動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061495753

感想・レビュー・書評

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  • インパク知8・8
    かかった時間105分

    勢いと説得力のある筆致で、現代を、「大きな物語の時代」、「大きな擬似物語の時代」に続く、「小さな物語と大きな非物語の時代」であると述べる。

    現代においては「大きな物語」のかわりに「データベース」があり、人々はそこから自在に、等価の「シミュラークル(オリジナルとの区別がないコピー)」を引き出す。これは、近代の「小さな物語をとおして大きな物語が伝える真実に迫る」営みとは異なり、汲めども尽きぬ、というような人間的欲求ではなく、一回性の動物的欲求である、というのが本書の主張であり、それをオタク的文化の具体的な分析によって説明していた。最後の部分では、ひとつのメタギャルゲーをそんな現代の優れた投影とする、極端だが興味深い考察もしていた。

    世代的にも非常に納得できる。まさに自分のリアルな社会認識と重なるし、懐古主義的に大きな物語時代の再興を期すよりも、このポストモダンを踏まえた上で生きる方が生産的であるように思う。上の世代の人には、もしかするとややピンとこないのかもしれないが…

    面白い。今さらすぎるが、これは人に勧めたい。

    …ところで、2001年は、もう、20年近く前なんだよな。時の流れに驚く。

  • 本当なら学術的な専門用語で説明することをオタク文化の言葉や実情をもって説明する。アカデミックな人とサブカルな人との逆転現象が面白い。その辺に詳しいサブカルな人がアカデミックな内容についてピンとくるような説明になっている。サブカルチャーを分け隔てなく分析していて面白い。同世代の人にとっては自分の通ってきた感覚を理解するのに役立つのではないだろうか。サブカルを知らなくても読めるように書かれてあり親切だと思う。これからの文化を考える上で羅針盤になる一冊だと思う。

  • 素直に首肯できない気持ちも含め、考えさせられた一冊なので星四つ。

    神や父、国家と言った、忠実に従えば幸福にさせてくれる「大きな物語」を喪った近代以後。
    ポストモダンの考え方では、記号や象徴の消費が、個人の欲望のままに激しくなっていく。

    日本が代表するサブカルチャーであるオタク文化は、まさにこのポストモダンの考えと一致する。
    ストーリーそのものより、「属性」化されたキャラクター達にスポットが当たるようになり、現実的ではない性的象徴を持たされ、消費される。
    また、オリジナルを基にしたシミュラークルが公的にも私的にも活発化する。
    メディアミックスや派生本、同人誌が市場に出回り、大きなビジネスとなっている。

    その結果、世界は即物化し、人間が動物化することで人間性の意味を失ってしまうという、非常にシビアな結論が出されている。

    確かに。そうかもしれない。だけど。
    そこで終わってしまうのは、あまりに淋しい。

    人が物語を求め、物語を生み出すことの根源には何があるんだろう。
    アニメも漫画も、代理経験の一つである。
    私はガンダムやヤマト世代ではないので、ひとまずエヴァを思い浮かべるのだけど。
    アンノウンな世界で、ただ役割を果たすだけの生を受容するレイと、拒否するシンジに、違和感を感じたことを思い出す。

    まどマギの、まどかとほむらにしても。
    まどかを、ハッピーエンドであるはずの偉大なる存在から、秩序を無視してまでも一介の女の子に戻してしまおうとするほむらに惹かれてしまう。

    大量に消費され続ける「物語」の中には、美しさや感動といったかけがえなさを感じるものもあるはずだ。
    それすら欲望の残滓と言ってしまって良いのか。

    答えにまで行き着けなかったけれど、考えさせられる。

  • 戦後から現代にいたるまでの日本社会の動向について、オタク文化と並列して述べられている。人文的な議論の組み立て方が勉強になるし、哲学と実生活が交差する様子は読んでいて楽しい。「科学オタク」とか「理系バカ」とかのレッテルを、(真偽はともかくとして)張られがちな東工大生に読んでみてほしい。
    (情報工学系知能情報コース M2)

