アラブとイスラエル パレスチナ問題の構図 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061490857

感想・レビュー・書評

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  • 今のガザ地区の問題は、これまでの歴史なくしては語れない。
    米ソ、パレスチナ、イスラエル、湾岸戦争など中東全域を背景として考えてみれば、単独の問題ではないのがよくわかる。

  • 古い本のため、オスロ合意の直前である1992年までの歴史しか収められていない。
    しかし、オスロ合意から今日までのあゆみよりは、それまでの前提となっている歴史の方が重要性は高い。
    あえて収録されていない書物の方が、本質に近づきやすいと思う。
    本書は、シオニズムの思想的背景や歴史的背景、大戦前と大戦後のパレスチナを取り囲む状況などが分かりやすく描かれている。
    事実を羅列するだけではなく、行動の動機やその結果、浮かび上がる問題といった内容を詳細に書いてくれている。
    巻頭の主要当事者を並列させた年表も便利で、中東をこれから勉強したい人には大変重宝する一冊だと思う。

  • 2008.12.23買取

  • 中東関連の本も先月を含めて4冊目。重複する内容もあるものの、
    基礎的な本を読み進めているので、前提となる知識が根付いてきたことで内容理解が深まってきた。
    例えば、ユダヤ人迫害事件において、特に注目されたのがドレフュス事件であったことは
    学生時代の世界史の授業で暗記すべき知識として記憶のみしていたが、現在に至るまでの
    パレスチナ問題へと繋がるシオニズム運動の発端であったことを改めて認識することができた。
    やはり、歴史は暗記するものではなく、自己の内的欲求によって学ぶべきものと言える。
    アメリカがイスラエルを建国当初から支持していたのも、ユダヤ人が迫害された時に
    多くのユダヤ人がアメリカに渡っており、その子孫が500万人を超えイスラエルの支持者と
    なっているあたりも、歴史を紐解けば解くほど考えさせられる。
    日本にいると民族や宗教にまつわる争いが身近には起こりにくいものの、世界に目を向けると
    悲しいことに争いのない日はないと言える。歴史についてはこれまで相当不勉強なので、
    しっかりと基礎的な教養を時間をかけて深めていきたい。

  • 良書。
    著者が意識したという通り、国際政治の文脈でパレスチナ問題の構図がよくわかる。

    イスラエルのみならず、
    中東戦争〜湾岸戦争に至るまで、米ソ、エジプト、シリアをはじめとした関係各国がどういった思惑で動いたかが詳しい。

    国際政治から語ったがゆえにどうしても国家単位でのパワーゲームの描写が多く、パレスチナ側に割いた部分は意外なほど少ない。この点、「共存への道」とは対照的だ。93年合意に先立つ時期の執筆ということもあって、アラファトへの評価も高くない。

    とはいえ、著者はけっしてパレスチナを見落としているわけではない。やはりシオニズムには批判的な立場だとみるべきであろう。

    「ナチスの発想は・・・シオニズムの目標と相通ずるものがあった。シオニズムを裏返すとナチズムになる。』

    そのシオニズムにも、労働党が代表する本流と、右派連合「リクード」が代表する修正シオニズムとがあること、占領地の意義が両者で異なることなどは初めて知った。つまり、政権がどちらかで和平協議の妥協の余地が異なるということだ。
    また、パレスチナ人にも多様性があり、PLO(ファタハ)の支持基盤はむしろイスラエル国外の「ディアスポラ」、占領地パレスチナ人の不満を受け止めたのがイスラム原理主義(ハマス)、という構図もわかった。

    他にも、アメリカの中東戦略の矛盾、エジプトの立ち位置、冷戦終結の影響、イスラエル国防の詳細など、勉強になるところが多い。中東は最新兵器の実験場だとか、イスラエルの入植者は千葉都民だとか、やや不謹慎ながら面白くわかりやすい表現もたくさんあった。

