さまよう刃 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043718061

感想・レビュー・書評

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  •  長峰重樹(主人公)は、娘・絵摩と二人暮らし、妻は十歳の時に亡くなった。その絵摩も今年高校生になり、一時はどうなるかと思っていたら、「パパ、いい人がいたら再婚しなよ」と茶化してくる。取り敢えず彼女なりに母親の死を乗り越えてくれたと安堵する。
    小説に母親の存在が書かれているのは、たったこれだけです。妻の名前も書いていない。父娘二人の時に、妻がいてくれたらと考えるのも仕方がない。携帯電話は、小学生の時から持たせている。

    父親がどれだけ娘を大切にしていたのか、短い文章でくみ取れる。その娘は、学校の友人たちと花火を見に行った。花火大会は九時までと聞いている。少しでも遅くなるようなら電話しなさいとも言ってあった。しかし、娘は帰って来なかった。

     長峰は、あの手この手を尽くして絵摩を捜したが見つからない。そして警察に捜索願を出した。焦燥感と絶望感を覚えていたところ、マスコミに公表して捜索することを提案してきた。長峰は同意した。

     しかしその後、早朝五時に警察からの連絡で絵摩は荒川の下流部の堤防に引っかかるように死体で見つかったのだ。

     犯人は小説の冒頭から登場している。絵摩は犯人の欲望のために攫われ殺されたのだ。長峰の苦悩と未だ知らない犯人に対する怒りが窺える。しかしその怒り以上の感情が心を支配するのは、謎の密告者からの電話を受けた後だった。

     一方、苦悩していたのは、長峰だけではない。捜査を担当する警察の織部刑事も、本当にそれでよかったのかと考えていた。

     クライマックスシーンは緊迫した。手に汗を握る状況に一瞬の迷いがあった。
     この作品は重く考えさせる事柄が多かった。

    それでも読書は楽しい。

  • 未成年の少年たちにより、娘を殺された父親が復讐を謀るというストーリー。東野圭吾らしく更生の余地のない加害者と救済されない被害者の心情を事細かく描いている。
    読んでみると加害者のプライバシー保護とと更生を目的とした少年法はあくまで加害者のみの立場に立ったものでしかなく、被害者救済はあまりに軽視されている。それがために本作のような復讐劇というストーリーが成り立つ自然な流れであり、フィクションなのにノンフィクション感があるようにすら感じられる。
    少年犯罪ものはいくつか読んだが、少年法や死刑制度なら薬丸岳で、加害者被害者の心情なら東野圭吾って感じ。
    本作では被害者の復讐劇を肯定したくなるような心境にさせる反面、詭弁のようにも思える少年法へのやるせなさを感じられる。

  • 『さまよう刃』(さまようやいば)は、東野圭吾による長編小説。『週刊朝日』にて連載された。現在まで、150万部を超すベストセラーとなった。
    ※Wikipediaより引用

    長峰重樹(父)が愛する娘を蹂躙した少年達を復讐するというストーリーであるが、あらすじを読んでみて興味があったので読んでみたが…読んでいる途中も読み終わった後も話の展開に哀傷してしまった。

    自分も女性である為、夜道は気をつけてはいるが何故電車に乗る時は服装にも気をつけて乗らなければならないのか。痴漢やレイプがこの世から本当になくなって欲しいと改めて思った作品であった。

    東野圭吾氏は、ミステリーもSF作品もどれも素晴らしいがこの様な重いストーリーも書けるのは素晴らしいと思ったし、この作品を通して学べることは沢山あったと感じた。

  • 話の内容はかなり重い。
    今まで読んだ東野圭吾さんの本の中で、一番重くて読むのが辛かった。

    耐えきれないくらい辛いシーンの連続で、途中で読むのをやめようか
    と思ったほど。

    しかし、この小説はぜひたくさんの人に読んでもらいたい。

  • すでにwowowのドラマを見ていたので、あらすじは分かっていたけれど、引き込まれて夢中で読んだ。
    何とも悲しくて重い話。
    少年法について考えさせられる。


  • 東野圭吾に夢中な時期に
    ずっと読んでた、
    はて、よく覚えてない。

  • 非道に殺害された娘の父親は犯人達への復讐を決意する。

    法律的には復讐はダメなんだろうけど、何とか復讐を叶えてあげたいと読みながら父親を応援していた自分がいた。

    今の世の中も、もっと被害者に寄り添って欲しい。
    日本の法律は加害者に甘すぎるよ。

  • 何物にも代え難いたった一人の娘は、ある日「未成年の少年たち」によって陵辱され、殺された─

    娘だけが生き甲斐だった長峰の絶望の咆哮。さらには同じ犯人達によって自殺に追い込まれた父親の絶叫。
    読み進めるにつれ苦しさが増す。

    少年法とは誰を救うための法律なのか?法が定める「更生」とは?

    これを若い頃に読んでいたら、今と全く感想が異なっていたかも知れない。子を持ち、将来にも思いを馳せるようになって始めてわかる親心。自分の子が…と考えただけで身の毛がよだつ。

  • 「法律は人間の弱さを理解していない」
    正義のあり方、法のあり方(少年法)について事件に関わる様々な視点から考えさせられた。

    自分の娘が酷いやり方で殺されたとして、その後も尚余罪が発覚しかつ反省の色が見えない犯人に対してそれでもなお加害者も未成年で更生の余地がありこれを期に社会復帰して真人間になって欲しいと祈れる人間が世の中に何人いるだろうか。

    作中で長峰は自首して公の場で少年法のあり方について世間に疑問を投げかけ法律を是正する気運を高める方法、と加害者を殺し仇を撃ち、後の被害者を減らす方法、の選択を迫られるが、絶望の中前者を正とし行動できる人間がどれだけいるだろうか。

    作中で加害者の更生を信じる者は誰一人として居なかったのにも関わらず、様々な刃がさまよう様に心を打たれた。

  • ガリレオシリーズ以外が読みたくて買った一冊。

    少年法とか復讐とかちょっと重い内容だったがすらすら読めた話でした。

    実際にこの本に出てくる犯罪を犯した少年達と同じようなクズはいるだろうし、似たような事件があり短期間で出所している人もいると思うと少年法ってなんだろと思った。

    話の中で出てくる弁護士のセリフで、「罰をいくら厳しくしても、犯罪防止には効果ない。」みたいなのがあるが
    防止にならなくても、厳しい罰を与える事が出来ると反論したくなった。

    最後はもう少し救われる最後が読みたかった気もする。

    被害者側が救われる世の中になって欲しいと思った小説でした。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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