  • いま読んでも古びていない議論もあることに驚く。

    4年ぶりくらいの再読。

  • 2017/04/04
    1950〜1970前、世界は大きな物語が再生産されていた。ただ、70年代以降はポストモダンが強くなるので、大きな物語の再生産と欲望は止まる。その時代に成熟した人々のために、代わりとして、1980年代末のオタク系作品には、ひとつの世界観や歴史観を見出すことが一般的だった(ガンダムなど)。この世界観は現実の大きな物語(政治的イデオロギー)の代わりとしての役割を果たすことも。そしてその見かけの大きな物語を商品としては売れないのでその断片を小さな物語として売っていた。

    でもさらに時代がくだると、大きな物語の捏造自体が不要に。そうしてデータベース(イラスト・設定・萌えるパーツなど)から消費者がおのおの勝手に消費をする世界へ。

    だいたいこんな中身だったと思う。
    なるほど、そのように変化したのか、と思えた。そしてただのオタク文化論ではなくポストモダン論に落ちていたのも、面白かった。

  • 分かりやすく鋭い、オタク論。
    近代とポストモダンに興味が湧いた。

  • 「オタク」を語るのは難しい。

    それは、オタクに対する人びとの評価は両極端に二分、分断されるから。
    そうした世界に馴染まない人にとっては、オタク的世界は、語るどころか目を向けることさえ難しいシロモノで、逆にそうした世界に親和性の高い人びとは皆、「俺の方がわかってる」という意識を捨てられない。

    というのも今は昔、15年も前の話。2001年に上梓された『動ポス』は、あの「涼宮ハルヒの憂鬱」以前の世界のお話である。スマートフォンとSNSは、ガラケー的世界とPC的世界の壁を破壊し、「オタク」という呼称は、以前よりもずっと(少なくとも「キモヲタ」を自称することができる程度には)市民権を得た。


    恐ろしいのは、それだけの年月を経てなお、本書のモデルが有効だったりするところ(ポストモダンに取って代わる概念が出てきてない以上、当然のことなのかもしれない)。

    たとえば「データベース消費」のモデル。東によれば、データベース消費における作品は個々の要素の組み合わせに過ぎず、そこに「物語」(ストーリーではないことに留意)は必要ないという。
    登場人物のキャラを見てみよう。「金髪、つり目、貧乳(CV:釘宮)」と並べれば、彼女がツンデレであることは容易に想像がつく。類型化されたキャラやストーリー、「日常系」の氾濫、公式の2次創作化というように、我々は作品そのもの、というよりも、その向こうにある深層(=データベース)を消費しているように見える。


    オタク的世界とすっかり離れてしまってからもう、随分と時間がたった。自分はもう「選民意識を持った当事者」ではありえず、我が物のように語れるほどの文化資本も持ち合わせてはいない。

    だから、本書が予言したオタク的世界の分析は自分の手に余るけれども、オタクから見た日本社会がどれほどの妥当性を持つのか、オタク的世界の浸食が何をもたらしたのか、考えてみたい問題は多く見つかった。

  • 感想が書けないくらい私には難し過ぎた。初めて思想に関する本を読んだが、文章の書き方は非常に読み易く自分も見習いたいと思わせる文章だったが、内容が入ってこない。2割くらいしか理解できてないと思われる。難しい。ポストモダンとは自分の国の文化を否定する時代(合ってないかもしれない)、フィギュアにしても元々は仏像制作が原点らしい。だが今の世の中はオタクというだけ敬遠され、その文化を否定してしまう傾向が強い。おそらく筆者はオタクだろうがなんだろうがジャンルに拘らず自分で感じて評価してほしいということを伝えたかった?

  • ポストモダンでは大きな物語ではなく、背景にあるデータベースから要素をピックアップして作り出された類似した小さな物語で満足しちゃってるっていうのが、ゲームアプリが氾濫してるいまの時代でもそのまま説明できるなーと思いながら読んでました。古い本だけど、いまもその延長にある感じだから、なるほどなーと思いながら読んだ。専門用語が多い。

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

「2023年 『ゲンロン15』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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