。より仕掛けが込み入っているが。
    関くんにしろ、百介にしろ、ワトスン(未満)のキャラクターが嫌みなく溶け込めるかが面白さのポイントだと思っているのだが、百介がこれからどう絡んでくるかが楽しみ。
    20180914
    再読。読んだような気がしていたが、やはり読んでいた。2回目でも面白かった!

  • 諸国に伝わる怪異伝説を集めて行脚する考え物の百介。この純朴な青年が出くわす魑魅魍魎どもは、妖怪よりもっともっと恐ろしい存在である。

    怪談話と思いきやそれだけではない。謎解きの要素が濃い。
    そして、劇場型とでもいうような鮮やかな騙しのテクニック。騙されるのは悪党。懲悪の気持ちよさもある。

    登場人物の特異な風貌のせいでキャラクターも想像しやすく、人物がある程度固定されることで読みやすい。また物語の中で自然の風景がたてる音、鈴がなる音、動物が走る音などが効果的に使われていてぐいぐい読んでしまう。
    ふっと我にかえり背筋が寒くなることもある。

    続きの何冊か、読みたい。

  • 怪奇譚を集めるため諸国を巡る戯作者の青年、山岡百介が見聞きした妖怪物語。シリーズ第一弾では、小豆洗い、舞首、柳女、帷子辻など、七編が収められている。百介以外にも謎めいた美人のおぎん、話が上手い御行の又市が登場する。初めは古い文体で読みづらく最後まで読めるか心配したが、読み進めるにつれ物語の流れがわかってきた。まず妖怪の紹介、事件発生、問題解決、謎解きと、こんな感じです。独特な雰囲気を持った作品。人によって好みが別れるところですが、結構、サクサク読めました。

  • 人の心にあるどろどろとしたものに妖怪の名を付けて祓い落とし
    事件を解決する京極堂シリーズに対し、
    どうにもならない事件を妖怪の仕業にしてしまうことで
    決着を着ける巷説百物語シリーズ。
    事件を妖怪の仕業にしてしまう御行一味の手際は実に見事です。
    http://matsuri7.blog123.fc2.com/blog-entry-118.html

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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