- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043829064
作品紹介・あらすじ
結城中佐の発案で陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校"D機関"。「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。この戒律を若き精鋭達に叩き込み、軍隊組織の信条を真っ向から否定する"D機関"の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く結城は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げてゆく…。吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞に輝く究極のスパイ・ミステリー。
感想・レビュー・書評
-
遅ればせながら、柳広司さんもスパイ・ミステリーも初読みでした。2008年に刊行され、翌年吉川英治文学新人賞・日本推理作家協会賞をW受賞! 賞に違わず流石に良質な作品で、グイグイ引き込まれ堪能できました。
時は1937年、第二次世界大戦が近づく帝国日本の時代。各国の諜報員が暗躍し、日本陸軍でも、結城中佐の発案でスパイ養成学校、通称〝D機関〟が開設されるところから始まります。
本作は、訓練を受けた優秀なD機関の学生が、結城中佐の指示のもとスパイとして暗躍する姿を描いた5篇の連作短編集です。
神田、横浜、ロンドン、上海、また東京で、D機関生の任務遂行が描かれるのですが、「スパイ=見えない存在」「経歴含め全て偽装」なので、当然のことながら個性が全く描かれません。
これは、D機関生を指導し束ねる結城中佐も同様、と云うか、最強の謎だらけの〝魔王〟です。読み手もどこまで信用できるのか、はたまた騙されているのか、端から手のひらで踊らされているのか、緊張感と共に、嵌められている感覚になります。
これらが想像を掻き立て、スパイのリアリティを高めている気がします。加えて、スパイという任務の特異さ、究極の自負心の塊のような末恐ろしさを感じずにはいられませんでした。
小説ならではのスパイの〝カッコよさ〟〝美学〟を描き切った、極上のエンタメ作品でした。シリーズ第四弾まであるようで、気になります。 -
日本陸軍スパイ養成学校D機関。
陸軍中枢部の反対を押し切り、地方から精鋭達を集めて、過酷で奇天烈な訓練で、優秀なスパイへと育てあげていく。
彼らが、スパイとして暗躍するスリリングな短編6編。
ほーんと好き。アニメでハマり、コミックを読み、原作に戻り、そして再読に至る。たぶん、もう一回くらい楽しめる。
解説に“インテリジェンス・ミステリー”開拓の作品とあります。そんな呼称があったとは。甘美な響。
そして、D機関は、陸軍中野学校がモデルとなっているようです。ここで創作されたスパイ達のような日本の優れた情報将校が活動していたと想像すると、また読みたい本が増えてしまいますが。
-
2023/05/29
-
2023/05/29
-
2023/05/29
-
-
初めての柳広司さん作品。
表紙とスパイミステリーという紹介に惹かれた。
スパイになる人って頭脳明晰でカッコイイ!来世はスパイになれるくらいの才能がほしいと読みながら憧れてしまった。
でも結城中佐のようにどんなに優秀でも任務に失敗すると過酷な結末が待ち受けている孤独な職業でもある。
本作品は、スパイと陸軍が絡む5編で構成されていて、それぞれに主人公も状況も異なる。どれも面白くて甲乙つけがたいけれど、個人的にはスパイの優秀さが際立つ【ジョーカー・ゲーム】とスパイとして求められる厳しさを痛感する【XX(ダブル・クロス)】が好き。【魔都】は最後が悲しかった。
結城中佐発案のもと設立されたスパイ養成学校「D機関」は、当時の軍隊組織では当たり前だった考え方を完全に否定し、全く異なる思想を学生に教えていたから周囲からの圧力や批判が多かった。
しかし、そんな周囲の反応を気にすることなく着実に成果を上げる結城中佐はやっぱりすごい。こうゆう人が世の中を変えていく人なんだろうな。
特に印象的だったのは、「殺人や自殺は、スパイにとって最悪の選択肢であること。」5編の物語を通して、スパイとして一人前になるために必要な精神論がたくさんちりばめられていて興味深かった。
シリーズ化されているみたいなので、他作品も読んでみたい。-
スパイものが好きでこのシリーズも大好きです!
