生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061498914

感想・レビュー・書評

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  • こどものころ、「世にあるものは、空気も含めて全て原子からできている」「宇宙にある原子の数は不変」ということを何かで知ったとき、自分の体が原子でできていることが不思議でならなかった。当時は原子に粒粒のイメージを持っていて、粒粒がナゼ自分の形に留まっているのか、不思議だった。バラバラにならないの?って。
    そして、自分の身体は原子からできているかもしれないが、自分の意識は何からできてるんだ?と、それも不思議だった。

    意識についての不思議は未だに完全に不思議のまま。

    身体についての不思議は、こども時代よりは腑に落ちた部分もある一方、理解した!わかった!とは全く言えない。

    本書の動的平衡の話は、その身体の不思議に寄り添ってくれる話だった。私にとっては難解な箇所も多々あって理解しきれてはいないのだが。

    引用交えての感想は読書メモ欄へ。
    2023/8/26

  • DNAの研究をめぐる歴史を著者の経験を織り交ぜながら少し詩的な文章で書き上げた科学読み物。

    難解な内容が出来るだけわかりやすく書かれていて読みやすい。科学史に関する内容も興味深く、著者の想いもふんだんに盛り込まれていて、読んでいて新鮮な驚きと半分は小説的な物語の面白さもあり、読者を飽きさせない良書だった。

  • take out:
    生命の定義は、自己複製するシステム、動的な秩序(エネルギー的要求とは無関係に、生命は食事によって体内の分子の入れ替わりを行っている。生命とは代謝の持続的変化である)

  • このサイトだけでも、およそ9000人の方が登録していて感心した。
    む。難しかったけどなー。

    きっと、良いレビューは他に沢山あると思うので、私は自分勝手な感想を。

    そもそも、「生命」とは何か。
    この問いにp167でこう答える。

    「生命とは動的平衡にある流れである」

    なるほどー!っと思えるなら素養がある。
    更に調べてみた。「動的平衡」とは何ぞや。
    「互いに逆向きの過程が、同じ速度で進行することにより、系全体としては時間変化せず平衡に達している状態。」んー。
    状態としては変わらないが、中身は常に新しくなっているということ。
    その「流れている」という状態を常に保ち続ける秘訣とは何か、という話なのでしょう。

    ある程度の曖昧さの中でも修復可能な面があるかと思いきや、一度折りたたまれるとやり直しの効かない面もあって、なんというか不思議の一言。

    詳しく分かったか、と言われると微妙だけれど、どのように迫っていくと何が分かるかという過程の面白さはあるように思えた。

  • 細胞の外側が内側になって、それから外に、というインシュリン生成のお話は実に興味深かったです。思いつきもしない、そして洗練されたメカニズム。こんな仕組みが自然発生的に作られるものだろうか・・・(けっして神を信じているわけではありません)
    あとがきのエピローグ、とてもいいです。

  • 【科学も物語で溢れている】

    生物学の本でありながら、研究室に向かうまでのアメリカの街の風景や、ノーベル賞受賞者のアイデア発見に至るまでのエピソードが詰め込まれている。普通なら概念だけをさらっと説明して終わってしまうものだが、この本は物語が詰まっており、ある種の短編集といっても良いと思う。
    現実世界や研究者の視点を行き来できて読みやすく、感情移入もできて楽しい。

    「人間とは何か」という哲学的にも語られることが多いテーマを、一歩引いた「生き物とは何か」という視点で、「どういう状態・現象か」というところまで俯瞰して徹底的に科学でにじり寄る物語たちは必見である。

  • 生物学における偉大な発見と、そこに関わる人々のストーリーがわかりやすく描かれていて、また福岡さんのロックフェラーやハーバード時代の街の情景やそのときの心情、研究生活のお話も含めて、生物学者の苦労や学問的魅力が伝わってくる本でした。

