少女七竈と七人の可愛そうな大人

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048737005

感想・レビュー・書評

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  • "辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。"

    書き出しから一気に引き込まれ、むさぼるように読みました。

    いんらんの母・優奈と、たいへん美しい少女として生まれた子・七竈。そして、七竈の親友で同じく美しいかんばせを持った少年・雪風(ゆきかぜ)。

    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」
    そんなたあいのない会話がつくりだす七竈と雪風の静寂な世界観がたまらなく好きです。

  • いんらんの母親を持ってしまった娘の物語かと思いきや、「母と娘」という永遠のテーマで締められて、最後は思わずじんわりきてしまった。

    純愛。それぞれに、「一番側にいて欲しい」と心から願う人が、側に居てくれない切なさ。母にかけられた呪い。叶わぬ想い。永遠につきまとう呪縛。かんばせ。

    桜庭一樹さんは、作品によってガラリと作風が変わるので楽しい。少女七竃と少年雪風の、丁寧で独特の喋り口調がとても味わい深くて良かった。また、飼い犬ビショップ目線で描かれた章もとても良かった。

    「女の人生ってのはね、母をゆるす、ゆるさないの長い旅なのさ。ある瞬間は、ゆるせる気がする。ある瞬間は、まだまだゆるせない気がする。大人の女たちは、だいたい、そうさ」

  • 『私の男』がなかなか良かったので同じ作家を読んでみることに。同じ旭川を舞台に、あちらが重く湿った肉をそなえた人々の世界であるのに対して、こちらは、神話めいた美貌の少年少女を中心とする、おとぎ話のような物語だ。
    時間がとまったような小さく静かな町の中で眠ったように生きていた少女たちは、ある日突然、次のページがめくられたように、あるいは何かが身体の中を通り抜けたように、変化する。どうしても手に入れたいひとりの男を自分の力で見つけだした女は、その日から女の辻斬りとなり、さまよいつづける旅人となる。その娘は、自身の分身と築き上げた美しく精巧な世界を永遠に捨てて、外の世界へと歩きだしていく。静かで小さい安定した町は家族たちの世界であり、その中では「いんらん」の印を刻まれた2人のおんなたちは異形のものとなってしまうのだが、しかし彼女たちに欲望を自覚させ、小さな世界を壊して生き始めさせるものが、それぞれの母親からの解放であったという事実は、これが永遠にすれちがっていく男女の物語であると同時に、母娘に伝わる呪い、そそして解放という贈り物の物語でもあるということを教えている。「七竈」「雪風」という不思議な名前と、古風にジェンダー化された話し言葉が、この物語世界に神話めいた風貌をあたえることに成功している。老犬までが「女というのは可愛いものだ」などと考えていたりするのが愉快で、全体に流れる淋しさ切なさと絶妙なバランスだ。

  • 七竈と雪風の、複雑だけども純粋な関係がとても好き。

  • 古文っぽい文章というか、そうゆう文は苦手だったのですが、これは良かった。どんどん読めた。それどころか、この少し古い言葉が味を出しているような気がした。桜庭さんの文で良かった。スラスラ読めた。
    親を憎みながら、愛してほしいと願う七竈。人の感情はそんなに簡単ではない。大人は身勝手に、子供を振り回す。子供は運命を選べない。
    時は流れる。いつまでも同じではいられない。

  • 淡々としていて静謐で、それでいて奥行きのある文章。旭川の真っ白な雪景色の中に浮かび上がる七竈の黒髪と雪風の七竈色の真っ赤なマフラー。色彩のコントラストが自然と浮かび上がってくる言葉選び。どこか俗世間を超越した大人びた美しい少女七竈が魅力的。最後のシーンは切なくも美しい。桜庭一樹の繊細な文章になんだかはまりそう。2011/191

  • 淡々と進んでいく物語。小さな町でこんなにドラマがあるんだなぁと妙に感心してしまいました。しかも繋がりの濃さといったら想像以上です。
    主人公の口調が深刻にならない要因なのかな。皆薄々と気付きつつも、核心に触れることなく、今までの生活を続けていくのでしょうね。それが大人なのだなぁと思ったりしました^^

  • 類い稀なる美貌をもってうまれた七竈と、彼女を取り巻く大人達の恋愛ものがたり。
    美しい少年・雪風との恋、思春期に感じる孤独感、大学のための上京…
    誰しもが経験したであろう、風にのって儚くきえてしまうような気持ちをさらりと表現している。

    いつまでも色褪せない、宝物のような作品。

  • 読んだのは文庫版ですが、装丁が好きなのでハードカバーの方で。(文庫版の装丁も好きです)

    遺憾にも美しく生まれてしまった少女・七竈の物語。
    幼馴染の少年・雪風との、やり取りが美しい。
    「雪風」
    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」

    がたたん
    ごととん
    がたたん
    ごととん

    という、短くて2人だけが共有できる世界。
    変わっていく人間たちの、さまざまな視点と、その変わり方。

    会話の美しさがいい。
    登場人物の行動は跳びぬけていて、それがまた魅力。

    たんたんと語るような地の文と、キャラクターの激しさが心地よいギャップ。

    耽美だけど、少女漫画過ぎない。そんなところが好き。
    七竈も雪風もすごくいいキャラクターです。

  • もっと抽象的で絶望的な話かと思ってたけど、わりと普通にストーリーがあった。
    たぶん成長と親子の物語なんだよね。意外に。
    主人公の七竈と雪風の言葉の使い方が文語調で独特。「かんばせ」なんて。
    閉じられた世界にいる七竈が、だんだん外の世界に目を向け始めたとき、雪風がどんどん色あせてくるように見える。
    頑なな七竈が、後輩の女の子と心を通わしていくのがなんかほのぼの。最後はさびしいけど清潔なあかるさがあるように思いました。

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著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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