ちなみに富樫さんのSROシリーズも好きで、なんかうれしいです。スパイものが好きでこのシリーズも大好きです!
ちなみに富樫さんのSROシリーズも好きで、なんかうれしいです。2023/09/15 -
sikisoku55さん
コメント&フォローありがとうございます!
スパイものにSROに好みが似ていますね^_^
わたしはまだ他シリーズ読...sikisoku55さん
コメント&フォローありがとうございます!
スパイものにSROに好みが似ていますね^_^
わたしはまだ他シリーズ読めてないので読もうと思っています。そしてSROは読み進めるほど登場人物に愛着わくのと話の展開も面白くなるので是非最新話まで読んでください♪
sikisoku55さんの本棚もぜひ参考にさせていただきます。2023/09/15 -
返信ありがとうございます(^^)/
確かに愛着沸いてきますよね!
富樫さんの作品はもともと軍配者シリーズから入りました。
歴史ものはち...返信ありがとうございます(^^)/
確かに愛着沸いてきますよね!
富樫さんの作品はもともと軍配者シリーズから入りました。
歴史ものはちょっとハードル高かった私ですが、とても読みやすくて。なのでSRO見た時は分野が全然違うのに刑事ものもこんなに面白く書けるなんてと感心しちゃいました。はい!最新話までじっくり読み進めていきます(^^)/私もsatokoさんの本棚参考にさせていただきます♪2023/09/19
-
-
めちゃめちゃ切れ味のあるスパイミステリ。
どの短編も面白かった。 -
スパイ養成機関である『D機関』の話。
人に知られたら失敗って…
007や、ミッション:インポッシブルのような目立ったスパイは、映画の中の話で、ホンマはこんな感じなんかなと思わせる。まぁ、両者共、エンターテイメントに違いはないんやけど。
この小説は、短編集で、『D機関』の各メンバーの活動をそれぞれ。
各人共、凄い能力があるが、ナルシストばかりで、信じるのは己のみ。
孤高、群れない、自己完結型って感じ。
まぁ、スパイなんで、一旦、潜入したら、外部に頼る事なく、自分で考え、自分で行動し、自分で解決することが重要なんやな。
なので、めっちゃカッコ良い!
今の混沌とした社会では、会社組織に組み込まれてるだけでは、あかんので、今の社会人にも必須かもしれん。肝に銘じとこ!こんな人いたら、すぐに騙されそう(ーー;) -
陸軍中野学校を彷彿とさせる、「D機関」による極上のスパイミステリー。とにかく結城中佐の存在感がすごい。そのリアリストぶりと千里眼には舌を巻かざる得ない。その部下たちは、一騎当千でありながら、お互いの素性を一切知らない。彼らの殺さない、死なない、という第一戒律にも痺れてくる。これらが、外国の組織やスパイ、ある時は日本軍内部とも虚々実々の手練手管で渡り合うのだから、面白い。間違いのないオススメの一冊でした。
-
5編からなる連作短編スパイ小説。冷徹無比を心がけながらも苦悩や孤独を滲ませる登場人物たちの悲哀すら感じさせる姿の描き方の巧みさと、窮地に陥ったときのスリルに満ちた展開の速さの融合の見事さに心奪われて一気読み。
第二次世界大戦の開戦が確実に近づいていた昭和12年秋。
大日本帝国の陸軍内に結城中佐の発案で極秘裏に設立されたスパイ養成学校、通称「D機関」。
海外にて凄腕のスパイとして長年活躍しながらも窮地に陥った際の壮絶な経験から身体的な欠損を得ることとなり後進の育成に乗り出したとされる、「魔王」の異名を持つ結城中佐の信条は「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。諜報活動の最大の意義は気づかれないこと。だからこそ、いざという時には、事前に掴んでいた情報を利用して相手より優位に立てる。スパイは、存在を疑われた時点で負けであり、人の耳目を集める死など論外なのである。
