雷桜 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043739011

感想・レビュー・書評

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  • とても美しい情景が思い浮かぶ山あいを舞台にした、繊細で儚く
    痛ましくもありながら、優しさと温かさ
    そして強くて逞しくもある凛とした人々の心が
    清々しい気持ちにさせてくれる物語です。

    生まれて間もなくの雛祭りの晩に、何者かにかどわかされ
    天狗が棲むと恐れられている瀬田山で、"狼少女"と呼ばれてしまうほど
    野性的に育つお遊。

    多感な少年期に御家のしきたりに縛られ、気性を歪めてしまう
    徳川家のお殿様斉道。

    そして
    二人に共通する青年で、己の将来を模索しつつ果敢に我が道を切り開いていく
    お遊の兄・瀬田助次郎。

    この少年少女たち
    三人三様の清い心の成長に大いに涙します。

    ことに斉道からは目が離せませんでした。
    幼い頃に親元から引き離され、身分で強いられたレールの上を歩まねばならない
    歯がゆさ。そんな十代の少年に反抗期がなかろうはずがありません。
    むしろ正常な男子の成長の過程....。なのに”発疳”(癇癪)と病人扱いされ
    取り巻きからも恐れられるばかりとあっては、当人もどんなにか
    やりきれなかったことでしょう。暴れずにはいられないという気持ちの共感
    そして、その痛ましいまでの斉道の心に寄り添いたいと思う母性の心との両方に
    ゆらゆらと揺さぶられました。

    斉道とお遊の始めての出会いには鳥肌が立つほど痺れます。
    ビビビとくるこの瞬間。一番好きな場面です。

  • 久しぶりに綺麗な、心動かされる恋愛小説を読みました。

    生まれて間もない頃にさらわれ、人が立ち寄れないような山で育った娘・遊と、徳川のお殿様との恋物語。

    家来だった遊の兄から、遊のことを寝物語に聞いていたお殿様。
    窮屈な生活に精神を病んだことをきっかけに、
    休養のため訪れた村で、遊の奔放で飾らない姿にいつしか心奪われる。
    恋心を知らない遊も、かつて山で自分を育ててくれた男性が自分に無償の愛を注いだように、自分も代償を求めない愛情を注ごうと殿と結ばれる。

    二人が山で結ばれた後、馬に乗って村に帰ってくるシーンを兄の目線で描かれる描写がとても美しいことに感激します。
    「殿が背後から遊を掻き抱き、遊が首を捻じ曲げて殿の唇を受けている」

    立場上、二人は別れざるを得ない、そんな状況もより読者の心を切なくしますね。

    映画化された本作もぜひ見てみたいです。

  • 情景がきれいな作品
    日本語もきれいだが、話は紋切型
    お遊の生き方は凛々しい

  • 2000年4月角川書店刊。2004年2月角川文庫化。第123回2000年上半期直木賞候補。2010年10月映画公開。宇江佐さんにしては、話の纏まりが悪いように思いますが、それなりに楽しめました。映画ってどんなだったのかが、気になりました。

  • 江戸から3日かかる山間の村で起きた神隠しと、御三卿である清水家の当主の心の病がどう結びつくかと思ったら、そう来たか、という感じでした。

    乳飲み子のうちにさらわれて礼儀作法を知らず、人目を気にすることなく自由気ままにふるまう遊を、将軍の息子として立派であらねばならぬという重圧に押しつぶされそうな斉道が気に入るかと言えば…気に入るかめっちゃ嫌うかのどっちかだと思うよね。

    でも、遊が斉道のような男に魅力を感じるのだろうか。
    ここがちょっと気になった点。

    でも、遊は男に幸せにしてもらおうと思うわけではなく、不幸せな男の心をわかってあげたのだ。

    自分の幸せは人に決められるものではない。
    傍から見たら損な生き方だろうと、欲しいものは自分で掴み、大事なものは自分で守る。
    あっぱれな愛の生き方だと思いました。

  • 赤ん坊のとき連れ去られ、甲賀の忍者に育てられた娘が家に戻る。将軍の息子と恋に落ちる。
    設定は少々無理があるが、俗世から離れた感覚を持つ娘の行動はすがすがしさを感じさせる。

  • 狼女など、極端な言葉が並ぶ書籍紹介がインパクトを与えており、それで手に取る人もいるのかいないのか。でもそれはあんまり正しいやりかたではないような気がする。本作品の大きな方向性を示しているわけでも、端緒を示しているわけでもない。それを言ってしまうとそれこそネタバレなのかしれないが。

    できれば、その帯なしで純粋な宇江佐真理作品としてよんでみたかったかも。

  • 将軍の17男斉道と山で育った娘遊の恋愛ストーリー。側女になることを拒む苦しさを抱えながら、斉道と離ればなれになった後も斉道との想い出をいつまでも大切にしている遊の姿にぐっとくる。

  • すごく良かった(*´∀`*)!!
    遊の生き方がかっこいいなぁ。
    映画も観てみたいな。

  • 「究極のラブストーリー」ということで読んでみたが、肝心のカップルたちが出会うまでがひたすら長い。そしてまた、別れまでが早い。
    出会うまでにそれまで長々と語られていた時代背景があったからこそ、その後の悲劇性が増して美しいということなのであろうが、「恋愛物語」を楽しむために読んだ方だと「え、これだけ引っ張ったのに、恋愛要素これだけ?」と思ってしまうだろう。

    解説の最後に「複雑でありながらシンプル」という言葉がある。
    たしかにそれがこの物語の良いところなのであろうが、それが受け入れられない場合は、ただ胸にしこりが残るだけの話となるだろう。

    ただ、ところどころに出てくる雷桜など、背景の描写は美しい。
    この本を読むのなら、映画版の表紙でなく、桜の絵が描かれた表紙のものを選ぶことをオススメする。

    • reokasaiさん
      すごい読んでみたいと思いました!
      すごい読んでみたいと思いました!
      2012/05/15
    • とみぃさん
      ありがとうございます
      興味をもっていただけたなら嬉しいです!
      ありがとうございます
      興味をもっていただけたなら嬉しいです!
      2012/05/15
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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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