- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048740074
感想・レビュー・書評
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函館・入船町、外国人墓地を抜け、共同墓地の坂を上り詰めたところに市営の火葬場がある。そのさらに奥に建てられた豪邸「雪華荘」を舞台に繰り広げられる怖いお話。
かつては函館で財をなした一族の末裔、藤吉家も今は当主の父親は脳梗塞で不自由の身、そして、その継母、そして先妻の2人の子供と継母の連れ子の娘2人の間に起こる遺産をめぐる葛藤が主題。先妻の子供のうちの"妹"が語り手だが、彼女は継母とその娘たちに苛め抜かれるという設定、いわばシンデレラ状態。不気味な邸で一連の心理劇が演じられ、最後に驚愕の結末が待ち受ける。
著者は約1週間の函館滞在でこのホラー小説の着想を得たという。上記の「雪華荘」はもちろん実在しないものの、リアリティは十分。市内のあちこちの描写は非常によく書き込まれていて飽きさせない。函館山、立待岬、西部の町並み、入舟町の漁港などの描写に著者の観察の細やかさが垣間見える。
一部の引用
わたしはいつか市電路線の終点に近づいている。大町から弁天町、函館のもっとも古い部分だ。通り沿いには、一階はは格子戸を立てた古風な商家で、二階は下見板張りペンキ塗りの壁に上げ下げ窓を並べた、和洋折衷の建物が目につく。・・・・このあたりでは昼間もシャッターを立てきられ、あるいは窓も釘付けにされて無人のまま放置されている。まだ夜の七時にもなっていないのに開いている店もなく、明りの点る家もまばら・・・・・。ここまで来ると、古い函館がゆっくりと枯死しかけていることがはっきりわかる。けれど私はそんな、死にゆく街が嫌いではない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最初から主人公がなんか煮え切らないと思っていたけど、伏線だったのか。
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文章がとにかく好みじゃなくて
ほぼ流し読みしてしまいました。 -
汀って実はこうなのでは?という予感通りのオチ。
作者は予め気付かせたかったのか、あくまで伏線とだけしておきたかったのか、どっちだったのだろう? -
2周目読みたいところだけど、時間がないので諦めます
騙されてる!って思いながら読んでたけど
まさかそっちとは思わなかった
おもしろかった、
にいさん、そんなに、わたしがきらい?
俺はな、理屈で納得のいかないことが大嫌いなんだよ
藤吉、俺、おまえに謝りたかったんだ。つまり、その、俺はなんにも知らなくて。おまえが、そんな悩みを抱えてたなんて。いってくれればっていっても、いえなかったんだろうけど、でも -
汀に共感出来るか出来ないかで、物語への引き込まれ方が全然違ってくるだろうな、と思います。男性には難しいかも。
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函館の西郊に海に臨んで建つ、白いモダニズム風邸宅、雪華荘。その閉ざされた館で孤独な生活を営む汀は、東京にいる兄の洽との手紙のやり取りが、唯一の心のよりどころだった。だが、脳梗塞で倒れ隠棲している父・博通が残そうとしている遺産をめぐり、後妻母娘とのあいだで確執が深まるなか、兄が謎の失踪を遂げた...。
割と早い段階で、主人公って…と思ったらそのままオチになってました。 -
函館のとある豪邸が舞台のミステリー…なのか一応。
…暗い…。
半分くらい読んで、これはもしやと思ったオチそのままだった。
たまにある。私が気付くくらいだから凄く分かりやすいんだと思う。 -
ひねりがもう少し欲しかった
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表紙がハンマースホイの作品。気になり手にしてみる。
函館滞在と、上野・国立西洋美術館で目にしたヴィルヘルム・ハンマースホイの作品の影響から、本作が作り出されたとか・・・
読みながら、なぜか自分の頭の中では函館が小樽に変換されていて・・・ま、海の側だし、いいか〜と思いつつ・・・あ、やっぱよくないか。
どこを、どうとって言っても、ネタバレになりそうなので、うまく書けないのですが・・・
函館、岸壁の上に立つ屋敷に住まう私こと汀(テイ・ミギワ)は、東京の大学にいる兄、洽(ゴウ・アマネ)に読んでもらうためだけに、自分自身と周囲の人たちのことを手記としてノートに綴る。
ノートに書けないことは、汀の独白や、兄への手紙という形で別に記される。
我々読者は、汀の手記と独白と手紙だけで、物語をおってゆかねばならない。
ここで「信頼できない語り手」という表現、パトリック・マグラアの作品群を思い出しつつも・・・おそらく、大方の読者にはある程度の予測はつくと思うが、それがどのように最後まで繋がっていくのかは、読んでみてのお楽しみだと思えます。
う〜ん、おもしろかった〜。