それは、天皇を盲目的に現人神と崇め、少しでも多くの敵を殺し、敵に捕らわれる危機あれば自決こそ最大の美徳とする従来の軍の価値観を真っ向から否定するものだった。
軍内にありながら軍と対立を深めるD機関にて結城による厳しい訓練を受け終えた精鋭の若者たちは、結城が重んじる「誰にも知られるべきではない影ながらの行動」の最中、窮地に陥るけれど…。
5編の物語の主人公はそれぞれに違う。
結城が否定する従来の価値観を美徳とする軍からD機関に人身御供的な人事異動で出向してして、結城の教育と実践の下で、それまで信じていた価値や視点を揺らがせることになる軍人青年。彼が敵国スパイと思われる男の屋敷に踏み込んだ時…。【ジョーカー・ゲーム】
結城の元で徹底した教育を受けた後、疑わしい男に対する潜入捜査を冷徹に遂行しながらも、スムーズにいかない過程に苛立ち、考える若者。【幽霊(ゴースト)】
派遣された英国にて、「他者の目も当てられない失敗のあおり」を受けて敵に捕らわれて生命の危機に直面した青年の間一髪の脱出劇。【ロビンソン】
混沌とした上海にて、D機関の人物と思しき人間のもとで泳がされて破滅した対立構造にある陸軍所属の憲兵達の姿。【魔都】
家族の愛を知らないゆえに情に流されることなく誰より冷徹に諜報活動に専念行動できるはずだったのに、卒業試験であるはずのある事件を担当した時に過去の記憶に引きずられて綻びをみせてしまった青年。【XX-ダブルクロス】
スピーディーな展開の中で窮地に陥る様々な属性の主人公の姿。その過程で描かれる孤独の様相、人によって異なる、割り切って進む姿、割り切れずに重大な選択をする姿。
そこに大なり小なり関わる、裏で糸引く「魔王」結城中佐の圧倒的な存在感。
本当に一気読みしてしまいました。
そして、単に展開の速さが面白かったというだけでなく、誰に対しても自らを偽り続けることを課すことによる逃れられない孤独、空虚さや悲哀がたしかに胸を打つ巧みさ。
恐るべき偉大な魔王様・結城中佐の過去は本作では明かされなかったのだけど、続編があるようなので、続編への期待大な作品でもあります。 -
物語の時代は第二次世界大戦。
結城中佐の発案で、陸軍に内に極秘裏に設立されたスパイ養成機関"D機関"。
「殺人、及び自決は、スパイにとっては最悪の選択肢だ。」など、当時の日本軍内では考えられない武士道に反する精神を持った集団。
(もちろん陸軍内で閑職の立場に追いやられるも、実力でポジションをもぎ取る。)
ちなみに本著は長編ではなく、その"D機関"のメンバーそれぞれのミッションやストーリーが描かれた短編集だった。
D機関の面々がプロフェッショナルかつインテリジェンスで、戦時中の日本でこのような人間を果たして育てることが出来るのかと言いたくなる。
日本軍や諸外国の関係者を出し抜く話ばかりだが、果たしてそこまで賢い人間が戦時中にいたのか・・・
p228
「スパイとは、見えない存在だ。」
見知らぬ外国の土地にたった一人で留まり、その地に溶け込み、誰にも正体を知られず、自分の判断のみを頼りにその国の情報を集め、分析し、本国に送り続ける。それこそがスパイの優れた条件なのだ。
いやー
D機関のスタッフ達も頭が切れるが、結城中佐のキレ具合とたまに見せる温情に濡れちまうぜ。
和製ジェームス・ボンドを思わせる、完成度及び頭脳の発達が高いスパイ達に、読んでて胸がアツくなったぜ。 -
スパイっているんでしょうか? いるんでしょうね。
いたらいたで、自らスパイになりたい人っているのかな?
とらわれないこと。
できたとしても、もうそれは人間という生き物ではない気がします。
最終章の「X X ダブル・クロス」は、「とらわれてしまったこと」がなんとも切ない感じでした。 -
男心をくすぐるスパイミステリ。登場人物がクールで世界観が素晴らしい。各話違った面白さがある。
いつでも帰って大丈夫だと思いますよ〜♪
いつでも帰って大丈夫だと思いますよ〜♪