  • 「私たちは、自然の流れの前に跪(ひざまず)く以外に、そして生命のありようをただ記述する以外に、なすすべはないのである」(エピローグより)
    センス・オブ・ワンダー。その言葉がこの本に一番似合う。作者と、そして幾多の生物学者たちが丹精を尽くした奇跡と、そこから生まれる美しい発見がドキュメンタリーとしてまとめられている。とても内容の濃いNHKスペシャルという感じ。真理に触れたような、まぶしい読書体験だった。

    常に「新陳代謝」する。それこそが生命であり、生きるということ。だとすれば、その集合体である地球という巨大な生命も代謝こそが要であり、その中間レイヤーに位置する人間社会という生命も代謝が要なのかもしれない。
    なんて、自分ゴト化するように拡大解釈してみたけど、そもそも社会なんていうシステム自体もひと時の現象であり取るに足らないことだとも思えて、自分の生きる軸をどこに設定するかを考えさせられる。とある先輩が将来の夢を「地球と一体化すること」と語っていたのを思い出す。


    以下は気づきmemo

    なぜDNAは二重らせん構造なのか?それはA=T、C=Gという4つの文字が凹凸関係になっていて、どこか片方が欠けても対関係から修復できるし、かつ二重らせんがそれぞれ分かれて自己複製できるためなのだ。

    なぜ原子はこんなにも小さくなくちゃいけなかったのか?それは拡散という物理現象おいて粒子が多ければ多いほど秩序の精度を高めることができるから。だから原子はこんなに小さい、つまり生命はこんなに大きい必要があったのだ。

    生命はなぜ代謝を繰り返すのか?「エントロピー(乱雑さ)増大という物理法則は容赦なく生体を構成する成分に降りかかり、高分子は参加され分解され、集合体は離散し、反応は乱れる」だからこそ「やがて崩壊する構成成分をあえて先回りして分解し、乱雑さが蓄積する前に再構築を行う」つまり「エントロピー増大の法則に抗う唯一の方法は、システムの耐久性を強化することではなく、その仕組み自体を流れの中に置くことなのである」。それこそが「動的平衡」ということ。

    なぜ生命は絶え間なく壊されながらももとの平衡を維持できるのか?それはジグソーパズルのピースのように相補性を持っており、新しく生まれたピースは必ず収まるべき場所が決定しているのだ。

  • めちゃめちゃ面白く完成度が高い。生物学の本でありつつ生物の神秘性を柔らかいながらも直球で感じさせてくれる。読んで損はない本。

  • 2007年刊の、言わずと知れた大ベストセラー。
    それを今になって読むか! と思わないでもないけれど、読んでよかった。

    筆者の専門である分子生物学にかかわる話は、この人一流の卓抜な比喩でイメージとしては伝わるのだが、やはり難しい話には違いない。
    学問領域としても若い分野だからこそ、なのか、そこに福岡さん自身の研究者としての歩みを重ねて叙述されている。

    『二重らせん』で栄光をほしいままにしたワトソンらの陰に隠れてしまったローズ・フランクリンの話は、痛々しい。
    ポリメラーゼ連鎖反応という原理を使って、任意の遺伝子を増やす方法を思いついた技師のマリス。
    興味深い人たちが次々と出てくる。
    そして、シュレーディンガーの問い。
    物理学の人だとしか認識していなかったけれど、生物学にとっても重要な人だということを初めて知った。
    なるほど、「分子」生物学を開くきっかけになるはずだ。

    12章以降は筆者の研究に関わるところ。
    細胞膜の中で、外に出されるたんぱく質が小胞体に送り込まれ、ある場所まで運ばれた小胞体は細胞膜と触れ合うと、癒着して内部のものを出す。
    こんなメカニズムがあるのか、と驚嘆した。
    GP2というたんぱく質を完璧に持たないよう遺伝子操作
    したノックアウトマウスの実験は、難しいながらも、それでどうなるの?と、思わず引き込まれた。
    その結果わかったことも、考えさせられる。
    すべてのタンパク質分子を欠落させるより、部分的な欠落や改変の方が、生命にダメージを与えるのだ、と。
    生命は、自分を守るために、驚くべき解決方法を作り出す。
    ただただ驚嘆である。

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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