少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044281052

感想・レビュー・書評

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  • 美しく生まれてしまった少女『七竈』
    同様な容姿の幼馴染みの友『雪風』
    孤高の2人の青春を可愛そうな大人達が惑星の如く干渉してくる。
    雪の街旭川を舞台に繰り広げられる痛切でやさしい愛の物語
    17歳から18歳のあいだになにが起こる?
    本文中に出てくるこの言葉にその時期にタイムスリップした様な気がした。
    夢があってもなくても、美しくてもそうでなくても、非凡でも平凡でも・・・
    「とくべつな自分と。とくべつすぎる自分と。みんな、そういう自分とむきあって~怒涛のように変化していく季節なのだ」本文中
    自分もそんな季節を過ごしたのだと、遠い昔の事の様な、昨日の事の様な、思いになりました。
    主人公の少女『七竈』の語り(話し言葉)が古風で変わった少女と思わせるところが「昭和」という時代も感じさせてくれた様な気がします。
    七竈という植物にも興味をそそられました。

  • 女子アナの宇垣美里さんの好きな作家が山田詠美らしい。
    そして宇垣美里さんが上京するときに大切に持って行った本、と聞いてこの春上京する身としてこれは読んでみたい!と思ってすぐ読んだ。
    .
    美しくて悲しい話だなー。
    桜庭一樹さんってこんな文なのか。

  • 語り手がどんどん変わっていく形式。
    自分が美しいがゆえに物心がついた時から
    周囲の人から視線を集めている。
    高校生ながら、自分を見て消費するな
    って台詞がでるのはずーっと見られてきた
    からこそでる台詞なのかなと思った。
    高校生で考える言葉ではないよなあ。

    唯一、心を開いている雪風も、
    成長するにつれて自分と顔が似ている…
    つまり、血がつながっているということ。
    自分の母親と雪風の父親と何があったのか
    想像するのは簡単ということになる。

    そんな雪風のことを好きだったのか
    そういう直接的なことは書かれていなかったけど
    お互い見つめあって、名前を呼び合っていたのを
    見て、そういう気持ちがあったのかなあとも
    思わずにはいられなかった。
    そんな人と血が繋がっていると分かれば…

    自分の母が、自分の住む地域の人と
    誰かのお父さんやおじさんだったりする人と
    寝ていたと分かったらどうするだろう。

    七竈も雪風も後半になるにつれて
    お互い、どんな気持ちで会っていたのだろう。
    それでも母のことを少しでも
    母親と呼びたくて、母親らしいことをしてほしいと
    思う七竈がかわいそうで仕方なかった。

    七人の可愛そうな大人というタイトルだけど
    私は、てっきり優奈と寝た
    男たちのことかと思ったけれど、
    多分、優奈、多岐、梅木、田中先生、
    田中先生の妻、多岐の夫、祖父
    になるんじゃないかなあと思った。

    でも被害にあたのは優奈意外だけど
    優奈も優奈で心が枯れていたんだよなあ。

    すこし大人びたような不思議な口調の
    七竈は一人で生きていくがゆえに
    そういう口調になってしまったのかな。

    誰の視点をとっても
    救われた人がいないようなお話だったきがする。

  • 七竈は、燃えづらい。7回も竈に入れても燃え残ることがあるという。しかし、そうやって7日もかけて作った七竈の炭はたいへん上質なものらしい。
    人間だってそれぐらい念を入れて燃やさなければ、諦めきれない気持ちはある。
    母の優奈は、七竈の炭になりたかった。
    全体的に不思議な雰囲気。文学的というか、お母さんの発想が大胆。
    雪風って素敵な名前。
    2人の気持ちは、透明感のある美しさだと思った。
    お父さんじゃないよね?
    お父さんなの?という伏線も気になり、ドキドキした。

  • あまり適切な表現ではなさそうだが、
    全体で、ひとつの景色になっているような話

    一面に広がる、薄情な白い雪
    そこに落とされた何者にも染まることのない、
    美しき七竈の実

    自身の小さな世界で生きる七竈が、
    大人たちに翻弄されながらも、
    懸命に前を向いて生きていく
    そんなお話

    自分としては、全てを理解するにはレベルが高すぎた作品・・・

  • 桜庭一樹の小説はぬめぬめしている。
    人間のぬめぬめとした汚さ、底に澱み黒々としたおそれを美しく描く。
    決して後味は良いと言えない。しかしそこにこそ儚い美しさは宿る。
    その事をよく知っている作家であり、それがよく表われた作品。


    幼く狭い世界の物語は閉じられているからこそ続く。
    七竈と雪風。美しい幼なじみ。
    永遠に続かないあの年頃の、呪いにも似ていた恋。
    期限付きの美しさを、女としての欲望を、押し付けられ逃げようのない血の呪いを、静かに見つめる少女はそれらを許さないことで自分を受け入れる。
    しかし許さないという答えを出すことで初めて許せたのだと気付くにはまだ少女は幼かった。
    幼なじみ。美しい、七竈と雪風。

  • 旅のお共として。少女シリーズ3作目。狭い旭川の地で、美しい七竈と雪風、その周りの大人とビショップの話。急に変わっていく高校の時期。田舎から上京する人間とずっと東京で過ごしている人間とは何か違っているような気がする。何か少女感が強くて、読むのがしんどかった。若い頃に読んでたらまた違った感じ方をしたんだろうなぁ。かんばせ、が度々出てくるけど、意味分からなくて調べたよ。メジャーな言葉なのか?やっぱ美人に生まれなくて良かったと思う。

  • 旭川に住む25歳教師は思う。いんらんになろうと。そして子供を授かった。七竈と名付けた。七竈は祖父のもと、すくすく美しく育つ。なぜならば、相手の男は美しいかんばせだったから。
    ファンタジー。親の業。北海道(寒い地域)の閉鎖性。みんな知り合い。
    作者、北海道出身の方なのかな。寒さゆえ、寒さが身に染みる、そんなファンタジー書くね。
    七竈、雪風。美しいかんばせで幸せになってね。

  • 同期に借りた。感想欄に高評価のコメントが多くて正直驚いた。とある田舎の超美少女を取り巻く物事(彼女の母親の優奈を元凶とした愛憎劇が結構な割合を占める。)が淡々と記されている。七竃と雪風の関係は好きだし美しいなと思うけれど2人の変に堅苦しくて古臭い話し方は気になった。かんばせって文面から意味は察せたけれど聞いたことない単語だった。最初ウザいなってムカついていた後輩の緒方みすずのことは最後ちょっと好きになった。七竃は淫乱な母親を恨んで忌み嫌っていると思っていたけれど案外そうでもないというか甘えたいという気持ちがあるのが以外だった。母親の優奈も別に七竃のことを嫌いでは無いわけだし奇妙な家庭だよね。一般的に美化されがちな恋を『ぐじゅぐじゅに腐った醜くて利己的な感情』って表してるのがなんか良かった。全体を通して何も起こらないし綺麗なのか汚いのかよく分かんないけれどぼんやりと儚い感じの話だった。

  • 去年砂糖菓子を読んだ時に他のもの読みたくなって買った中の1冊。相変わらず表現や言葉の使い方が独特で。七竈と雪風を取り巻く環境が一つ一つわかってくると途端に切ないお話だった。とはいえわたしは冒頭と中盤の優奈の話が好きでしたね。
    最初七竈は母に対してドライなのかと思いきや、ちゃあんと母に甘えたい子どもだった事がわかって、切なくて安心した。

著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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