ナラタージュ (角川文庫 し 36-1)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043885015

感想・レビュー・書評

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  • 2022年最後の本.思ってたより淡味だがよい.

  • 文章自体は終始そんなに重さはなく、始まりから中判まではどちらかというと恋愛の爽やかな甘さのような部分をしっかり感じられていたのに、だんだんと感情移入させながらずっしりと苦く重たい感情が蓄積されていってしんどかった。

  • 「ナラタージュ」を読むと恋愛小説を読んでハッピーエンドかバッドエンドかを結論づけることって意味がないというかハッピーエンドだと思ったそれは本当にハッピーエンドなの?と思う。自分のなかでのハッピーエンドとバッドエンドの定義に揺らぎがかかるというか。

    好きな人と一緒にいることは、基本的には幸せで光に満ちていることだと思う。「ナラタージュ」はこの「基本的には」の部分を鋭く突いてくる。
    基本的には幸せだけれども、確実に大いなる幸せをもたらすとは限らないのが恋愛小説だし、恋愛というものだと思う。また人間としての相性が良くてもそこに恋愛が絡むと関係が一気に破綻してしまうような人たちもいる。
    私は主人公の泉と葉山先生はきっとそうなってたかもしれないと思う。二人ともお互いと生きていくためには繊細過ぎるというか優しすぎるというか、細かなところまで拾い上げ過ぎるのだ。そんな二人だからこそ物語は終始薄氷を踏むような、危なっかしい雰囲気に満ちている。少しでも力を込めてしまったらパリンと割れてしまう。そんな危うさというか不安定さが二人にはある。
    二人はずっと互いの幸せを願っている。互いが大切だから。でも誰かの幸せを願うことや大切に想うことはすごく身勝手なもので、ある種の強引さがないとその想いは届かないし実現しない。一気に相手への枷になる。
    そして二人は互いのことを好きになるには繊細すぎて優しすぎて、強引になりきれない。だからこそ別離を選んだし選ばざるを得なかったのだと思う。二人は人間としての凹凸がぴったりで、一度互いにぴとりとハマってしまったら隙間がなくなって適度に離れたりくっついたりということができなくなる。癒着してしまってそこから腐敗してしまうのだ。
    だからこそぴったりではない誰かとくっついたり寄り添ったりというゆとりを持ちながら、どこかにいる相手の幸せを願うのが身を滅ぼさない生き方で二人はそれを選んだのだ。だから人によってハッピーエンドかバッドエンドか判断が変わるだろうし、そもそもそれらに括られるのかとも思う。ある角度から見れば幸せ、また別の角度から見れば不幸せ。そんなハッピーエンドもバッドエンドも内包した繊細な恋愛小説だと思う。

  • 何度も読み返している大好きな作品。友達に貸す前に再読。
    高校生で初めて読んだ時は、なんて大人っぽい小説!と大学生活に憧れたものだけども、大人になって読んでみたら、情景が浮かぶ映像的な描写と共に、仲間と過ごす青春の日々のきらめき、焦がれるような切羽詰まった恋愛感情が、強いノスタルジーを伴って押し寄せてきた。

    主要登場人物みんな(特に葉山先生)、よく考えるとどうなの、という言動をしがちだけど、それぞれが身近に感じられるからこそ、様々なことを考えさせられるのだと思う。
    でも男性は考えれば考えるほどみんな身勝手。島本理生さん、根本では男性を憎んでいるのではなかろうか。

    雨と共に滲んで薄れていってしまう青春の記憶や人間関係の中に、葉山先生との思い出が、今も甘く膿んで鮮明に残る泉は、辛くも幸せだ。

  • 2006年(第3回)。6位。
    ダメンズウォーカー(死語かな)の恋愛。お互いが好きでも、うまくいかないこともある、的な。
    どこに着地するんだろうなぁ、と思いつつ読んだ。

  • 2017年に映画を観に行ったのですが、当時高校2年生だった私には過激すぎて観ていられない場面が多々あったんです汗
    大学生になった今原作を読むと、主人公たちが大学生というのもあってかなり感情移入してしまいました。
    小野くんの変貌ぶりには映画と同様少し怖くなるけど、気持ちはわからなくもない。

    最後の1文が印象的でした。

  • 年を重ねると少女漫画やその実写映画の世界観に没入できなくなるのと同じように、三十路を超えた今となっては物語全体に漂う主人公たちのメンヘラ感に胸焼けがしてしまう。初めて読んだ時はラストに身悶えたんですが。

  • きっと子供だったから愛とは違うとかじゃなくて、子供だったから、愛してるってことに気付かなかったんだよ

  • よくできた恋愛小説。

    女子高生社会にうまく馴染めなかったけれども大学に入ってから不思議とモテるヒロインの造形がうまい、無意識に男に媚びる行動を取ってしまうところ(電話で夕飯を作りにいくことを伝えながら、本棚の料理本に手を伸ばすところとか)に、こういう人いるよな〜と。目黒シネマでリネンシャツ着て映画見てそうな感じ。
    最初に選ばれた男がモラハラ気質のマザコンだったのも納得。
    静かな文体だが描写が研ぎ澄まされていて、心象への没入感があった。時系列を行き来するストーリーテリングも無駄がなく上手い。

    反面、僕が男性だからかもしれないが、ヒロインが葉山先生になぜ惹かれるのかが、人物造形の浅さからいまいち腹落ちせず…。

    街を歩く人もどこかに痛みを抱えて生きているんだろうな、と思いを馳せたりした。

  • 間違いなく恋愛小説の名作。

    もう決して交わらない2つの道とか、
    過ぎ去った愛おしい青春の時間とか。

    イメージを壊されたくなくて、
    あえて映画版は見ないと決めた。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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