    非常に興味深かったのは、パレスチナ人とユダヤ人の類似性の指摘である。共に国を持たず、歴史的に差別を受け、同胞との団結と高い教育水準で身を守ってきたというのである。
    パレスチナ人の歴史的経緯については詳しく触れられていないので、ほんとに?と思うところもあるが、「パレスチナ人なんかいない(いるのは難民のアラブ人だけで、受入国に同化され、消えてなくなるべき)」というイスラエル元首相の発言は、逆にその類似性を証明しているように聞こえる。まるでユダヤ人に向けられた言葉のようだ。

    宗教的同一性のみを唯一絶対のアイデンティティとし、紀元前の遺跡を根拠に土地の所有権を主張するユダヤ人の感覚は、私にはどうもなじめないもの。いったいイタリア人が、遺跡を掘り返してロンドンはイタリアのものだと主張するだろうか。だいたい、そこに住んでいるならその国の国民だろうに、なぜかたくなにユダヤ人であり続けようとするのかわからない。

    ずっとそう思ってきたが、その議論はもしかするとパレスチナ人をも傷つけるのだろうか。
    信仰もなく、自国から排除されたこともない民族にはわからないものを、イスラエルとパレスチナは共有しているのだろうか。

    この本から15年以上経ったが、構図そのものに根本的な変化はない。現在でも有益な書。

  • 19世紀のシオニズム運動の始まりから1991年の中東和平国際会議直前まで、複雑なパレスチナ問題の経緯をコンパクトに分かりやすくまとめている。<br /><br />イギリスの外交に端を発していたこと、ユダヤ人がパレスチナ人を追い出してイスラエルを建国したこと、というような漠然とした予備知識しか持っていなかったが、その複雑な経緯がすっと頭に入ってきた。2つの民族だけではなく、その周辺国や米ソの政治的思惑と駆け引きによってめまぐるしく状況が展開されてゆく。<br /><br />この問題を動かしているのは宗教的なぶつかり合いだけではない。内外の人口動向と経済状況が重要なキーになっていると思った。<br /><br />本書ではユダヤ人の状況を中心に解説されているが、この問題は周辺から迫害されてきた2つの民族、ユダヤとパレスチナが最後に同じ場所へ押し込められたために発生したのだと感じた。<br /><br />最初に地図と年表が記載されており、理解を助けてくれる。新書にしては最後に索引がついているのも良い。中東和平国際会議以降の展開を補足した新版が欲しい。

  • まんが パレスチナ問題に続くこっち関係2冊目。
    まんがで読んだ下地の上にちょうどいい感じで知識が深まりました。

    何の基礎知識も無いと、ちょっと難しいかも?

    第二次世界大戦以降の話がほとんどで、歴史の流れと共にパレスチナ
    問題をめぐる世界の構図が少し深めに書かれています。

    内容はそれなりに複雑なコトも書かれていますが、物語を読んでいる
    ような感覚で進んでいきました。
    また国際政治について、やっぱりいろんな国の裏の思惑があって世界
    は動いているんだなーと実感。
    当たり前の事なんだとは思いますが、普段そういう話題にずーっと疎
    疎で来たわたしはこの本でそれを実感しました。

    なかなかの良書でした。

  • パレスチナやイスラエルがなぜ国際問題になっているのか?この答えを簡潔でわかりやすく書いている。
    イスラエルとパレスチナを全く知らなくとも一から説明を入れているからこの問題での入門書に向いています。
    この問題を中立の立場と広い見識、簡易な言葉で書いているので読み手側は理解しやすい。
    私のは1992年6月総選挙前の話で(ラビン・労働党政権に交代の結果は載っていない)終わっている。

    1993・10・28 5刷 234ページ+索引  4061490850

  • 読みやすい。<br>
    入門編としてぴったり。

  • どうして、こんなになっちゃったのか概要がつかめます。

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著者プロフィール

放送大学名誉教授。福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会)、『中東の政治』(放送大学教育振興会)、『最終決戦トランプvs民主党』(ワニブックス)、『パレスチナ問題の展開』(左右社)など、多数。

「2022年 『イスラエル vs. ユダヤ人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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