- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048738422
感想・レビュー・書評
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ぐだぐだな日常を送るアザミと、彼女を取り巻く人々の物語。
字美ではなく、アザミという表現が良く合っている。
将来よりも、音楽。
でも時間だけは刻々と過ぎていく。
焦りはなく、自分の事ではない様な微妙な感覚がよく出ている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自分にも隙間にたくさん音楽を詰め込んだ時期が長らくあった。
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とりあえずの延命として音楽があって、良かった。音楽好きだから、友達が増えるというお話では無いけれども、自分の中での音楽に対する宗教みたいなものがあって、その存在により自分が救われるのは貴重なことだと思う。
そしてアザミに共感だらけ。ナツメさんを助けて、お茶に誘ってしまうところとか、トノムラの誘いを断りきれずお茶に行って退屈してしまうところとか、本当に不器用。でもなぜかやってしまうことってめちゃくちゃある。
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高校生の頃ってこんなんだったのかな、とはるか遠くなってしまった過去を思い返してもよくわからない。でも、もちろん良い意味で、だらっとした女の子たちの青春ってすごく良いと思った。わかるー、と思うのは高校生っていうのがすでに他人事だからなのか、現役高校生だったときに読んでもわかるーと思えるのかはわからない。後半不意打ちで泣かされる箇所が2つほどあった。よかった。
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在阪の作家、津村記久子さんの小説。京大でお世話になった藤原辰史先生が、お気に入りという縁から、ここんとこ精力的に読んでいる作家さんです。弱者への共感というか、社会から取りこぼされてしまった人の、ヒリヒリした感傷を巧みに表現できる方です。勉強ができず鬱屈してるけど、クラブにも専念できない。この状況を何とかしたいけど、どうすればいいか分からない。取りあえず、スマホやゲームに逃げているというような、屈折した心情を持て余している人なら理解できるかもしれません。
本作は、大阪の、おそらく公立高校の3年生の女の子アザミが主人公。頭が悪く、誰も聴かない洋楽、しかもパンクロックが大好きな少女です。必然的に、クラスカーストの最底辺に位置しています。受験生なのに自分の人生に何の展望も持っていない。かといって何をすればいいのかも考えられない。まあ、それくらい頭の悪い子なんですよ、アザミって。可哀想といえば可哀想なんですが、何の努力も出来ないので、自業自得といえば自業自得です。そんなアザミの日常の機微が、つらつらと描かれています。
そんな作品のどこがいいのか、と突っ込まれそうなんですが、いいんですよ、凄く。特に僕も好きな”blink182”のことを、アザミも大好きで、作品の主旋律のように、blink182の曲が、行間から聞こえてくるんですよ。まさしく、「music bless you!!」。音楽が、アザミに、その他の登場人物たにを、この作品に、そして読者にも恩恵を与え、生かしている。そんな作品です。
本作の中でblink182は活動中止柱ですが、現在でも解散せず精力的に活動しています。YouTubeで曲が聴けるので、BGMにして本作を読んで下さい。そうすれば、この作品の魅力がよりマシマシになって読めると思います。作中でも描かれていますが、バンドメンバー全員が、素っ裸で街中を走り回るという健康的でご機嫌なPVもあるんで。人生が上手くいかず、落ち込んでいる人にこそお薦めの作品です。
それから、作者の津村記久子さんも、バリバリのパンクキッズです。先日の藤原先生との対談の際、「Streetlight Manifesto」のロックTに、ロングカーディガン、緑色のドクターマーチン風の革靴をお召しになっておられました。アザミが大人になったら、こんな感じの着こなしをしてそうなコーディネートでした。 -
高校三年生のアザミの、緊張感があるようなないような一年間。時間の使い方や人との接し方、若いってこういう感じよなぁ、と懐かしくなった。
ストーリーというほどのストーリーはなく、本人も成長してるのかしてないのか、な感じなんだけど、ラストで「やりたいこと」がすこし見えてくる感じが良い。
そして、アザミが発達障害っぽいのだけど、最近小説内に発達障害の要素を入れるのが多いのかなぁと思った。 -
66:勉強はできない、人付き合いも不器用、けれど音楽が大好きで音楽に関してはまめなアザミ。高校三年生だけれど、受験や進路はおろか、もうすぐ卒業だということさえ実感に乏しく、そんな毎日をもがくように、あるいはふわふわと泳いでいる。アザミと友人たちの高校生活をゆっくりまったりと追った青春小説……なのですが、津村さん節というか、これといった動きも盛り上がりもないゆるさが、モラトリアムの時期にぴったりな気がします。
もどかしいほどゆるゆるとした一年だったからこそ、アザミが見つけた「したいこと」にまつわるラストの二文がきらきらと輝いていて、刺さるのです。 -
バンドが解散し、補講を受ける羽目になり、受験に失敗し、アニーも離れて行く。個性豊かだと思っていた主人公のアザミは、終いには何もなくなってしまう。失ったものと引き換えに、何かを手にしただろうか。
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津村記久子のおもしろさは、まず「あるある」で「あるある」に収まらないところにあって、主人公に共感できないとだいぶおもしろさが減る。共感しなくてもおもしろい小説はあるって知っていても、津村記久子だけに限っていうと、共感できなくてあんまりおもしろくなかった。