大転換する日本のエネルギー源 脱原発。天然ガス発電へ (アスキー新書 199)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス
3.42
  • (3)
  • (7)
  • (14)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 59
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048706971

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大枠として、これからの日本のエネルギー政策は、原子力から天然ガスへシフトしていくべきという論はうなずける。

    しかし、少々、天然ガスに傾倒しすぎている点が気にかかった。

    原発や他のエネルギーにおいてもだが、エネルギー政策を考える際には、日本の特異な事情を勘案する必要がある。

    パイプラインについては、島国日本において実現するには多大なコストがかかるし、ロシアとの関係が重要になる。

    バーゲニングパワーを獲得すべきと言いつつ、再生可能エネルギーへの投資に対して消極的な姿勢なのもよく分からない。

    天然ガスは今後、世界中で400年程度は使い続けることができるということだが、「400年」という期間を「無尽蔵に近い数字」と言ってしまうのはいかがなものだろうか。

    極端なことを言えば、そのツケを後にまわす姿勢が、再生可能エネルギーなど長期的に必要な技術への投資を後ろ倒しにし、短期的に利益を得られる原子力を推進し、原子力ムラなどの利権構造を作ってきたと言えるのではないだろうか。

    また、シェールガスの開発については、地形変化や水質汚染、地震誘発などの課題が指摘されているが、本書においてそれらの問題に対してほとんど触れられていない点が気にかかった。

    本書の最終章における「供給サイドの省エネ」やスマートコミュニティなど、これから必要となる技術や考え方についての示唆が多いことはよかった。

    ただし、本書の発売から2年が経ち、大枠として変化はないと思うが、その間に原子力や再生可能エネルギーに関しては環境が大きく変わってきている部分があるため注意が必要かもしれない。

    全体的に、天然ガスを持ち上げすぎている感はあるものの、天然ガスを知り、脱原発に向けた新しいエネルギーを考えるために読んでおいて損はない一冊。

  • 脱原発の切り札になるのは、再生可能エネルギーでは無く、実は天然ガスを使用した新時代の火力発電が一番現実的であると述べた本です。

    ガス発電のメリットをざっくりあげると

    ・シェールガス革命により、燃料となる天然ガスはほぼ無尽蔵に供給できる。
    ・石炭、石油と比較して環境負荷が小さい。
    ・安定的に電力の供給が可能。
    ・日本企業の高い技術力が発揮できる分野である。

    エネルギー問題イコール原発反対か否か、という短絡的な議論を卒業して、日本のエネルギー戦略を建設的に考えるために多くの人に読まれるといいと思います。

  • 天然ガスが期待できるのは分かった。けど、その前に電力改革が必要なんだろうなぁ。あと、CGSを使いこなせるのは、熱需要が集中する都会だけな気がする。

  •  福島原発の事故以来、反原発の本が多く出版されている一方で、経済界は原発なしでは日本経済は成り立たないとばかりの発言を繰り返している。その中で、本書は比較的実現性のある「脱原発」の具体性のある提案として「天然ガス発電」を取り上げている。これが実現すれば、素晴らしいと思えた。
     しかし、問題は現実性である。本書の著者は、エネルギーアナリストという専門家であり、アメリカにおける「シェールガス革命」なども報道等である程度は知られてきてはいるが、本書で主張しているほど、脱原発を担保できるほどの規模のものなのだろうか。技術的にも政治的にも、多くの課題はあるのではないかと思えた。
     また、専門家は、いわゆる「再生可能エネルギー」では脱原発は無理との主張をすることも多いが、その詳細な内容もあまり聞いたことはないし、まだまだエネルギー問題は多くの議論が必要と思えた。
     本書は、「脱原発」が夢物語や遠い未来のものではなく、「天然ガス」資源という手の届くところに解決策があるかもしれないと思わせる希望の書であると思えた。ただ、この問題は、もっと検証の必要があると思う。

  • 著者さんは、エネルギーアナリストの石井彰さん。

    石油公団、米ハーバード大学国際問題研究所客員研究員などの経験を活かし、1992年から石油・天然ガスを中心としたエネルギーの国際動向分析を行っているんだって。

    これからは、天然ガスだと。

    アメリカでは「シェールガスと呼ばれる新世代の天然ガスの生産量が急増しているらしい。
    とにかく安くなり始めているらしい。

    なのに、世界のLNG市場の急変に取り残されるような形で、日本は、世界一高い天然ガスを輸入し続けているんだって。
    これって、やばいよね。

    おすすめ度は、5点中3点。文字のタイミングと図表のタイミングがずれています。読みにくかった。

  • "双方が自分に都合のいい材料ばかりを考えるために、経済合理的な側面が置き去りにされ、バランスのとれた考え方もできなくなる"「認知的不協和によるバイアス」。『脱原発』→「再生可能エネルギー』というイエスとノーという単純な思考では、いずれ現実的に原子力に戻るだろうと筆者は警告を放つ。生産の面からは天然ガスというエネルギーに着目し、消費の面からはスマートコミュニティーへの社会改革へという提案は広く知られていくべきではないか。

著者プロフィール

エネルギーアナリスト

「2014年 『木材・石炭・シェールガス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石井彰の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×