- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061388178
感想・レビュー・書評
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掛け替えのない一ページを見つけることが出来れば、あなたとわたしの勝ち。
当然ながら、見つけられなければ掛け金を乗せたあなた、ついでに推薦文を書いたわたしの負けになるのでしょう。
舞台は京都大学。
森見登美彦先生で一躍、と言うにはわたしの読書遍歴も貧弱なものですが、京都府民や京大出身以外には異世界風味が強いなあ、と思います。つまりは馴染がないということで。
いささか古典的過ぎる主人公と会長の、周回遅れなボーイミーツガールの舞台には相応しいのかもしれません。
定型的な入り口で掴みやすいキャラ配置としながら、地に足の着いた性格の奥深さはライトノベルと一般文芸の中間地点といったところか。
春夏秋冬、一年で順々にサークルの構成員を一人一人ピックアップしていくのも王道でわかりやすい構成、リーダビリティー(読みやすさ)は高めです。
春に出会い、夏を歩み、秋に転んで、冬に別れる。
紆余曲折を経て、悩みっぱなしな主人公は等身大ですが、少年と青年の狭間のような設定はそのまま感情移入して読むか少し突き放してみるか、読者の年齢層によって、読み方によって分かれそうで興味深いです。
少しファンタジーでないマジックはありますが、全般的に凄く地味で、それさえ消え去ってしまう。
主人公は一年(回)生と言う時の安穏さにいながら、これから過ぎ去っていく過去と、その先にある未来の冷徹さに怯えています。
これは当時を生きる彼の物語であると同時に作者の青春を辿った半ば自伝であると考えてしまうと、先の指摘も見えてきます。
正直に申し上げますと、自分はハリネズミのようにこの物語が刺さりまくりました。故に星五つなのです。
だからこそ、冷静に文責を負える立場では無いかもしれません。
けれど、作品全体を気に入らなくてもどこか一ページだけは切り取って持っていてほしい、その程度には気に入っていると謙虚ながらに推薦を申し上げたいと思います。
まだ見ぬ未来に怯え過去に変わってしまう現在を手放したくなかった彼が何を見たのか?
さしずめ時の牢獄につながれていたのは誰だったのか? 答えは酷く簡単ですが、気付いたところでやってくるのは単純な驚きではありません。
ネタばれ込みで構いませんのでどうか、読んでいってくださいませ。
余談(私事)
ちなみに自分はダブルヒロインとしてみると会長の方が好みですね。その辺、ぼかしてくれた作者先生には恨み半分感謝半分です。
今は、確定させるとしっくりこない気がするのは作品の記述そのままですが、踊らされて良しとしましょう。
自分は何も書かれていない空白の、これからのページをお気に入りとして持っていくことにします。
続編が出るなら、このお気に入りは更新されるのかもしれませんが、今は心の中で眠らせておくとしましょう……。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2012年4月20日
<Tout Sur Etranger>
Illustration/庭
Cover Design/川名潤 -
舞台は京都。
「京都観察会」という京都大学のサークルに入部した新入生と、先輩たちが織りなす青春とちょっぴり恋愛のお話。 -
「一箇所にとどまるものは、岩だろうと山だろうと、破壊されていくのだ」 そうだな。。
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表紙絵と京都の大学生の話というのに惹かれて購入。文書からそこはかとなく堕落した大学生の香りがしてくる。
現役の大学生が読むとあまりの現実っぽさに鬱になるので注意(笑)。 -
表紙買い。難しい背伸びしたような表現がなく、シンプルに綴られているのでとても読みやすかった。ラストシーンでの元会長のセリフから、これは完全にフラグだなと思ったが、中道さんルートで終わり、少し残念。個人的に一番好きなのは、勝原さんとのCDショップでのバイト、特に理由はないですw。こういう大学生活モノは好きでです、一度しかない期間をどうやって良いものにするか奮闘する主人公、それを取り巻く個性豊かなキャラクターたちみたい設定。